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異世界門と2つの世界  作者: 夜月 蒼真
2/8

保護



森の中。気を失った少女と刀を持った出水が居た。出水は狐の面を頭に付け、少女に近づいていく。


(気を失っただけか)


少女の安否を確認して、立ち上がる。すると、後ろから近づいてくる気配があった。


「来たか」


森の中から1人現れた。

タンッ


「ごめん、取り逃した」


森から現れた周防は出水の前に立ち、状況説明をする。捕らえる寸前までいったが、仲間が門から現れ逃げられたらしい。


「本当にごめん!」

「いや、気にしなくていいよ。話を聞く限り、その魔術士は強いし不利な相手だから。周防に怪我がなくてよかったよ」

「ありがとう。それより、その子はどうするの?」


周防が気を失っている少女のことを聞く。出水は、周防の質問に答えず小さい竹笛を取り出し鳴らす。少し高い音が鳴り響くと、出水は笛をしまいさっきの周防の質問に答える。


「とりあえず保護する。事情しだいでは送り返す」

「また、あっちの世界に行くの?」

「まだ決まってないけど、そうなるだろうね」


出水は"あっちの世界"に何度か行ったことがある。あちらの世界は現代と違い、科学は発展しておらず魔法や魔物などが存在する世界。


「来たか」


出水が空を見上げると、フクロウが飛んできた。出水は左腕を出してフクロウがそこに止まった。


「ホー」

「この手紙を持って行ってくれ」


出水は折りたたんだ紙をフクロウの足に着いてる小さなカバンに入れてフクロウを飛ばした。


「周防、彼女を屋敷に運んで。目立った怪我は無いけど、念には念でお願い」

「わかった。出水はどうするの?」

「俺は滝の方に行って、なにか残ってないか探してみる。じゃあ、頼んだぞ」


そう言って、出水は木の枝を飛びすぐに森の中へ消えていった。




その後、出水は滝に向かい周辺をくまなく散策したが手掛かりになりそうなものは見つからなかった。


「これ以上は無駄だな。帰ろう」


そう言って、出水は家の方に帰って行った。




森の中を、疾走する出水。一直線に進んでいく。


「見えた」


出水の見る先に、大きな建物があった。大きな神社だ。

神社の周りは高い塀で囲われている。

出水はスピードを上げ、ジャンプして塀を軽々しく飛び越えて行く。

タッ!


「ふぅ」

「龍馬様。塀を飛び越えてくるのはお控えください」


声の方に顔を向けると白衣を着て歩いてくる女性がいた。髪は茶髪でロングストレート。


朔夜(さくや)。遠いから時間短縮だよ」

「裏口から入ってください。私が旦那様に怒られてしまいます」


裏口があるのだが、面倒なのでいつも塀を飛び越えている。


「それより、彼女の容態は?」


朔夜(さくや)】はすぐに真剣な顔になり、話し始めた。


「特に怪我はなく、毒なども無かったので、怪我を治療して寝かせております。周防様は、簡易的な報告をした後、身体を洗い自室で待機しております。今夜は泊まっていくそうでございます」

「わかった。僕も身体を洗って報告に行く。服を・・・」

「もう準備しております」

「ありがとう。朔夜は彼女の看病をお願い。目が覚めたら彼女に状況説明と、俺たちに報告をしてくれ」

「御意」

「よろしく」


朔夜と別れ、家の中に入る。すぐに風呂に行き、砂や泥を洗い落とす。すぐに着替え、周防の部屋に行く。

トントントン


『はーい』

「報告に行く」

『了解。ちょっと待ってね』


1〜2分程して、周防は部屋から慌てて出てきた。


「なにかしてたのか?」

「うんうん!なにも!気にしないで!身体をほぐしてただけ!」


明らかに慌ててる周防。


(まあ、女子は秘密にしたいことはあるよな)


周防がストレッチしてたといたというのは嘘と知っている。だが、出水はあえてそれを口にしない。面倒なことになりそうだからだ。


「じゃあ、行くよ」

「はい」


少し歩いたところで、出水が口を開く。


「俺に隠しても、分かるんだから。ダラけてたくらい、怒りはしないよ」


そう言うと、隣を歩いていた周防が顔を赤くして喋る。


「分かってるよ!でも!!!人には秘密の1つや2つあるんだよ!」


そして、目的の部屋に着いた。

襖を開けて中に入ると和服を着たお爺さんが座っていた。この人は俺の爺さんにあたる【出水(いずみ) 宗一(そういち)】見た目は髭が長く伸びており、頭の方が寂しい。


「やっと来たか。龍馬、梨紗」

「遅くなってすみません」

「まあよい。それより、話しを聞こう。座りなさい」


じいちゃんの前にある座布団に座る。


「いつも通り確認して・・・」


そして、龍馬は宗一に最終確認場所からあった出来事と少女を保護したこと、敵には逃げられたことをすべて話していく。

梨紗も、最終確認場所に向かってる途中からの話しをする。

顎ヒゲを擦りながら話しを聞いていた宗一が口を開く。


「なるほどのう、その術者は結構な実力じゃな。梨紗が捕えられなかったのも仕方ない」

「はい」


梨紗が返事をする。


「それより龍馬。保護した少女はどうするつもりじゃ?」

「とりあえず、事情を聞いて彼女を家に送り返す予定です」

「その間の管理はどうするつもりじゃ?」

「月夜家に協力をお願いして、こちらに来てもらいます。僕と彼女だけであちらの世界に行きます。周防と月夜家でこちらの管理を任せます。ダメですか?」

「現当主は龍馬、お主じゃ。好きにするがよい」

「はい。それでは」


龍馬と梨紗は立ち上がり部屋を出る。梨紗は部屋を出て、襖を閉める時に口を開く。


「失礼します」


二人が出ていった後、宗一が口を開く。


「まさか、20年振りにこちらに来る者がおるとはな。懐かしいのう。健一」


宗一は壁に飾ってある写真を見ながら、龍馬の父【出水(いずみ) 健一(けんいち)】の名前を呟くのだった。




宗一の部屋をあとにした龍馬と梨紗。部屋を出たあと、梨紗はぐったりしていた。


「どうした?」

「疲れた。門が開いて敵が来るし、御館様は怖いし慣れないよ〜」

「とりあえず、今日はゆっくり休みな。今は彼女が起きない限り進展は無いからな。休める時にじっくり休め」

「わかってるよ」


何気ない話をして、梨紗を部屋に送ったあと龍馬は自室に戻り入ってすぐベッドに倒れ込んだ。


「まさか、門が開くなんてな」


龍馬は仰向けになり天井を見上げる。


「もしかしたら、イフスター家に迷惑をかけてしまうかもな」


色々な事を考えながら、眠りにつくのだった。



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