第9話 戦乱の炎
・前回までのあらすじ
ジェイクが食事を与えたにも関わらず、突如殴りかかるハーガン。
そして、マークはそれを見て彼を別の牢獄に入れさせた。
一方でジンはようやく作戦会議にこぎつけて、遂に地球圏への突入に成功。
だが、それを地球政府軍が黙って見ている訳もなく、遂に戦いの火蓋は切られたが、果たして運命や如何に。
亮たちは、ミーティングルームの画面越しに江川長官と作戦会議を行っていた。
しかし、今回それをしていたのは輸送爆撃機の中であった。
日本で作戦会議をする暇が無いほど切羽詰まっていたのだ。
“今回の作戦では、私とイギリス軍特殊部隊の隊長、マーク・ランディー大佐が指示を行う。彼は、特殊部隊WOLFの隊長で、MUの操縦技量は世界一といっても過言ではない。きっと彼なら、火星軍の機動部隊を殲滅できるだろう”
江川長官はマーク大佐に信頼を寄せているのか、 とても誇らしげに語った。
「そうですか……、なら、俺達は行く必要が……」
ジェフは江川長官に対してそう返答する。
“そんなことは無い……。彼だけではどうにもならない事があるかもしれない。彼の手助けをして貰いたい。私は、君たちに生きて帰って欲しいんだ。健闘を祈る! では、マークに代わるぞ……”
すると、画面は切り替わり、画面にはマーク大佐が映し出された。
“はじめまして……。俺は特殊部隊WOLF隊長のマーク・ランディー……。階級は大佐だ。今回の作戦は俺が指揮を執る!”
マークは、逞しい肉体と精神の持ち主であり、今まであらゆる状況下の中でも戦い抜いてみせた勇敢な兵士である。
「了解!」
5人は、緊迫しつつ初対面のマークに向けて敬礼をした。
“今回のロンドン防衛作戦では、イギリス政府軍が協力することになっている……。リック・フォーディーと上城鎧は、陸上機動部隊と行動を共にする。次に竜崎亮と、竜崎玲、ジェフ・ディアロ・マイソンは我々の作戦に協力してくれ……。頼んだぞ”
マークは、初めて共闘するブレイダー隊の5人を信頼していた。
それもそのはず、彼は既にブレイダー隊の功績を知っていたのだ。
「了解です……、マーク大佐!」
亮は、己の精神を引き締めた上でそう返す。
彼は既に戦う決心ができていた。
「亮、玲……、万が一何かあったら俺に任せろ!」
「わかったぜ、ジェフ!」
「その約束、ちゃんと守ってよね!」
二人はジェフに対し返答する。
「リック……、必ず生きて帰るぞ……!」
「もちろん! 絶対生きて帰って来ような!」
リックと鎧はそう決意した。
果たして、ブレイダー隊は無事全員生きて帰ることが出来るのだろうか。
そして、それから十数時間後にブレイダー隊が到着した。
五人の機体はイギリス政府軍の基地の広い滑走路にそびえ立つ。
「マーク大佐、今回はどのように動けばいいでしょうか?」
亮は機体のコックピット内で、作戦の司令塔であるマークにそう尋ねた。
“そうだな……。俺なら、挟み撃ちができるようにY字フォーメーションので戦うだろう……”
彼はそう返答するが、亮はより良い案が思いついた。
「なるほど……、でも、俺だったら、空中と陸上の二段構えで、なお且つX字フォーメーションにしますね……」
“そうか! その手があったか!”
マークは、亮の攻略法に度肝を抜かれた。
“なぁ、亮! 今言ったことは君の仲間にも伝えておけ”
「は……、はい!」
亮とマークは、即座に仲間にも作戦の攻略法を伝えた。
しかし、その時であった。真紅の悪魔達が来たのは。
「ロードブレイダーを発見したッ!! アルカディー、ラルフ! 試作型メガキャノンを使うぞッ!!」
ジンは、亮の機体を即座にレーダーで発見し、2人に作戦開始の合図をする。
ついに戦いは幕を開けた。
“了解! ラルフ、出番だ!”
