第283話 二人の覚悟
「……なぁ、マユ、ハナ」
その二人に後ろから話しかける。
二人は今、キイラが眠ってる場所に立っている。
二人とも、少しも動いてない。
俺の声で振り向いたけど、二人の顔に表情はなかつた。
「今、話せるか?」
「…………」
二人とも黙ったままだった。
だけどこれが、俺に頷いてるってことはすぐにわかった。
「お前ら、二人とも……まだ戦えるか――?」
「戦います」
先に喋ったのはマユだった。
今のマユには、はっきりと表情がある。
「私はなにがあっても、絶対に戦います。もう決めたんです」
「……ハナは?」
「……私も戦います。操者としてあいつらに力を貸していた自分の罪滅ぼしが、そのことだと思っています」
ハナも覚悟はあるみたいだ。
もしゼルロを倒しても、こいつらはきっと戦い続ける。
あいつの操者――特にフィランを――全滅させるまで。
こいつらはもう、覚悟がある。
その覚悟は俺よりも強い。
力があるやつより、覚悟があるやつのほうが強い。
俺はそう思ってる。
もしかしたらこいつらは、母さんよりも強いかもしれない。
マユは、あいつらに全部を奪われたんだ。
大切な妹のハナは操者にさらわれ、ハナからもらった翼はフィランにえぐられ、残った大切な家族も殺された。
こいつはもう、止まることはない。
ハナもそうだ。
大好きな家族から離れて、やりたくもないことを洗脳されてやらされて、洗脳が解けたと思ったら家族がほとんど死んでいた。
残ったのは姉だけ。
そんな大好きな姉の願い、思いを自分も持ち、姉を支える。
それだけが、自分に残された人生の目標。
二人とも、俺よりもいろいろな思いを体験した。
俺はただの嫌われ者。
それなのに、こんなに信頼できる仲間がいる。
俺は充分すぎるほど幸せだ。
「……わかった、もしかしたらすぐにあいつらが――」
『さぁ、自分の命を惜しむ時間もないぞ』
頭に響く、重く冷たい声。
この声を、俺は忘れたことがない。
ゼルロの声だ。
この声はマユとハナも聞こえたらしく、辺りをきょろきょろと見回している。
その瞬間だった。
突然、視界が変わった。
植物が目の前にあった景色から、一気に水色の空間に。
障害物はなく、ただ水色の地平線が広がっている。
「――アシトさん!」
後ろから聞こえる声。
その声を理解する前に刀を抜いて、振り向くと同時にそれを構える。
そこにはレツとケンの姿があった。
「お前ら……」
「ここ、どこですか!?」
困惑しながらも刀を抜いて構えてるレツ。
ケンは震えてるだけだ。
……この瞬間的な空間転移。
……想像より早く来たな。
ゼルロが俺たちを殺しに来たんだ――。




