第110話 連れて帰ってきた
俺の部屋のベッドで女の子が寝てる。
花の操者――マユの妹だ。
なぜかここで寝てる。
母さんがここに寝かせた。
普通マユの部屋で一緒に寝かせるよね?
マユの部屋が無理なら、せめてルイナの部屋でしょ。
いつも男が寝てるベッドに女の子寝かせちゃダメな気がする……。
そして母さんに、この子が起きるまで一緒にいろって言われた。
それで3時間くらいずっとここにいる。
この世界にゲーム機とかスマホとかないからヤバイくらい暇。
「――……ん……?」
ベッドから声がする。
女の子が目を覚ました。
俺と目が合う。
……なんか気まずい……。
こういうときって『やっと起きたか』みたいなやつ言えばいいのかな?
そしてなぜこの子は俺の顔を凝視してる?
めっちゃ気まずいんだけど。
「……!」
女の子が身体を起こす。
やっと完全に目が覚めたみたい。
俺を怯えるような目で見る。
「大丈夫、傷つけない」
俺は両手を挙げる。
でも背中に刀かけてるからあんまり意味ないな……、この行動……。
……本当になに言えばいいんだろう……。
「キミ、『ハナ』っていうんだよね? 俺はアシト、よろしく」
「……なんで私の名前……」
なんでって……。
俺たちと戦ったこと、覚えてないのかな?
「……マユから聞いた」
「……お姉ちゃん……?」
「ああ、そうだな。キミのお姉さんだ」
「お姉ちゃん……!」
ハナはベッドから降りようとする。
でも、手で脇腹をおさえて苦しそうな顔をする。
マユに脇腹ぶっ刺されたからな……。
「まだあんまり動かないで、傷あるし」
「お姉ちゃん……」
「まだマユは気絶してる。さっきのこと、覚えてないか?」
「さっき……?」
「俺たちと――マユと斬り合ったこと」
「お姉ちゃんと……、斬り合う……!」
この反応、記憶にないみたいだな。
ゼルロのやつに操られてたって可能性もあるな……。
「それで、キミがマユを刺して、マユがキミを刺した」
「刺したって……! そんなこと……」
ハナは俺から目をそらして、窓を見る。
「……いや、そういえば……」
「なんか思い出したか?」
「最後に……、お姉ちゃんに言われたかも……。『いつでも一緒だよ』って……」
そういえば、最後にそんなこと言ってたな、マユ。
ってことは、刺されたあとからの記憶はあるのか。
「……ってことは……私……、お姉ちゃんを……、刺したんだ……。しかも……胸……」
「そうだな」
「……じゃあもう……独りだ……」
「いや、マユはまだ生きてる」
俺が言うと、ハナは俺の顔を見る。
かなり驚いてる。
「生きてる……?」
「ああ、気絶してるだけ」
「どこに……! どこにいるの……!」
ハナがまたベッドから降りようとする。
でもやっぱり脇腹が痛いみたいで、無理みたい。
「隣の部屋にいる。マユが起きたら会えばいい」
俺がそう言うとハナは泣きそうな顔になって、また窓に顔を向けた。




