第116話 協力しない?
「――さま――!」
なんか声がする。
……なにしてんだっけ、俺。
……そっか、寝てたんだ。
あー、目開けたくない……。
眩しいの嫌だな……。
「――さま! ご主人様――!」
なんか聞こえる。
なんだろう……。
「ご主人様! 起きて!」
そんな声と同時に、なんか腹に重いものが乗ってくる。
「なッ……! 急になんだよ!」
急いで目を開ける俺。
なんか人間の姿になったムルノが俺の腹に乗っかってた。
「ご主人様寝すぎ!」
「んなこと言われても……」
「とりあえず、早くついてきて!」
ムルノはそう言って窓から外に出る。
俺も出なきゃ……。
……あ、装備も忘れずに。
「――ここ!」
ムルノが止まる。
そこは森の中で、なんか1本だけクソ高い木がある。
その前には母さんたちがいた。
なんか『全員集合!』みたいな感じで、みんないる。
そして木を見上げていた。
俺もみんなみたいに見上げる。
なんか木の幹に誰かが乗っかってた。
刀を持ってる男だ。
こいつ……、確かレツと一緒にいた男じゃねぇかよ。
俺のこと『嫌われ者め!』とか言ってたやつ。
「母さん、あいつなにやってんだ?」
「さぁ? なんか叫んでるみたいだけど」
呑気な母さんの声。
なんか叫んでる?
「――俺は! 鬼なんかに! 協力しないぞ!」
確かになんか叫んでる。
「鬼なんかに! 協力するくらいなら! 死んだほうが! マシだ!」
……そうですか。
「さっきからずっとこうやって叫んでるんだよねー。飛び降りとかしなければいいんだけど」
言葉とは裏腹に、呑気な母さん。
確かに、みんな焦ってない。
ただ『なにやってんだ、あいつ』みたいな目してる。
「死んでやる! 鬼に近づきたくない!」
いや、近づいてきたのそっちでしょ。
ってか、近づきたくないから死ぬなら遠下がればいいじゃん。
「ここから飛び降りてやる!」
じゃ、キャッチさせてもらいます。
「さっきからずっとそう言ってるだよね、あの子。いつまでも飛び降りないから心配なの」
それは心配するわ。
「――あ、来る」
母さんな言う。
すると、男が落ちてきた。
この高さなら変な落ち方したら死ぬかもな。
なんかハナのところに向かって落ちてきてる。
ハナは余裕そうな表情で男を受け止める。
「あの……、大丈夫ですか……?」
ここで『大丈夫ですか?』って訊けるハナ、すごいな。
「……! え、あ、はい!」
「自殺とかダメですよ?」
「あ、はい! やめます!」
え、そんな簡単に心変わる?
ハナに弱いんだな、この男。
確かにハナかわいいけど。
ってか、いつまでハナから離れないんだよ。




