第100話 ムルノVSラーサ
「降参するなら今だよ? あと、降参したほうがいいと思うよ? 普通の操者が私とご主人様に勝てるとは思えないし」
「残念だけど、ボクは『普通』じゃないんだよね。そもそもトルアキナ族ですらない」
「見た感じそうだね。右頬に紋様ないし。トルアキナ族化するなら今だよ? じゃなきゃ一瞬で死ぬよ?」
「トルアキナ族化……?」
『トルアキナ族化』という単語に眉をひそめるラーサ。
この反応からして、ラーサはトルアキナ族化のことを知らないみたいだ。
なら、俺がトルアキナ族化して戦えば多分勝てる。
問題は『俺の意思でトルアキナ族化できない』ってことだ。
それさえできれば楽なんだけどな……。
「あーあ、動くの久しぶりだなー……。四足歩行じゃない戦い方、忘れちゃったんだよね。最初のほうは私、結構弱いから安心して」
ムルノが姿勢を低くする。
ラーサに殴りかかる気だ。
ラーサはそうさせないために、ラーサとムルノの間に大きい岩の壁を出す。
でも、その大きな岩が一瞬で消えた。
そして、ラーサがいたところにはもうラーサはいない。
多分地面に沈んだんだ。
「地面に沈むことくらいしかできないの? 芸ないね」
ムルノはしゃがんで、地面に掌をつける。
「ご主人様! 一応空中にいて!」
なにする気だ……?
……まさか――
俺は急いで地面を思いっきり蹴って跳ぶ。
それと同時に、地面がなくなった。
底のない空間になった。
ムルノはまるでその場に地面があるかのように立っている。
……いや、俺たちは大丈夫だけどルイナたち!
俺はみんながいる方向を見る。
でも、誰もいなかった。
「ああ、ご主人様、ルイナたちなら心配いらないよ。ちょっと世界をわけただけだから」
んなこと言われても……。
ムルノの言ってることが理解できない。
「本当にどんな能力なんだ? 教えてほしい」
ラーサの周りを大量の岩が動く。
すると、それが階段状になった。
ラーサはそれを一段ずつのぼる。
「そんな簡単に敵に能力教えるわけないでしょ。バカなの? ……ま、どうせすぐわかると思うけど」
ムルノは左手の甲を右手で隠しながら、少しずつラーサに近づく。
ラーサはムルノを警戒している表情で、ムルノを睨んでる。
俺はなにができるんだ……?
「――よし、できた!」
ムルノがなんかガッツポーズしてる。
もう左手の甲が見える状態だ。
そして俺はそれを見て驚いた。
ムルノの左手の甲には、『無』と刻まれていたからだ。




