第286話 終向決戦児戯編 〜3〜
だいぶ無理をして、上から向かってくる氷柱を躱す。
激痛が俺の胴体を襲っている。
ものすごく痛い。
だけど、昔母さんと戦ったときにできた傷よりかは全然痛くない。
母さんの能力は、俺を体内から壊してくる。
それとは反対で、こいつは外側から俺を壊していく。
その二つだったら、体内からやられるほうが何倍も痛い。
この痛みとどう向き合うかで、勝つか負けるか決まると思う。
刀を一振りだけ鞘に収めて、脇腹をおさえる。
すぐに手に血の感触が伝わった。
ケンの姿をさがすけど、どこにもいない。
影に潜り込んだか……。
いや、レツもいない……?
あいつの能力は『光』だったはず……。
「考え事かな?」
ヒョウガはまた俺に斬りかかってきた。
だったら俺も――!
「――剣炎!」
俺の握っている刀の刀身が炎になる。
それでもヒョウガは怯まずにこっちに向かってきた。
俺もヒョウガに斬りかかるけど、ヒョウガはそれを躱してカウンターをいれてくる。
俺もそれを躱すのに精一杯だった。
身体が小さいのもあって、今までのやつより速い。
俺の脇腹から垂れる血の音だけが響いている。
「貫け!」
ヒョウガは俺に掌を向けてくる。
それとほぼ同時にそこに氷柱が現れて、それが超高速で俺に向かう。
俺は紙一重で躱したけど、やっぱり脇腹の痛みには敵わない。
動く度に痛みが俺を襲ってくる。
「……そこ、痛いでしょ?」
ヒョウガがそこを指差して、落ち着いた口調で言う。
「それじゃ戦いに集中できないよね? 大丈夫?」
気味が悪い。
こいつのこの言葉、文字だけ見ればただの挑発の言葉にしか見えないだろう。
だけどこいつの声のせいで、そう思うことはできなかった。
こいつ、『友達が転んでできた怪我を見て、本気で心配している』感じに言ってやがる。
そう、本気で俺のことを心配してる。
「その血、止めてあげるよ!」
ヒョウガが俺を指差す。
刹那――脇腹の傷口に、鋭い痛みが走った。
まるで、ドライアイスに触れたかのような。
それには耐えきれず、思いっきり苦痛の声を上げる。
無意識に脇腹を見ると、血は止まっていた。
ただ、痛くて、冷たいだけ。
「僕の能力、便利でしょ? この使い方強いのになー。これを喰らった人、みんな苦しんじゃうんだよ。バカみたいだね」
ここで初めてヒョウガは顔から笑みを消した。
そして次に浮かべた表情を見て、俺は今までに感じたことがないくらいの恐怖を感じた。
ヒョウガの顔が『笑い』から『嗤い』に変わってたからだ。




