最終話 変わりゆく世界
戦争終結から二年後、地球政府軍の英雄と呼ばれていた亮は、自らの志願で軍を退役しており、現在はメガテック社で技術者として活躍していた。
彼は、木星住居区のプロジェクトにも参加し、重力発生装置の開発に携わっている。
「おーい、竜崎君。ちょっとここの配線接続やってくれないかぁ?」
「分かりました。今行きます……」
亮は、すぐさま上司の村上の元へと向かった。
「村上部長、ここを繋げばいいんですね?」
「そうだ。早いとこやってくれ」
村上は少し待ちかねているように見えた。
「はい」
そして、亮は慣れた手つきでたった三分程度で十数本の配線を繋ぎ終えた。
「やっぱりお前凄いな……。助かったよ」
「いや、どういたしまして……」
亮はほのかに微笑んで見せた。
そして、亮が個室で休憩している最中のこと。
彼の携帯電話に一通のメッセージが届いた。
その送り主は、妹の玲である。
そこには、かつての仲間である上城鎧と結婚するという内容の文が書かれていた。
「玲、ついに鎧さんと結婚するのか……」
すると、彼の隣りに幼馴染の川崎直斗が座る。
「どうしたんだ、竜崎君?」
直斗は、亮をからかうように笑う。
「なぁ、その呼び方やめてくれないか?」
「だって一年遅れで入社したんだから、実質先輩みたいなもんだろ?」
「ハァ……、お前の態度にゃ呆れたよ……」
亮は軽く俯く。
「なぁ、直斗……。突然なんだけどよ……。今度俺の妹の玲が結婚するんだってよ」
「えっ、良かったじゃないか! 相手は?」
「俺の戦友の上城鎧さんって人でよ……。真面目なんだか、三枚目なんだかよくわかんなくてね」
「あぁ! 確か……、剣道の達人だっけ?」
「そうそう。鎧さんは昔から剣道を習ってたみたいでさ、なかなか優しくてイケメンなんだぜ。そりゃ玲も好きになるよな」
その後も、二人は休憩時間が終わりに差し掛かるまでの間は話を続けていた。
一方、玲と鎧が結婚した話はジェフやリック達にも知れ渡ったが、六人は亮と違い、現在も軍に所属しており、結婚式に参加できるか怪しいとのこと。
また、WOLFやバルチャー隊、ヤマト隊などのお世話になったかつての上司達にも結婚式について伝えたが、彼らは残念ながら来れないという。
それを聞き、亮と玲、鎧の三人はどこか寂しげであった。
しかし、いい知らせもあった。
それは式の一ヶ月前のこと。
“亮、俺たち六人は一応来れるぜ”
「本当か!?」
嬉しさのあまり思わず驚く亮。
「良かった……。ジェフ達も来れるんだね」
玲は安堵した。かつてのブレイダー隊の隊員の
他にも、親族や学生時代の友人や昔のバイト先の知り合い数十名が参加し、4月22日についに挙行された。
それはもう、この上なく幸せに満ち溢れた挙式であった。
そしてついにブーケトスの時となり、女性達は、ブーケが投げられるタイミングを待つ。
「次に結婚すんのは私よ!」
「いや、私だからね!」
周りでざわついているのは、玲の学生時代の友人である。
“では、新婦はブーケトスをお願いします”
「はい」
そしてブーケは投げられ、その中でキャッチしたのは美奈であった。
「おっ、美奈! 良かったじゃないか……」
省吾は彼女に微笑んで見せた。
「美奈、お幸せにね!」
アンナはニヤニヤしながら美奈を見つめる。
しかし、彼女はその相手が誰なのか気付いていなかった。
それは省吾も同様であった。
「えっ……、どういうこと?」
「いや、どういうことって、省吾とお幸せにって……。気が早すぎない?」
それを聞いた瞬間、二人は顔を真っ赤にして照れた。
「アハハハハ……。まだまだ二人もピュアだなぁ……。どうなるか楽しみにしてるぜ」
リーは優しく笑いつつ頷いた。
式が終わり、家路へと着いた亮。
彼は、玲と鎧が結ばれた事を誰よりも喜んでいた。
「もしもし、玲か?」
“うん、そうだけど”
「今度、俺が結婚祝いを二人の新居に贈っておくよ。このことは鎧さんにも伝えておいてくれ」
“分かったよ。しっかり伝えておくから。亮、ありがとう……。私、亮の妹で良かったよ……。鎧さんと巡り会えたのも亮のおかげだからさ。大好きだよ”
「玲…」
亮は思わず感極まった。
“また今度、私達の新居に来てよ。パーティーやるからさ。じゃあね”
「オーケー。じゃあな」
そして、亮は電話を切った。
その時の彼は、どこか誇らしげな表情をしていた。
平和な時代は戻り、誰もが笑顔になれる世界へと時代は流動していく。




