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第111話 マユが起きた

 「――アシト、起きた」


 母さんが急に部屋に入ってきて、俺にそう言った。

 ハナはずっと窓から外を見ていて、それに気づいていない。


 「1階で待ってるね」


 母さんはそれだけ言って、部屋から出ていった。

 マユが起きたみたいだ。


 「なぁ、ハナ。マユが起きたみたいだけど、会うか?」

 「! うん!」

 「わかった、じゃ、ついてきて」


 俺は部屋のドアを開けた。

 ハナは急いでベッドから降りて、俺のうしろにつく。


 俺たちは1階にあるリビングに向かった。


 そしたら、そこにマユがいた。

 俺を見た瞬間、目を大きくした。


 母さんはそこにいない。

 もちろん、ルイナやセトオギロ、キイラもいない。


 「アシトさん……」

 「マユ、会いたい人がいるって」


 俺はマユにハナを見せる。

 すると、マユもハナもお互いを見つめ合ってた。


 「……お姉ちゃん……?」


 ハナがマユに近づく。


 「ハナ……!」


 マユがハナを抱きしめる。


 「ごめん……! ごめん……、ハナ……! 色々とごめん……!」

 「なんで……お姉ちゃんが謝るの……?」


 二人とも泣き出す。


 俺はどうすればいいんだろう……。

 ここから出たほうがいいのかな?


 「ずっと独りにさせてごめん……!」

 「謝るのは……、私だよ……。私……、お姉ちゃん……刺したんだよね……?」

 「違う! マユは悪くない!」


 二人とも号泣してる。

 俺は本当になにをすればいいんだろう……。


 「……あと……ハナ……、翼……、もがれて……、ハナがせっかくくれたのに……」

 「…………」


 マユの言葉に、ハナは喋らなくなる。

 翼ってなんだ……?


 『――アシト、聞こえる?』


 頭の中に母さんの声が響く。

 でも、近くに母さんがいる気配はない。


 『私の言葉に相槌(あいずち)打たなくていいから。……マユちゃん、ハナちゃんから翼をもらったんだって。


 マユちゃんたち竜はね、もともと翼が生えてるんだけど、マユちゃんは生まれつき翼が不自由だったの。飛行もできないから、みんなに笑われて、気持ち悪がられたんだって。それでハナちゃんは、マユちゃんに翼を移植させてあげることにしたの。その直後、マユちゃんの家が何者かに襲撃された。そのとき、マユちゃんとマユちゃんの親は家にいなかったの。家にいたのはハナちゃんだけ。


 荒らされた家でどこをさがしてもハナちゃんはいなくて、近くに血も飛び散ってたから、みんなハナちゃんが殺されたと思ったの。


 それからマユちゃんは、ハナちゃんからもらった翼を大切にしてたんだって』


 ……だからか。

 フィランと戦ってマユの翼が切断されたとき、マユは大げさと思えるくらい泣いてた。


 その理由が今わかった。


 「――いいよ、そんなの」


 ハナがマユに言う。


 「お姉ちゃんとまた会えたから……、そんなのどうでもいいよ……!」


 ハナはさっきより大声で泣く。


 ……二人、また会えてよかったな。

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