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特殊部隊BLADER-FORCE  作者: 藤沢マサト
それぞれの戦い
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第46話 束の間の静けさ

 12月1日、火星革命軍はついに秘密裏に開発していた巨大戦艦“ソリクト・アレス”を完成させ、いつ攻撃を仕掛けようか契機を窺っていた。

 そして彼らは、強化兵の養成により力を入れる事となる。

 さらに翌日、ゼルガはマルチガンナーシステムを導入した機体の開発にも力を入れる事を決断。

 これらの対策により、革命軍はより強靭的な戦力でより万全な状態となる。


「ランスよ。ついに我々革命軍は存亡の危機にある訳だが、これからの数々の対策のお陰で今までの分を挽回出来るかもしれん。今後は期待できるなァ……」


 ゼルガは思わず口が綻ぶ。


「ゼルガ長官、確かにこれだけの対策をすれば万全ではありますが、油断すれば……」

「分かっている。奴らの思う壺にならんようにしなくてはな」


 彼の脳内には、一抹の不安が浮かんでいる。

 それは、リントヴルム・ガルード連合艦隊のことである。この不安を完全に打ち消すためにも、

彼は自らの心をより戒めた。


 

 その一方で亮は、どういうわけか過去の自分の事を振り返っていた。

 子供時代から、ブレイダー隊に入るまでの間、何をして生きてきたのかをベッドで寝そべりながら考える。


「俺、そういや小さい頃しょっちゅう転んではよく泣いてたっけ。それで母さんに絆創膏貼って貰って泣き止んで……。玲って昔は今より内向的だったっていうか。あの頃は好きに遊んでいても悪い事さえしなきゃ良かったけど……。今は昔と比べて自由の幅が狭くなったような気がするな。」


 亮がブツブツと呟いていると、玲が彼の部屋の中に入って来た。


「亮、大丈夫……?」

「えっ、どうした……、玲?」

「質問したいのはこっちの方だよ。最近寝てないみたいね」


 玲は僅かながらに顔をしかめる。


「いや……、何ていうか……。ちょっと鬱になり始めたっていうか。よく分からないけどよ」

「まぁ、戦争が一年近く長引けば誰だってそうはなるよね」

「玲もそう思うか。それでなぁ、俺は今までの自分を振り返ってよ」


 亮はどこか気怠けな表情になる。


「えっ、今までの自分を振り返った……? フフッ、真面目な亮らしいね……」


 玲は、思わず笑みを浮かべる。


「なんだよ、笑うことないじゃないか。俺は真剣にやってんだよ。子供の頃から今に至るまで……。何がいけなかったのか総合的にまとめようとしてたんだ」

「子供の頃から!? アハハハハ……。てっきり軍に入ってからだと思ってた……」

「まーた笑う……。何でだよ……」


 亮はすっかり呆れた表情をしていた。


「だって子供の頃やった間違いを今更振り返るなんて、亮ぐらいだよ。そんな昔の事を振り返って何になるの?」

「そりゃあ、昔から今に至るまで直ってない事とか……、色々だよ……」

「最後の方なんかおざなりになってない?」


 玲はじっくりと亮の事を見つめる。


「別にいいだろ……。玲こそ昔の事の振り返りを

したらどうだ?」


 眉をひそめて玲を睨む亮。


「えーっ? そんなことするの面倒だよ。私はそもそも、亮が大丈夫か確認しに来ただけなのに。過度に干渉しないでよね」


 そして、そのまま亮の部屋を後にした玲。

 それから亮は、自分の反省点をパソコンのメモ帳にまとめて書き出し、何がいけなかったのか自分なりに考え直したのだった。

   ︙

 一方、玲は談話室で地球にいる仲間の事を思いつつ、彼女もまた、鬱気味になる。


「みんな、元気にしてるかな……。鎧さんは地上で亮の代わりにリーダーやってるって聞いたけど……。あんなに好きだったのになぁ……。まぁ、戦争が終われば会えるかな」


 するとそこに、ジェフとジェイクが現れる。


「それでですね……、あっ、玲。顔色が悪いぞ? どうしたんだよ?」


 ジェフはすぐに玲の表情を覗った。


「いや、なんか鎧さん達のこと考えてたら心配になって来ちゃって」

「そうか。玲は鎧さんと付き合ってるんだもんな。

でも、付き合い始めた矢先に呼び出されたんじゃあなぁ」


 それを聞いた玲は、思わず顔を赤く染めて恥ずかしそうな顔つきになる。


「ちょっと、ジェフ……」

「なるほど。玲はアイツと付き合っているのか……。早く戦争が終わるといいな」


 ジェイクはその事を初めて知り、驚いていた。


「そうですね……。私、鎧さんの優しい所が好きで。いつかまた再会したいです」


 玲はかすかに微笑む。

 その微笑みには、また会えるかどうかの不安さや、きっと会えるという期待の気持ちが混じりあっていた。

 そして、ジェイクとジェフはその場から去り、再び一人になる。


「鎧さん…、私、信じてるからね」


 玲は両手を合わせて握り、祈った。


 

