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第294話 終向決戦児戯編 〜終〜

 俺は体力を使い尽くす覚悟でヒョウガに攻撃を続ける。

 ヒョウガはそれを躱してばかりで、全然攻撃を仕掛けてこない。


 「もう終わりって言ってるの!」


 やっとヒョウガが俺に攻撃を仕掛けてきた。

 俺の胸に触れたのだ。


 刹那――心臓が止まるような感じがした。

 いや、『感じがした』んじゃない。


 実際に、止まってる。


 次に感じたのは、体内に広がる冷たさ。


 こいつ、俺の心臓を凍らせやがった。


 そんな反則的な能力、ありか……?


 ……いや、やっぱりなしだった。

 俺の目の前で、ヒョウガは血を吐いてる。


 強い能力故に代償がある。


 だったらこの隙を――!


 心臓が止まってるのを全神経で確認しながら、俺は攻撃を続ける。


 気がついたら、炎になっていた刀身はもとに戻っていた。

 技を発動できないほど力が残ってないんだ。


 でもそれはヒョウガも同じだった。


 動きがさっきよりも格段に遅くなっていて、俺の刀を掠ってる。


 1回だけじゃない。

 顔、腕、胸、腹、いろいろなところに切り傷が増えていく。


 「だから死んじゃえって!」


 ヒョウガの手に現れる氷柱。

 それで俺の胸を刺す気だ。


 させてたまるか――!


 「今だ! ケン!」


 叫ぶ。


 その瞬間、ヒョウガの動きが止まった。


 脚に激痛を感じたみたいで、そこを見てる。

 俺もそこを見ると、俺の予想通りだった。


 ヒョウガの影から、刀が突き出ていた。

 それはヒョウガの脚に突き刺さっていて、そこから血が流れてる。

 この刀はケンのものだ。


 ケンがさっきこっそり影の中に隠した刀。

 ケンは能力で、それを影の中から出したんだ。


 「もう終わりだ!」


 ケンの声。


 それと同時に、ヒョウガの胸から刀の切っ先が突き出た。

 見ると、ケンが刀でヒョウガの背中を刺していた。


 その刀は――レツのだ。


 レツの刀で、ケンはヒョウガを刺した。


 「そ……んな……! ひど……いよ……!」


 今にも泣きそうな顔と声で、そのままヒョウガは倒れた。

 同時に、俺の心臓が動き出した。

 そして、さっきまで感じていた苦痛も消えた。


 ヒョウガの能力が解けた。

 つまり、こいつが死んだんだ。


 「……! ケン!」


 思い出して、ケンを見る。

 ケンもヒョウガの死体の隣で倒れていた。


 「おい、大丈夫か!?」

 「ア……シ……ト……!」


 口から大量に血を吐くケン。

 俺にもわかる。

 こいつは、もう生きることは難しい。


 出血量でわかる。


 「俺……レツを……助けられたかな……?」

 「……ああ、お前がいなきゃ、全滅だった」

 「……なら……よかった……。アシト……最期まで生意気……言わせてくれ……」


 本当にこいつ、最期を迎える気だ。

 最後の力を振り絞って、言葉にしようとしてる。


 「レツを……最後まで……護ってくれ……!」

 「……わかってる」


 俺がそう言い終えると、ケンは目を閉じた。


 こいつは本当に生意気だった。

 正直、嫌いな方だった。


 だけどなんでだろう。

 こいつの死を無駄にしようと思わない。


 ……いや、生意気なのは俺なのかも。

 勝手にこんな争いに巻き込んだのは俺だ。


 だから護らなきゃいけない。

 最後まで、レツを。

次回、『終向決戦邂逅編』です。三人称視点になります。

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