第107話 この空間を『無』に
「アシト、なんか知ってる? みんな離れちゃったんだけど」
「わからない。ルイナはなんか知らないか?」
「わからない。気づいたらセトオギロがいなくなってて、アシトがいたから来たの」
俺が見えた?
ってことは、俺とルイナは同じ空間にいたってことだよな?
なんで俺とルイナだけ同じ空間に出たんだ?
「あと、向こうでムルノちゃんが倒れてるよ。今は気絶してるけど」
マジか……。
ムルノもここにいるのか――
――って、なんでルイナがムルノのことわかる!?
今のムルノって人の姿だよね!?
「なぁルイナ……、なんでムルノってわかるんだ……?」
「ムルノちゃんとおんなじにおいがしたから」
同じにおい……?
今度嗅いでみよ……。
「それより、早くみんなのところに行かなきゃ。多分、敵を倒せばこの空間から出られると思うんだけど……」
「敵なんてどこにもいないしな……。誰かが敵を倒すのを待つしかないみたいだな」
「ええ……」
いや、そんながっかりされても……。
「あとさ、なんか気になったことがあるんだけど……」
「なんだ?」
「敵がさ、マユと同じにおいしたんだよね」
同じにおいがした、か……。
ってことは、敵はマユの妹だな。
だったらマユが話し合ってくれればいいのに……。
そうすれば戦わなくて済むよね?
でも、敵はマユと本気で戦ってたように見えた。
じゃあマユの妹はマユのことを完全に敵だと思ってるのか……?
だけどマユは敵――妹を完全な敵だと思ってなさそうだった。
妹が一方的にマユを敵だと思ってるのかな?
「アシトの技って使える? なんか蒸発させるやつあったよね? あれでこの空間ごと消せない?」
「いや、なんか……、技が使えないんだ……。しかも、この空間ごと蒸発させることはさすがにできないと思う。それに、仮にできたとしてもルイナやムルノも技を喰らうことになる。それだとルイナたちも蒸発しちまう」
「うーん……」
結局どうやっても出られないのか。
ただ待つしかできないのか……。
「――ご主人様……!」
後ろからムルノの声がする。
振り向くと、息を切らしてるムルノがいた。
立つのもやっとみたいだ。
「私が……! 『花』の操者の存在を……消す……!」
「ムルノ……、お前大丈夫なのかよ?」
「結構ギリギリだよ……! でも……、『花』のほうはかなり強そう……! だから……私がやんなきゃ……」
ふらつくムルノ。
俺はムルノのところまで駆け寄った。
「できるのか?」
「うん……、絶対にできる……!」
「なら――」
――いや、待てよ?
敵はマユの妹だ。
俺たちが殺していいのか……?
せめてマユにやってもらいたい……。
うん、絶対それがいい。
「いや、ムルノ。この空間を『無』にできないか?」
ムルノは『無』の操者だ。
だったらできるかもしれない。
「……それでいいの……? 能力を使えるのは……、体力的に……、あと1回しかできない……!」
「ああ、頼む」
「じゃあ……、『花』のやつはお願い……!」
ムルノはそう言って地面に手をつける。
すると、花畑が消えた。
空間がもとに戻って、奥の方で敵とマユが斬り合っている。
「ありがとな、ムルノ」
俺はそう言ったけど、多分ムルノには聞こえてなかった。
ムルノは地面に倒れてて、目を閉じていたから。