“はい……”
そして、ジン達は輸送艦のカタパルトから出てメガキャノンを使い、真紅の烈火の如く光弾を放った。
“マーク大佐! 上空から火星軍が……、グアァァッ!!”
マークの部下は攻撃を浴び、機体もろとも灰と化す。
「おい、どうしたんだッ!」
何と、巨大な光弾が地上に直撃したのだ。
瞬く間に電気を生成するエネルギータンクなどが設置された補給基地は爆発し、そこに居た兵士や建造物は消失したのだ。
「な……、何だと。こうも簡単に人の命が……、失われるなんて……、くっ……!!」
亮は驚愕した。尊い命を容易く奪う火星軍の恐ろしさに。
それ故に命を散らしていった兵士達に対し、彼は悲しむが、それを闘志という名のエネルギーに変え、自らを鼓舞した。そして亮は、何としても負けてはならないと心の中で誓う。
“亮!! どうしたの!?”
“おい、亮ッ! どうしたんだ!!”
「玲……、ジェフ……!! あの機動部隊を何としても倒すぞ! マーク大佐ッ! 戦闘を開始して下さい!」
亮は、意気揚々と仲間や上司達に声をかけた。
“了解! よし……、全員ビームマシンガンを構えろッ!”
「了解ッ!」
遂にシャドー隊と対決することとなり、亮は冷静さを保ちながらも、心の奥底では半ば狼狽していた。
赤い炎が燃え盛る中で、死闘が繰り広げられていく。
“皆、一斉掃射開始だァァァッ!!”
マーク率いるWOLF、さらに亮たち3人は
自らの持つ武装を駆使して総攻撃を仕掛ける。
「ほう……。やるな、地球軍め……」
ジン達は、メガキャノンを輸送艦に戻した後にアスターグの標準装備である改良型ビームマシンガンを手に取り、戦闘を開始した。
ジン達の乗り込む3機のMUが艦から降下しながら赤い光弾を放つ。
それはまるで鮮血のような赤であった。
「マーク大佐ッ!! このままでは全滅は免れません!」
“何だとッ!? こうなったら空中と陸上の二手に分かれてX字のフォーメーションで挟み撃ちだッ!!”
「りょ、了解、大佐ァ!」
ジェイクは少し焦りながらも、何とか冷静に対処しようと留意して、部下や亮たち3人に指示を出した。
「亮と玲は、陸上班と行動を共にする!」
“了解!!”
「ジェフは空中班と共に後方に回れ!」
“任せて下さい!”
そして、シャドー隊に遅れを取りながらも、亮たちもフォーメーションXを実行することとなった。
「ここはビームマシンガン・チャージモードの出番だな!」
“私のビームガンもチャージモードはあるみたいだから、使ってみるわ!”
亮と玲は、自信に満ちた顔で攻撃を仕掛けた!
「よし、ターゲット確認! このまま……、発射!!」
“当たれぇぇぇッ!!”
2人の放った光線は地上に降り立ったダンの機体に直撃し、見事撃破することに成功した。
「しまったァ! 俺のゾギィがあぁァァッ!!」
断末魔を上げながら、ダンの機体は爆発四散した。
「何だとッ!? よくもダンをやってくれたな! 許さんッ!!」
“ダンの仇を討つぞ!”
ルードは、怒りに燃えながら機銃を駆使して乱れ撃った。
「マーク大佐ァ!」
運悪くマークの部下は被弾し、爆砕した。
「まずい……、このままでは負ける!」
“諦めないで下さいよ、マーク大佐! まだいくらでも挽回はできます”
その時、ジェフからの通信が入った。
「ジェフ、だが……!」
“諦めなければきっと勝てます!”
