第284話 終向決戦児戯編 〜1〜
「ここ……ゼルロじゃねぇな……」
俺ならわかる。
今から出てくるやつは、ゼルロじゃない。
ゼルロより弱いことは確かだけど、それでも安心はできない。
「――ようこそ! 僕の部屋へ!」
後ろから聞こえる声。
小さい子の声だ。
俺たち3人は一斉に振り向いた。
そこには、一人の少年がいた。
小学生……くらいか……?
手の甲に刻まれてる文字は『氷』。
そして、腰に短刀をかけている。
「んーっと……ゼルロ様、面白いチョイスするなー……。まさか、僕が鬼を倒せるなんて思わなかったよ。でも他の二人は弱そうだなー……。そこはハズレか。で、鬼さん! 名前は?」
「……まず自分から名乗れ。他人に名前を聞くのはそれが最初だ」
「あ、そっか。いやー、てっきりキトナってやつから僕のことを聞いてるかと思ったよ! ごめんね!」
……なんだこいつ……?
なんでこんなに余裕そうな表情を浮かべてるんだ……?
今まで戦ってきたやつも最初は確かに余裕そうだった。
だけど、こいつはそいつらとは違う。
『これから親に遊園地に連れて行ってもらう』、そんな感じに笑ってる。
「僕はヒョウガ! 『氷』の操者だよ! じゃあ次は鬼さんだね! 名前は?」
「……アシトだ」
「うん、やっぱりね! キミがキトナだったらどうしようって思ってたけど、アシトで安心したよ! ま、どっちにしろ鬼だから強いことには変わらないと思うけど」
「よく喋るな。戦いよりおしゃべりが好きか?」
……俺は気づいてる。
今はフレンドリーに話してるけど、こいつが俺たちを殺そうとしている。
「いやー、だって珍しいじゃん? 普段話せないやつと話せるなんて。なんてったって、『嫌われ者』、だもんね!」
「…………」
「それじゃ、そろそろ始めよっか!」
「ちょっと待て。一つだけ訊きたいことがある」
そう、ずっと気になってたことがある。
最初はスカーに訊こうと思ったけど、あいつが喋ってくれるとは思わなかったから、今こいつに訊くことにした。
「スカーは……いつからゼルロに敬語を使ってた?」
これが一番の疑問点だった。
あいつは最初、ゼルロに敬語なんて使ってなかった。
『対等な仲間』、そんな感じだった。
けれどこの前あいつと会ったとき、あいつはゼルロを尊敬してる口調だった。
それがどうも気になる。
「え? 最初からだよ? だってゼルロ様は神様だもん!」
『最初から』……?
あいつはスカーになにをしたんだ?
「それじゃあ、ジュウカラっていう――」
「『そろそろ始めよっか』って言ったよね?」
ヒョウガが掌を向けてくる。
その瞬間、俺の頭上に大きな氷柱が現れた。
それは俺に向かって高速で落ちてくる。
俺はそれを紙一重で躱したけど、やっと伝わった。
ヒョウガが、今まで戦ったやつよりも強いということに。




