第121話 どこからでも刀を出せる?
そのことに気づいて、敵に斬りかかれない俺。
でもみんなは必死に女に斬りかかっている。
このことをみんなに教えたほうがいいのかな?
教えるとしたら、どうやって?
言葉で教えるのか?
それだと敵に『その手段があるよ』って教えるようなもんだ。
でも教えなかったらなんかヤバイ気がする……。
どうしよう……。
そんなことを考えてると、俺の隣にセトオギロが来る。
「どうした? 負けそうになったか?」
「いや、お前が来なかったから不思議に思っただけだ」
「……ちょっと嫌なこと思いついちゃって……」
「嫌なこと?」
「……あいつ、さっき刀出してたよな……。なにもない空間から」
「ああ、それがどうした?」
「……スカーってやつ、知ってるか?」
「ああ、それで?」
え、マジで?
これでも気づかないの?
いや、スカーってやつの存在は知ってるけど能力は知らない系のやつか。
「スカーの能力なんだけど――」
「解説しなくてもわかる。そんなバカじゃねぇ」
いやいや、じゃあなんであのことに気づかない?
「……スカーの能力、言ってみろ」
「『どこからでも水を出せる』、だろ?」
「その能力の怖いところは?」
「俺たちの身体の中に水を出せる」
「あいつはどうだ?」
「刀を出せる――! そっか! わかったぜ!」
やっとか。
なんか疲れた。
「……笑えねぇな……」
「だろ? だからちょっと斬りかかれなくて……」
「……それよりルイナのやつだ。あいつ、吹っ飛んでからまだ帰ってきてねぇ」
……確かに。
ルイナならすぐにここに戻れそうだ。
なのに来てない。
大丈夫かな……?
それとも作戦とか練ってるのかな?
うん、きっとそうだ。
「――ボーッとすんな、戦い中に」
急につぶやくセトオギロ。
そして俺の後ろで刃と刃が交わる音が響く。
振り向くと、俺のすぐ近くに刀があった。
鋒が俺に向いてる。
それをセトオギロの鎌が防いでる。
「セトオギロ……」
「何考えてたんだ? 戦略か?」
「いや、また別のことだ……」
「……この世界何年目だ? 戦いの常識忘れんな」
この世界まだ1年も経ってません。
いや、1年経ってるかな?
もうそういう感覚バグってわからない。
「にしてもあいつ、他のやつと戦ってるくせによく俺たちにそんなことやる隙が――」
セトオギロの声が聞こえなくなる。
そして、セトオギロのいたところに、あの女が現れた。
セトオギロはもうそこにいない。
吹っ飛ばされたか……。
女は俺に殴りかかってる。
……腕を蒸発させるだけじゃ勝てない。
ここは腕で女の拳を防いで、女が怯んだ瞬間で、女の胸に刀を刺す。
これなら確実に殺せる。
俺は右腕を自分の顔の前に持ってくる。
「――ダメ!」
ルイナの声がする。
女の後ろにルイナがいた。
片手で腹をおさえてる……?
……? なんか赤い……?
血……?
腹から血が出てる……?
さっきの攻撃で怪我したのか……。
殴られたんだっけ?
……? 殴られた?
それなのに血?
貫通したわけじゃなさそうだ。
うん、そうだ。
そうだったら女の身体にもルイナの血がついてるはずだ。
……『刀』の操者?
『刀』……、『刀』……?
……! わかったかも!
そう思ったころには、女の拳は俺の腕に当たっていた。