 それから二時間後、ジン達は連合艦隊のクルー達と作戦会議を行うことになり、会議室へと集まる。

 本作戦では、革命軍がオリンピウス住居区より遥か遠くに設置されている大型ICBM発射基地を破壊するのが主な目的となっていた。


「ジン少佐、こんにちは」

「おお、亮じゃないか。少し遅れて来たみたいだが、何があった?」

「いや、色々ありまして……」


 亮は申し訳無さそうな表情を見せた。


「まぁいい。そこに座れ」

「はい」


 そして、亮はジェフの隣にある椅子に座った。


「今回の作戦では、我々が主導で革命軍の大型ICBM

発射基地を破壊することになっている」

「あの、その肝心のICBMのターゲットはどこですか?」


 リーは、どこか気がかりな顔つきであった。


「それについては、火星政府軍のスパイ部隊の手によって判明している。ターゲットは火星第一住居区の

マルセニアだ」

「そうですか……。でも、彼らは何故マルセニアを……」

「これは俺の考察だが、少なくとも首都を陥落させてアルガスとロンバルダを再び強奪するためだろう」

「でも、そのためだけに罪の無い民間人の命を奪うなんて……、許せませんよ……」


 革命軍に対しての怒りに満ちたリー。

 彼は何としても人々を守ろうと決意した。


「うむ、リーの言う通りだな。俺の母は第三次世界大戦が始まった当初、市街地での戦闘に巻き込まれて亡くなった……。あの時のことは一日たりとも忘れたことはない。戦争がどれだけ恐ろしいものか味わった瞬間でもあった。おっと、話が脱線してしまったな……」


 ジンは悲しげな顔から、普段の勇ましさが感じられる顔つきに戻った。


「今回の作戦では、ICBM発射基地を挟撃して行こうと考えているが、変えた方がいいと思う者はいるか?」


 すると、その質問に対し亮が答えようとする。


「ジン少佐、本作戦では挟撃すると仰っていましたね」


 亮は真剣な眼差しでジンを見つめる。


「それのどこが気がかりなんだ?」

「いや、挟撃するとなると、戦力が分散してしまうので……。僕も今まで挟撃は使い勝手の良い戦法だと思っていたのですが、以前戦術書を読んでいたら、挟撃に依存し過ぎていれば、いずれは敵もそれに対応して自らの陣営を上回る戦法で返り討ちにして来るだろうという記述があったんです」

「そうか……。確かに、一つの戦法に固執していては

良からぬことは当然起こるだろうな。

なら、亮はどうしたいんだ?」


 ジンは胸の前で腕を組みつつ、訝し気な表情で亮を見る。


「ダミーバルーンや煙幕弾を使って攪乱するんですよ。その間に一斉掃射する……、といっても、一組のグループで掃射を行うのではなく、四組のグループに別れた上で攻撃するつもりなんですが。二組のグループが空中、陸上から掃射をしている間に、残りの二組のグループは弾薬等の補給を即座に艦内で行い、交代しながら戦闘を行うんです。どうでしょうか」


 亮はかなり自信に満ちた面貌であった。


「なるほど。なかなか悪くはないな。だが、交代時の隙を狙われたらどうする?」

「その際は艦隊による攻撃でフォローします」

「そうか。後方にいる艦隊を利用すれば概ね隙が無くなるな。よし、亮の案を採用しよう」


 ゆっくりと頷くジン。彼は亮の戦法に思わず感心していた。


「あの、私からも一つよろしいですか?」


 次に手を挙げたのは玲であった。


「玲はどうするつもりだ?」

「私は、上空から爆撃を行うべきだと思うのですが……。そうすればより効率良く基地を破壊出来るはずです。いかがでしょうか……」


 玲は案を出したものの、少し自信は無さそうに見える。


「分かった。爆撃機の用意もしておこう」

「はい」


 自分の出した案を受け入れてくれたことに、少し自信がついた玲。

 横にいるジェフは、ひっそりと「良かったな」と小声で言った。


「ジン少佐や竜崎兄妹の意見をまとめました。まず、上空から爆撃を行って地上の戦力をある程度殲滅し、次に我々機動部隊が地上から降下しつつ煙幕弾やダミーバルーンを打ち出し、そして四組のグループに分かれて掃射を行う……、ということですね」


