第26話 床の下
「鬼がこんな程度かよ。あーあ、こんなつまらないんだったら他のやつに任せればよかった!」
男はわざとらしく言う。
クソ……痛くて言葉が出ない……。
「……ルイナ、マユ、少しの間頼む!」
ラーサが言う。
その瞬間、俺の身体が床に沈む。
マジの水みたいに。
沈むと、茶色い空間だった。
上には水面のようなものがあり、その上にルイナやマユ、男が立っていた。
「大丈夫、ここはあいつに見られない」
後ろから男の声。
振り向くと、そこには見知らぬ男がいた。
俺はそいつから離れようとする。
しかし、ここは水中みたいで結構動きにくい。
「怖がらないで、ボクはラーサだよ」
……へ? 今アナタ何と言いましたか?
ラーサ?
ラーサはこんなイケメンじゃねぇぞ……?
「ボクたち地中人は主に地中で生活するんだ。外の空気に触れると、なぜだか知らないけど顔の骨格とかが変わるんだ」
へ、へー……。
じゃあこいつ本当にラーサなのか……?
試してみよう。
「じゃあ試させてくれ。俺の家に行ったことあるだろ? 何色のスープ飲んだ?」
「赤色」
「俺らは同じ班だ。班員を全員言え」
「ボク、アシト、セトオギロ、ルイナ、マユ」
「もう一回お前の名前を言え」
「ラーサ……って、どれだけ信じてないの!?」
よし、どうやらこいつは本当にラーサみたいだ。
「ボクの技で、ここにいるときは回復できるようになってる。危ないと思ったらいつでも来て」
……確かに顔にあった痛みが消えてる……。
これは助かる……。
「『地中に戻りたい』と思えばここに来るから、ボクはサポートしかできないけど。それとここに入れるのはボクともう一人だけ。他に人が入ってるときはここに来れないから気をつけて」
「わかった」
俺は刀をギュッと刀を握る。
そして水中―――床に向かった。
出ると、いるのは暇そうに立っているさっきの男。
肝心のルイナとマユは……。
……! 血まみれで倒れてる……!
「あ、いたいた! 会いたかったぜ!」
男は俺に歩み寄る。
なんでだろう……さっきまでこいつが怖くて仕方なかったのに、今は全然怖くない。
ラーサのあの技のおかげか……?
まぁなんでもいいや。
男は俺に殴りかかる。
こいつ速い……。
「腕炎!」
俺の両腕に炎がつく。
「ハッ! 面白そうじゃないか! やっぱキミ、楽しそうじゃん! あの死神も、猫女も、竜もどきもつまらないやつだったけど、キミは楽しそうだ!」
俺は男の拳を刀で防ぐ。
「お、やるじゃん! じゃあ自己紹介してやるよ―――」
「―――風の操者、フィランだ」
オペラトルス……ネーミングセンスが……




