異世界への門
「」の中に[]があるヤツは、異世界の言語で話している部分です。
早朝、まだ日は出ておらず霧が少し漂っている。薄暗いが、少しずつ明るくはなってきている。そんな早朝の森の中。少し開けた滝がある場所に仮面を付けた2人の男女の姿があった。
「特に異常や変わったとこは無かったか?」
「特になかったよ」
「よし、じゃあ戻ろう」
そして、高速で家に戻ったのだった。
家に戻り、着替えた後食事をとって昨日集まった部屋に集まる。
部屋に集まったのは、昨日集まった龍馬、梨紗、宗一と朔夜。全員集まったのを見て龍馬が話し出す。
「今日は学校を休もうと思います。梨紗にも休んでもらい、彼女の様子を見てもらいます。朔夜には月夜家に手紙を届けてもらい、あとは梨紗と交代で様子を見てもらいます」
「その間、お前はどうするのだ?」
宗一が龍馬に質問をした。確かに、二人の行動の説明はしたが龍馬自身はなにをするか言ってなかった。
「自分は念の為、定期的に見回りをします」
「そうか、わかった。なら、学校にはワシから連絡しとく」
「お願いします」
「よし、なら解散じゃ」
宗一がそう言ってすぐに全員部屋を出ていったのだった。
ー少女視点ー
少女はゆっくりと目を覚ます。最初はぼやけていた視界が徐々にピントがあってくる。
最初に見えたのは、木でできた天井。横から少し陽の光が差し込んできている。顔を横に向けると一人の女性が座って居眠りをしていた。
少女は上半身を起こし、周りを見渡す。
(ここは、どこ? 確か私は、追いかけられてて……)
少女は自分の状況を確認していた。
(そうか。確か黒い仮面をしてたあの人に助けられたんだ……ってことは、ここはあの人の屋敷?)
周りを見渡し、部屋をくまなく見る。
(桜璻の国の人なのかな?)
そう考えていると、部屋の扉が開き、そこから白衣を来た茶髪でロングストレートの女性が入ってきた。
「あら、目が覚めたようですね。周防様は眠っておいでで」
朔夜は、眠っている周防を起こし、龍馬に連絡するように伝えた。
周防が部屋から出ていき、朔夜と少女の二人きりにになった。
朔夜は少女から見て左側に座り、少女に話しかける。
「[どこか痛む場所とかはありますか?]」
少女はそう聞かれ、自分の腕を見る。逃げる時に負った傷が綺麗に消えていた。
「[特にないです。治療して頂き、ありがとうございます]」
「[そうですか。それはよかったです。ある人が来るまで少々お待ちください]」
そう言われて、しばらく待つと部屋の扉が開いた。入ってきたのは見覚えのある顔だった。襲われてる時に助けてくれた男だった。
男は女性の隣に座り、喋り出す。
「[お身体は大丈夫ですか?]」
「[え?あ、大丈夫です]」
「[よかった。あ、申し遅れました。【龍馬】と申します]」
「[あ!助けて下さり、ありがとうございます。私の名は【ミレイア】。【ミレイア・システィー】と申します]」
「[わかりました。ミレイアさん。とりあえ…]」
龍馬が話しを進めようとすると、可愛らしいお腹の音がなり、ミレイアが顔を赤くする。
「[先に食事にしましょう。話しはそれからで]」
そう言って、龍馬は立ち上がる。
「梨紗。ご飯の支度を。向こうの世界の料理で。朔夜は彼女に着替えを任せる」
ミレイアは彼の使っている言語が理解できなかった。ミレイアにとって、聞いたことの無い発音だった。
「[では、あとのことは彼女に任せているので、食後に話しましょう。では]」
龍馬は立ち上がり、部屋を出ていくのだった。
食後。
龍馬はある部屋に来ていた。部屋には龍馬以外誰もいなかった。
しばらく待つと、朔夜とミレイアが部屋にきた。ミレイアはさっきとは違う服装できた。おそらく朔夜が着替えを持ってきたのだろう。
朔夜がイスを引きミレイアを座らせる。朔夜はミレイアの後ろに立つ。
「それでは、先程の続きをしていきます」
「はい」
ミレイアはしっかりと背筋を伸ばし、少し肩の力が入っていた。
龍馬は少し考えたあと、本題に入る。
「今後のことを話します。私はミレイアさんを家まで送り届けようと思っています」
「ほ、本当ですか!?」
ミレイアは、勢いよく立ち上がり、机に両手をつけ前のめりになる。
「落ち着いてください。ミレイアさん」
「あ、すみません。取り乱してしまって」
