第287話 終向決戦児戯編 〜4〜
「あれあれぇ? そういえばさっきまで3人いたよね? ザコ二人はどこにいるの?」
表情を真顔にも戻して、俺に近づくヒョウガ。
こいつの顔はもとに戻ったけど、俺の恐怖はまだ消えてない。
そういえば俺が一人で戦うのは初めてだったな……。
いつも味方の誰かがいた。
セトオギロやルイナが俺と一緒に戦ってくれた。
一人だとこんなに心細いのか……。
鬼はずっと……一人で戦って来たんだな……。
「――一人じゃないです!」
後ろから聞こえる声。
振り向くとそこにはレツが立っていた。
握っている刀の刀身には、血がついていた。
そしてレツの隣で脇腹をおさえているケン。
その脇腹は、赤く染まっていた。
「……僕、その男の子に攻撃した覚えはないんだけど」
ヒョウガは止まり、ケンを細い目で見る。
やっぱりそこに表情はなかった。
「あなたの攻撃ではありません」
「じゃあ誰の攻撃だっていうの?」
「……私です」
刹那――レツの姿が消えた。
気づいたときには、刃と刃が交わる音が響いていた。
消えたはずのレツの姿が、ヒョウガの前にあった。
二人は短刀と太刀を交えている。
「不思議ですね、生き物って。信頼していたものがどうでもよくなった瞬間、全てのことがどうでもなるんです」
「なに? 闇落ち? ……面白い、あとであの『改造地中人』に訊くか」
そのあとも、何回もレツはヒョウガに斬りかかった。
その度にヒョウガはあの小さな短刀で防いでいる。
正直、俺にはレツの姿が見えなかった。
それよりも気になることがあったし。
ヒョウガはさっき、『改造地中人』って言った……?
ゼルロのやつ、一般人を改造したのか……?
とりあえずケンだ。
俺は脇腹から手を放して、ケンのところに向かった。
「ケン、大丈夫か……?」
ケンの傷口を見ようとする。
そのときのケンは震えていた。
痛みで震えてるんじゃない。
ケンは泣いていた。
「俺……! レツに……!」
「なにがあった? 話せ」
「ずるいって……言われた……」
ずるい?
あの二人、ケンの能力で影の中にいたのか。
そのときにケンはレツにそう言われたんだ。
じゃあなんでそんなこと言った?
レツとケンは仲良しだったはずだ。
それなのに、レツはそんなことを言うか?
あの感じ、ケンを傷つけたのはレツだ。
あいつになにがあった?
「とにかく泣き止め。泣くのはあいつを殺してからだ」
ヒョウガとレツを見る。
二人は相変わらず、刀を交えていた。




