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第5話神職の家系 


「公爵領には何も起こらないのは何故だい?」


 私の婚約者……いえ、元婚約者が今更な事を聞いてくる。姉の婚約解消と共に、私も婚約者との婚約を白紙にした。私の婚約者は王太子の側近である宰相の息子。姉を裏切った側の人間は今、公爵領に来ている。国の中で唯一何も起こらず今尚、緑豊かな大地で平和を貪っている理由を知りたいとアポをとってきた。



「それは当然です」


「何故?」


「我が公爵家は元々神職の家系だからです」


「はっ!?」


 どうやら元婚約者は我が家の家系を知らなかったようだ。


「この国が建国される前から我が一族はこの土地を管理してきました。偶々、ここら一帯を治める事になった今の王家……正確には初代国王にお願いされて国に所属しているだけですから」


 呆気に取られている元婚約者は本当に知らなかったようだ。まあ、無理もない。何しろ、千年前の話だ。

 

「だから……かい? 元神職の家だから精霊の怒りが向かわないと言うのか……」


「あ、それは少し違います。神と言っても、神殿が『神』へと祀り上げた存在とは別の存在です」


「……それはどういう事だい?」


「この土地の『土地神様』といった存在を祀っていたんです」


「それは……」


「今で言うなら『邪神』です。


 もっとも、邪神と言い始めたのは神殿ですけどね。王国ができる前は土着信仰が根付いていましたが、それも今では伝説となり、新興勢力の『人間のための神』を崇める神殿(新興宗教)によって淘汰されました。


 それによって土着信仰の(やしろ)を祀る者はいなくなり、訪れる者もいなくなりました。

 当然というか、必然というか……土地神様は怒りました。詣でなさい、祀りなさい、敬いなさい、と。ですが、信仰を忘れた人間に『神の声』は届かない。しかも自分達『神』を祀る者を次々と残虐に殺していく神殿に怒り狂い、祟った。『自分達の可愛い子供達に何しやがるんだ』と。


 その怒りと悲しみで多くの神官が狂い死に、大地は干上がり人の住めない場所へと変貌した」


「それはまさか……」


「今回と同じパターンです」


 元婚約者は頭を抱えている。

 察しは良い方なんだと感心した。


 そう、土地神様とは今で言う『精霊』の事だ。


「王太子にもう少し理解力があれば、姉を蔑ろにすればどうなるのか分かったでしょうに。王太子の心変わりは発端にすぎない。王家も神殿も精霊を甘く見過ぎです。今回の件は人の欲深さが招いた結果です」


「……それ、は」


 口ごもった元婚約者。

 自覚があるようで何より。


 


 

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