第296話 終向決戦邂逅編 〜2〜
セトオギロの鎌がムサーナに向かう。
ムサーナはいつの間にか抜いていた刀でそれを防ぐ。
しかしそれはセトオギロにとって想定内だったようで、セトオギロはすぐに次の攻撃を仕掛けていた。
ムサーナもそれを予測できていて、刀で防ぐ。
この空間で刀を握っていないのはムルノだけだった。
そんなムルノは、二人の戦いを眺めている。
「どうした? 防いでばっかじゃねぇかよ! 俺に攻撃できねぇのか?」
「できる。けどやろうと思わないだけ」
「舐めんじゃねぇよ! こっちは本気で戦うつもりなんだぜ? テメェも本気で戦え!」
「私は本気を出さない」
その言葉を『お前ごときを倒すのに本気を出す必要はない』と解釈したセトオギロは軽い怒りを覚える。
今回もムルノだけだった。
この言葉の真意を理解できたのは。
ムサーナが本気で戦わない理由をムルノは知っていた。
「……あなた、かなりの戦闘を経験してきたんだね」
「だからなんだよ? それにビビって俺と戦う気もなくなったか?」
「……私からのお願いね」
セトオギロの鎌を防ぐと同時に、それを弾き返すムサーナ。
この少女が、その巨大な鎌を押し返すほどの力があると思っていなかったセトオギロは驚き、無防備になる。
「その経験全部――」
「――無に還れ」
――一瞬だった。
一瞬だけ、セトオギロは思考ができなくなっていた。
目の前に誰が立っているか。
自分が今どういう状況なのか。
全てを考えられなくなっていた。
その一瞬で、ムサーナはセトオギロの胸を強く押す。
完全に無防備な状態で胸を強く押された。
セトオギロの肋骨は折れ、そのまま吹き飛ぶ。
セトオギロがもとに戻ったときには、すでにその状態だった。
「終わり。じゃあムルノ。戦お?」
「まだだ!」
胸を手で押さえながら、立ち上がるセトオギロ。
手にはしっかりと鎌を握っている。
「……しつこい。あなたとの戦いは終わった」
「終わった? ヌルいこと言ってんじゃねぇ! 俺はまだ戦えるんだよ! 戦いができない状態になるまで、戦いは続くんだ!」
「その理論はどこから出てくるの? ただ無駄に死ぬだけ。思わないの? このままムルノが私を殺せば、あなたはそれ以上の怪我をせずに戦いは終わる。なんでそうしないの?」
「うるせぇ! テメェには関係ないことだろ!」
さらにムサーナに斬りかかるセトオギロ。
ムサーナはそれを先刻と同じように刀で防いだ。
「……ムルノ、一つ言いたいことがある」
セトオギロの鎌を押さえた状態で、ムルノに向かって言うムサーナ。
「私はこいつを殺す」
「! それは……!」
「しつこいやつは嫌い。だから殺す」
「……仕方ないね。セトオギロ! 一緒に戦うよ!」
ムルノは自身の左手の甲に刻まれている『無』という文字をムサーナに見せるようにしながら、二人に向かって走り出した。




