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九州仙戦  作者: 龍閣
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第十九話 キョンシーの大群

目の前にいる四十人あまりの者達は身動き一つしなかった、皆額に呪符が貼られていた。


「これは、キョンシー?!」


驚きを隠せない口ぶりで趙さんが呟く。


飛龍山の一人が趙さんのの下に駆け寄り、


「趙さん、このキョンシーの群れは此処にはございませんでした、何者かか彼らを此処に配置したに違いありません」


「ああ、太公望様が自分の墓地にキョンシーを置くとは思えないな、こりゃ妖族に先に越されたか」


「ですがこの数のキョンシーなら問題にはならないでしょう」


「確かに一体一体の戦闘力はないが、此処に普通のキョンシーを置くとは思えない、うかつに手を出すな、少し様子を見よう」


「はい、わかりました」


「江里、俺と一緒に『炎槍陣』(えんそうじん)を作るぞ」


「はい、趙さん」


江里は懐から筆と小さな小瓶を取り出した、そして小瓶をあけると中は橙色の墨汁だった、その墨汁を筆に浸して地面に何やら呪文を書き始めた。


晧さんは江里の書いた呪文の前に座り込み両手で印を結び合わせた。


するとみるみる何もなかったった宙から小さな火の粉がぽつりぽつりと現れた、瞬く間に火の粉の数はッ数百にも及び趙さんの前で炎の壁の様になった。


「江里、合図したら、お前が打て。他の者は戦闘用意、今から攻撃を仕掛ける、もしうちのがしたやつが反撃にきたら、迷わず額に貼ってある呪符を破壊しろ、とにかく捕まってかまれたりするなよ」


「はい!」一同は各々武器をだし、戦闘準備をした。


「江里、なるべく頭を狙え」


「はい、任せてください」


「やれ!」


この掛け声とともに江里は両腕を開き、キョンシーども目掛けて開いた両腕を振り下ろす。


と趙さんの前でできた火の粉の壁がものすごい勢いでつぶてのごとくキョンシーに襲い掛かった。

ずどどどどどどどどどどっと音ととも火の粉の槍はキョンシーたちの頭部に貼られてある呪符を貫いた。


四十体ほどのキョンシーの半数がこの一撃によって地面に倒れたと同時に攻撃が及ばなかったキョンシーたちが動きだした。


「来るぞ!」と声をかけた趙さんと同時に飛龍山の三人が戦場に飛び出していた、三人の手には長い棍棒の様な武器を持っており、両端に金属の丸い球がついていた。三人は可憐な動きで次々と襲い掛かってくるキョンシーたちの眉間を勝ち割って行った、瞬く間に数体のキョンシーが倒れた。


彼らたちに続いて戦場に加わったのは労水の術師たちで彼らは前の三人と違い手に持った武器を飛ばしてキョンシーたちの呪符を破壊していった。


晧たちが反応できた時にはもう戦闘は終わっていた、四十体のキョンシーは呪符が焼かれ、もしくは呪符ごと顔をつぶされ、ただの死体に戻っていた。


「す、すげー」


飛龍山の者達と労水の術師達の実力を目のあたりにして呟く聖。


「やはり普通のキョンシーでしたね」と余裕な口調で趙さんの下に歩み戻ったのは先ほどの飛龍山の一人だった。


「ああ、そうだな」


趙さんも先ほどの口調と打って変わって、いつもの様な少しだらけた感じに戻っていた。


「趙さん、先に進みましょう」と江里。


「ああ」


一同は死体が転がっている広場を通り、奥の層までやってきた。この曹では飛び出してくる槍の罠を飛龍山の術師が楽々解除して先に進めた。


道中聖が晧たちに、


「なあ、さっきのキョンシーってのは死体なのか」


「ああ、キョンシーはもともと異国で死んだ死体を故郷に返そうと思った道士が発明した術で、死体を自ら歩かせるために呪符を額に貼って少し行動力を戻すだけの者だったはず」と晧。


「その通り、もともとの術には悪意も何もなかったが、それをこのように攻撃手段として使う物が出てきたんだ、さらに、強いキョンシーを作るために生きた者を殺してその死体を使い、生きた時と同じ実力を出させることに成功した者もいる。だけど、この方法は修仙界の間ででは使われることが少なく、主に妖族が使う術になっているんだ」と江里はさらに説明を加えた。


