表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/9

第8話『愛し子』を失った王国


 とある王国に『精霊の愛し子』が誕生した。

 けれど、王国は『精霊の愛し子』を邪魔者扱いし排除しようと目論んだ。

 『精霊の愛し子』は王太子の婚約者でもあったが、王太子は『聖女』という恋人に夢中で『精霊の愛し子』を邪険にしていた。


 悲しみに暮れる『精霊の愛し子』であったが、家族だけは味方であった。

 その唯一の味方の助けと精霊王の願いによって、『精霊の愛し子』は精霊界に行く事になった。


 『精霊の愛し子』を失った王国は、不毛の大地になり果てる。


 作物は育たない。

 水は枯れる。

 災害が起こる。

 魔獣が活性化する。

 疫病が流行る。


 ありとあらゆる厄災が訪れたのだ。


 王太子はその時になってやっと後悔した。

 恋に盲目になったせいで精霊の怒りを買ったのだと。


 王家と神殿は民から非難された。

 

 冒険者達は次々と魔獣に殺された。


 民衆からの支持を失ったのは『聖女』も同じ。


 王国中が『精霊の愛し子』に赦しを乞うた。


 彼らの声は『精霊の愛し子』には届かない。


 王国という存在が消え失せるその時まで、彼らは懺悔し続ける。






「おかあ様」


「なあに?」


「その王国は結局どうなったの?」


「ふふっ。今も祈っているわ」


「愛し子にごめんなさいって言ってるの?」


「ええ」


「愛し子には聞こえていないのに?」


「ええ」


「どうして?」


「愛し子はとても優しい女性だったから謝れば許してくれると思っているのよ」


「聞こえないのに謝るの?」


「今は聞こえなくても何時かは聞こえるようになる、そう信じているの。聞こえたら愛し子は自分達を助けてくれると信じているのね」


「え~~~。酷い事ばっかりしたのに?」


「それが人間というものよ。それよりも、明日は伯母様が来る日よ。お母様と一緒に伯母様の大好きなお菓子を作りましょうか」


「は~~い!」


 パタパタとかけていく幼い娘の後ろ姿を見た後、絵本を閉じた。


 


「どれだけ謝ろうとも私が許さない」


 姉は優しいから許してしまうだろう。

 私は優しくない()()()だからお前達を絶対に許さない。


 このまま朽ちていくといい。




  



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] とても面白く読後感の余韻が素敵でした。 滅ぶべくして滅んだ国がまた一つ増えただけですね。 歴史から何も学ばなかった、学ぼうとしなかったこの国の指導者層(王族貴族神殿ets)には因果応報自業…
[一言] 最期は妹視点で、子供も小さいから10年後ぐらいでしょうか? まあまだ王国は滅亡してない様ですが。
[良い点] 読ませていただきました、面白かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