 アルカディーは、タブレット端末に今回の作戦内容をまとめた。


「アルカディー、他に意見は無いか?」

「そうですね……、特に無いですね」


 良く出来た案だと認めていた故に、アルカディーは軽く頷いた。


「ラルフはどうだ……?」

「私は、まだ今回の案を改良出来ると思います」


 ラルフは自信のあまり、僅かに口が綻んでいた。


「では、お前の案を聞かせて貰おうか」

「先程、四組のグループに分かれて掃射を行うという

案が出ていましたが、私は四組ではなく、より細分化して六組のグループになって戦闘を行うべきだと思うのです。一方の二組は掃射、もう一方の二組は接近戦を行い、さらにもう一方の二組は補給を行うという戦法です。結局挟撃しているようなものですが、このように細分化すればさらに勝利への道は確固たるものとなるでしょう」

「確かに、ラルフの言う通りだ。このようにすればより効率良く戦闘を進められる……」


 アルカディーは首肯する。


「ラルフの考えも採用しよう。では、他に考えが

ある者はいないようだな?」


 ジンは周りを見渡すが、他に意見のある者はいないようであった。

 そして、作戦会議は終了し、この作戦内容は上層部にも伝えられた。

 作戦実行日は一週間後の12月9日に決定。

 それまでの間は、作戦の準備を整える事となる。


 

 翌日、亮は今までの自分についてまとめたメモを見て、出しゃばり過ぎていると自覚した。

 そんな事を廊下で思いつつ、玲が彼の元に来る。


「亮、どうしたの? もしかして……」

「お察しの通りだよ。俺は今まで出しゃばってばっかだった事に気づいたんだ」


 亮は、僅かながら後悔しているかのような顔つきをしていた。


「確かにそうかもしれないけど……。私、それを前向きに捉えて見た方がいいと思うんだ」

「え?」

「小学校5年生位の時さぁ、何もやってないのに私が

友達の上履き盗んだとか言われて泣きそうになった時、最初に違うって言ってくれたの亮だったじゃん」


 玲はかすかに微笑む。


「あぁ、あの話か。確か同じクラスの綾川が上履きが無いって泣いてて、最初に玲がなぜか疑われたけど、結局犯人は隣のクラスの山口だったって話だよな」

「そうそう! 覚えてたんだね!」


 玲は嬉しそうに頷く。


「俺たちは兄妹だからな。覚えてることぐらい

当たり前だろ」


 二人は談笑するが、ジェイクが居心地悪そうに眉をひそめる。


「あっ、ジェイク中佐!」

「悪いな……。但し、世間話は違う所でやってくれないか」


 ジェイクは僅かに不機嫌な表情を見せた。


「すみません。今度は気をつけます!」


 そして二人は、気まずそうに身を退ける。


 

 亮と玲は、機体のメンテナンスを行う事にした。

 そこでは部品の取り換え作業を行い、より本来の力を出せるようにする。


「右腕部の回路を取り換えるか……」

「亮、気をつけろよ」


 スコットは、亮のことを心配そうに見つめる。


「これで良しとしよう」


 亮は満足げな表情をしていた。


「出来たか。玲の方はどうだ?」

「はい、私も終わりました」


 嬉しそうな顔つきをする玲。

 だが、彼女は少し何か気になっているようにも見えた。


「そういえば、ジェフとリーはもう取り換え作業をやり終えてるんですか?」

「あぁ、あの二人ならさっきまでここで作業をやってたけど、君たちが来る前に戻ったよ。あの二人は熱心に作業に取り組んでたね」

「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます」

「二人とも、終わったなら帰っていいよ」

「はい」


 そして二人は、個室へと戻っていった。



 その一方で、ジェフとリーはメンテナンスを終えて、心に余裕が出来たのか気ままに休憩時間を楽しんでいる中で、リーはジェフに対しちょっとした質問をした。


「ジェフさんって、恋人とかいるんですか?」

「えっ……? 恋人っていうかむしろ幼馴染なんだけど、レミーっていうのがニューヨークに住んでてさ。アイツ顔は可愛いんだけど、昔からしょっちゅう俺をからかってるんだよ」

「例えば、どんな風にからかうんです? 気になるんですけど…」


 リーはニヤニヤと妙な笑顔でジェフの顔を覗った。


「そうだな……、例えば、レミーが一口飲んだ缶コーヒーを俺に飲ませようとしてきたり、わざとめちゃくちゃ近づいて来たりしてよ……。本当に何考えてんだろうな」


 ジェフは、故郷にいた頃の事を思い出しつつ馬鹿げた思い出を回顧し、薄っすらと笑う。


「なるほどォ……。やっぱりレミーさんは貴方のことが

好きなんでしょう。だからそういう事をするんですよ」

「本当かぁ? でも、それはそれで悪くは無いかもな」


 ジェフは、漆黒の宇宙を窓越しに眺めつつかすかに笑みを浮かべる。


「ジェフさん、照れてますね? やっぱり二人は両想い……」

「おいおい、それは誇張しすぎだよ」

「フフフッ……、やっぱり好きなんじゃないですか」


 二人は、その後も話に花を咲かせるのだった。

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