第113話 ハナが負けた
※三人称視点です
「――ハナが負けた」
暗い室内で、簡素な椅子に座っている男が言う。
「負けたって……、死んだんですか?」
そう質問したのは、左手の甲に『炎』と刻まれた男――エレキ。
「それはわからない。だが、ラーサも負けたみたいだ」
男は立ち上がる。
しかし、歩いたりはせず、ただ立ったままだ。
「残る操者は9人……。あっという間に4人も死んだんだな。……いや、チルタのやつを合わせたら5人か。……ってか、大丈夫なんですか? このままじゃ全滅する未来しか見えないんですけど」
「全滅はないだろう。必ずどこかで止まるはずだ」
「ま、確かにスカーとかいれば余裕か」
そう言い放ったエレキに、男は黙って近づく。
「しかも、キトナとかいうやつそんなにヤバイんですか? スカーとかの能力で一瞬で終わる気がするんですけど」
「スカーの能力は単純すぎる。水を出す程度の能力ではキトナには勝てない」
「じゃあかなりヤバイじゃないですか」
「いや、焦る必要はない」
「ゼルロ様が戦えば勝てるからですか?」
「それはわからない。だが焦らなくてもよい」
「じゃあなんでアジトを転々と変えるんですか? それに、アシトとかいうやつが住んでるところからどんどん離れていってるし」
エレキの言葉に、男は黙った。
エレキは男を睨んでいる。
「――ゼルロ……様……!」
緊張した空気のなかを、誰かの声が遮る。
二人のすぐ近くに、血まみれのラーサが現れていた。
「ラーサ? お前生きてたのかよ」
「ボクを……、あんまり舐めないでほしいな……!」
「おかしいぞ。貴様はムルノに消されたはずだ」
今度はラーサに近づく男。
ラーサは息を切らしながら床に頭をつける。
「ボクは……、地中では……、再生ができます……。消される直前に……、腕を……外して……、それから……、再生させました……!」
「よくわからないが、生きていたのか」
「はい……!」
「では残っている操者は10体だな」
男はラーサに背を向ける。
それでもラーサは頭を上げようとしない。
「次は誰を選ぶか考えるとするか」
そう言うと、男は煙のように消えた。
残ったのはエレキとラーサの二人。
ラーサはその瞬間に気絶し、倒れた。
エレキは男が消えた場所までゆっくりと歩いて行き、そこで手に力を入れた。