「まじか、じゃあこの術って強い奴の死体を見つければ最強の仲間が出来るってわけだな」と聖。


「いや、それがそうでもない、死んだ人間は時間がたつにつれ魂が抜けていくから、もし死体を見つけても、魂が完全に肉体から離れた状態だとそれほど強いキョンシーにはなれないんだ。あとしたいの状態も重要だね、強者の死体を見つけても、白骨だったり、腐ってたりしてても余り使い物にならないだろ」


「なるほど、じゃあ、さっきのあのキョンシー達は...」と聖。


「ああ、死んで間もない者達をあやっつたんだろうね、動きが単調だったし、一般人の様な恰好をした者が大多数だったしね」


「許せねーな、死人を弄びやがって」と聖。


「聖君、君の気持はわかるよ、でもねキョンシーは意識のない殺戮の化け物で、同情したり、手を抜いてはいけないよ。彼らにかまれたものはキョンシー化することもあるし、血を飲まれてこそされたなら毎違いなくキョンシーになってしまう、しかも呪符もない野良のキョンシーは生きるものに襲い、被害を拡大していく。それとキョンシーの中には飛殭フェイキョンと言う上位な者がいてね、もし飛殭と出会ったら、今の君たちじゃあ確実に殺される、とにかく息をひそめてその場をやり過ごすんだ、わかったね」


飛殭フェイキョンって何ですか」と晧。


飛殭フェイキョンとはまあ、簡単に言えば空を飛べるキョンシーだよ」


「空を飛べる?!」と驚いた声を上げる聖。


「ああ、お前たちも知っているように、自力で空を飛ぶと言う事は修仙の者達にっと手は仙人に成ったあかしともいえるほどの今度なことだ、だから空を飛べる飛殭フェイキョンはそれほど脅威な物なんだよ」


江里がそこまで説明したところで一同は突き当りに出た。その突き当りは三つの道に分かれていた。


「ここは何処に行けばいい」と趙さんは飛龍山の術師達に尋ねた。


「申し訳ございません、我々も此処までしか中に入ったことがなく、この先はどのみちを進めばいいのか検討がございません」


「そうか、じゃあ三つに分かれるしかないな、江里、お前が新人達連れていけ、飛龍山の術師は一人ずつ分かれて動いてくれ、労水の者達も三手に分かれるからそれぞれに分かれてくれ」


こうして一同は三つの小隊に分かれた、大体十人に一つの割合で。


「もし罠が有ったり、突破できないと思った場合は自己防衛を最優先にすぐ引き上げろ、危険ががり、此処まで戻ってこれなかった場合は外の今朝の集合場所で待ち合わせるように」


「は、わかりました」と三小隊はそれぞれの道に入っていた。


晧たちは江里と飛龍山の一人、名前を玄京げんきょうと言う少し無言な術師を先頭に先に進んでいた。かれらを待ち構えていたのは二本脚でたつトカゲの化け物だった、その化け物は人間の大きさ程あり、全身を鎧で覆い隠しているが手には槍を武器として持っていた。


一同が来たのを見にして笑みを浮かばせ、


「きゃひひひひ、此処にたどりつくものは主様の命により皆殺しにいたす」と手中の槍を構えて攻撃してきた。


玄京がすかさず応戦する、互角の打ち合いが始まった。聖や労水の者達も加勢しようとしたが江里に止められた。


「まて、様子がおかしい」


江里がそう言った後、玄京と打ち合っていたトカゲの化け物は一旦距離を置いて、


「きゃひひひ、罠にかからなかったか、ならいい、直接彼らの餌食にしてやる、と言い出して懐から一枚の呪符を取り出した、彼はその呪符を天井に投げつけた、天井にはすでに術式が書かれており、呪符がその術式に触れた瞬間術式は光だし、キョンシーが次から次へと天井から現れた。


「な?!召喚術?!」と驚きの声を漏らす江里。


みるみる内に室内は召喚されたキョンシーに埋め尽くされた、その数、百は超えていた。


「きゃひひひひ、お前らの相手はこいつたちだ、あばよ」


そう言って、トカゲ男は奥の門へ消えて行った。













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