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第6話他国では


「王家は姉の力を知った上で『約束』を交わした。その一方で聖女の力も欲しがった。

 神殿は自分達の勢力拡大を図り、姉が邪魔だった。けれど姉の力を利用したかった。

 冒険者ギルドは、自分達に近い聖女を次期王妃に祀り上げたかった。もしくは恋仲になった聖女と王太子の仲が上手くいって欲しいと願った。でも婚約者の姉がいる。彼らにしたら恋人たちの仲を引き裂く悪役だ。だから排除しようと思った。愛し子の存在は御伽噺の眉唾と考えてもいた。ただそこに存在しているだけで恩恵を与えるなど過酷な仕事を日頃からこなしている彼らには理解出来なかった。それを教えるのが国や神殿。なにのそれを怠った。

 貴族も神殿と王家の繋がりを強固にして甘い汁を吸いたかった。それには姉が目障りだった。冒険者たちのように積極的に何かをした訳ではないけれど陰である事ない事噂を広めた。

 公爵領を除いた民衆は彼らの噂を真に受けて、姉を口汚く罵った。

 

 国がきちんと『精霊の愛し子』がどういう存在か国民に教育していれば、今のような騒動はなかったかもしれませんね」


「申し訳ない」


「別に貴男が謝る必要はありません」


「許してくれるのか?」


「何故、許しを与えるのです? そもそも貴方達が謝る相手は精霊世界にいるんですよ? 私達公爵家に謝られても何もできません。それの精霊信仰を忘れたのは人です。偶々、この土地に私達一族がいたからこの国と周辺は恩恵を受けていたに過ぎないんですよ。本来なら、そういった信仰は国を挙げてするものです。王家や神殿が主体となってね」


「だが、神殿は……」


「言っておきますが、他国の神殿は精霊信仰を忘れてませんよ? 自分達の神と一緒に精霊も祀ってます。この国のような原理主義の神殿は少数派ですよ」


「そうだったのか……」


 昔のツケと言うべきか、国同士の行き来というのは制限されている。

 それはこの国だけじゃなく、殆どの国がそうなっているので元婚約者が知らなくても無理はない。


「もう、王国の大地を支えていた精霊はいません。精霊達は自分達が()()()()()を蔑ろにされてまで人間に恩恵を与えるマネはしない。この国の人間はそれを理解して受け入れる事です。『精霊の愛し子』ではなく『聖女』を選んだのですから。これからは()()()()()()で国を豊かにしていく。それでいいじゃないですか」


「そうだな……それしかない……か」


 この国にも良い人はいるだろう。

 良い人くらいは公爵領で受け入れてもいいと普段なら思う事も今は全く思わない。少なくとも彼らは姉を侮辱した人間の仲間だ。信仰を忘れ『精霊の愛し子』を追い出した責任は取ってもらおう。



「ミコト嬢……もしよかったら……」



 元婚約者殿、その話は聞かなかった事にしよう。

 





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