その時彼の熱い魂が、マークを奮い立たせた。
「わ、わかった……!」
マークは、再び自らの闘志を燃やして尽力を尽くす。
「ジェイク! お前のバズーカを貸してくれ!」
“はいッ! 大佐……”
ジェイクは即座にバズーカを隊長であるマークに渡した。
「やってやる! やってやるぞ!! 喰らえェッ!!」
マークはバズーカから光弾を放ち、ルードの機体に被弾させた。
「ヴゥゥッ! ジン大尉ッ、撤収します!」
“いいだろう……、後は俺一人でやる!!”
「すみません……!」
ルードは、悔し涙を流しながら艦へと戻った。
彼は自分が役に立てなかったことを後悔していた。
「例えこのジン一人でも、ロードブレイダーを何としても破壊するッ!」
ジンは、ロードブレイダーをすぐさま発見し、凄まじい攻撃を仕掛けた。
「喰らえッ! チャージショットだッ!」
砲口から、まるで凄まじい電撃のような光線が放たれ、亮の機体に目掛けて迫る。
「何だッ! あぁっ、シールドがッ!!」
シールドは使い物にならなくなり焦る亮だったが、後方からリックと鎧が駆けつけた。
“亮、今お前たちと合流した……。俺とリックが援護する! 任せてくれ!”
「鎧さん……、それにリック……! 来てくれたのか!」
亮は、嬉しさのあまり声を上げた。
“妹の私もお忘れなく!”
“この俺、ジェフも忘れるなよ!”
玲とジェフも、自信満々の表情で亮に対してそう言った。
こうして5人の快進撃が始まる。
「ホーミングミサイルを味わいな!」
ジェフは、軽やかな動きで敵の攻撃を回避しつつ、ミサイルランチャーを駆使して激しい攻撃を仕掛けた。
「ぐふぅっ!!」
さらに、ブレイダー隊の攻撃は続く。
「隙ありッ、てやあァァァッ!!」
鎧はクナイでジンの機体右腕部を切り裂いた!
「ううぅッ!! このままでは死ぬッ! 撤収だッ!!」
ジンは自らの命の危機を察して、ついに撤収した。
何とか今回の戦いは地球軍が勝利を収めたものの、補給基地は大半が破壊されてしまったのだ。
「くっ……、もっと早く攻撃してさえいれば……!」
マークは悔し涙を流しながらそう言った。
「マーク大佐……、貴方は悪くありません……」
亮は、マークを必死に慰める。
「悪いのは俺だッ!! 俺が即座に反応できていれば……」
「大佐、後悔しても何も始まりませんよ! 次の作戦を成功させればいいじゃないですか!」
ジェイクも彼に対し、そのように必死に励まそうとする。
「そうかもしれんな……。くよくよした所で何も無い……。次こそは成功させてみせよう! これは約束だッ!」
「はいッ!」
亮たち五人と、マーク達は次の戦いでの勝利を約束したのだった。
その一方で火星軍のジンは、火星本部にある基地の整備ドックで困りに困っていた。
それもそのはず、彼の機体であるアスターグは、酷い損傷を負っていた。
「おい……、俺のアスターグのコンディションはどうだ?」
ジンは、整備兵のデビッドに対し自分の機体についての話をした。
「コンディション? 最悪だよ……。もう直せないな……」
その整備兵はとても残念な表情を見せた。
「そうか……、だが、こんなこともあろうかと、2年程前に地球軍から奪取した“アレ”は用意してあるな」
「アレというと……。あぁ、アレね! 俺が完璧にしっかり改造しておいたぜ!」
「そうか、ありがとうデビッド……」
ジンは笑みを浮かべながら、整備兵のデビッドにそのように返した。
「いいってことよ! 次の戦闘では大事に使えよ!」
「了解だ。デビッド、いつも済まないな」
「気にすんなって!」
果たして、ジンとデビッドの言う“アレ”には、どのような秘密が隠されているのか。
その全貌が明らかになる時は来るのか。