ミレイアさんは顔を赤らめながら椅子に座る。
「ただし、条件があります。一つ目は、ここのことを全て他言無用でお願いします。二つ目は、あなたが通ってきた"門"の事も他言無用です。これが呑めなければ送りません」
龍馬は、回答まで少し考えると思っていたが意外にその答えはずくに出た。
「それで安全が保証されるならどんな条件でも呑みます」
彼女の目は覚悟を決めた目だった。龍馬は彼女の返事を聞いたあと、次の話をする。
「ミレイアさんの実家は、東領地の貴族。伯爵家のシスティー家ですか?それとも、中央の男爵家のシスティー家ですか?」
ミレイアは目を丸くした。いくら貴族だとしても、全貴族の家名・爵位を覚えるのは並大抵のことではない。ましてや、他の国の貴族なら有名でもない限り分かるはずがないのだ。
龍馬が今話したことは異常でもある。
「わ、私は東領地・伯爵家のシスティー家です」
ミレイアは少し動揺していた。一方、龍馬は今後の予定を考えていた。
(なるほど。ならイフスター領地を通ることになるな。エデナル様には手紙を送ろう)
予定を立てていくと同時に、龍馬は一つの気になることを思い出した。
「いきなりですみませんが、ミレイアさんはどうして追われていたのですか?」
龍馬の質問でミレイアは少し俯き暗い顔になる。
「実は、馬車で帰ってる途中に賊に襲われて。騎士の人たちが立ち向かったのですが、数に押されてしまって。私を途中逃がしたのですが、逃げきれず…」
「なるほど」
(気まずくなってしまったな)
龍馬は少し、自分の質問が地雷だったと思う。
気まずい雰囲気で、どう進めればいいかわからなくなったところに朔夜が喋り始める。
「龍馬様。いつ行くのかをお話した方がよろしいのではないのでしょうか?」
朔夜が話題を変える。
「そうだね。ミレイアさん、ここを立つのは2日後の夜です。準備ができ次第出発しますので、準備などは朔夜に聞いたりしてください」
「あ、はい。分かりました」
「それでは、終わります」
そう言って、龍馬は後のことを朔夜に頼み部屋から出ていくのだった。
2日後の夜。中庭に集まった龍馬、ミレイア、朔夜、梨紗、健一の4人が中庭に集まっていた。
龍馬は、ミレイアと会った時と同じ服で仮面を頭に付けている。
「[朔夜さん。服を治していただき、本当にありがとうございます。前よりも動きやすいです]」
ミレイアは、朔夜に服を治してもらったお礼を言っていた。
「[いえいえ。違和感が無いようでなによりです]」
少しは打ち解けたようでなによりだった。
すると、梨紗が近づいてきた。
「龍馬。これ」
梨紗が龍馬に御守りを渡す。御守りには「航空安全」と書かれていた。
「ありがとう。梨紗」
龍馬は御守りを受け取り、腰に付いてる小さいバッグにお守りを入れる。
「[それでは、行きましょう]」
「[は、はい!]」
龍馬は、中庭にある門のところに向かう前に、もう一度ミレイアに他言無用と年を押し向かう。
龍馬が門を開いて中に入ると、穴の壁に立った。
「[この中では、こっちが地面なので、入る時は気をつけてください]」
梨紗は頷き、梨紗は門の中に入る。倒れかけたのを龍馬が受け止める。
「[あ、ありがとうございます]」
龍馬から離れて少し照れるミレイア。
「[それでは、行きましょう。]梨紗!閉めてくれ」
入口からひょこっと顔を出し喋る。
「気をつけてね」
「ああ」
そう言って、門をバタンと閉める梨紗。暗い洞窟の中で、龍馬は入ってすぐのところに置いてあるランタンを取り、魔石を入れて灯りをつける。
「[ここでは、魔物は出ないので安心してください。それでは、行きましょう]」
しばらく歩くと、水の音と少しの明かりが見えてきた。
明るくなり、出口が見えると出口には上から勢いよく水が流れていた。
「ここは、滝の裏にある洞窟で、普通に抜けようとしたら水に押し流されて落ちます。私が風魔法で穴を開くのでその間に通ります。失礼」
「キャッ」
そう言って、龍馬はミレイアをお姫様抱っこをする。
「しっかりと捕まっててください」
ミレイアは、恥ずかしがりながら龍馬の首に腕を回しつかまる。
「ふ〜……【ウィンドカノン!】」
龍馬が風魔法で滝に穴を開けると、すぐにその穴から抜ける。
ミレイアは、差し込む光に目を瞑る。段々と目が慣れていき、目を開くと。緑が生い茂った森が見えたのだった。