第5話 ハーガン襲来!!(後編)
ついにロンドンに到着したブレイダー隊の5人は攻撃を開始したものの、早くも亮たちに戦場の鬼という仇名で知られるハーガンが迫ろうとしていた。
「さて、敵はどこにいるんだ……?」
亮は格納庫の上空にて、かなり焦った表情で辺りを見渡す。
“亮、ちょっと落ち着いた方がいいんじゃない?”
玲は焦燥に駆られる兄をなだめる。
「そうかもな。でも、ここは戦場だ。多少の焦りは必要だと思うんだよな……」
そう言いつつも、冷静さをどうにかして保とうとする亮だが、その意見に玲は懐疑的である。
しかし、その時であった────────
ハーガン達が迫って来たのは。
「玲! とうとう来たみたいだぜッ!」
亮は、いつになく鋭い目つきになった。
“やるしかないね! 行こう!”
“おいおい、俺も忘れるなよ?”
ジェフは一応俺もいるぜというアピールのような事をしつつ、ハーガンに挑むこととなったが、彼の乗る専用機ゲルードは、メタルユニットの中でも随一の出力を誇っているのだ。
果たして、彼らに打ち勝つことが出来るのだろうか。
「やってやる、地球軍のロードブレイダーとやらを!」
“隊長、油断は禁物ですよ……”
ソルドは上司であるハーガンに注意喚起をする。
「何を言っている! それぐらいの事は当然わかっている」
“はい、隊長……”
彼は、ハーガンが強い自信を持っていると知り少し安心しつつ言葉を返した後、戦闘を開始。
先陣を切ったのは、亮であった。
「よし、まずはビームブレードで……、斬る!」
亮は光の剣を構え、攻撃しようとするがハーガンに距離を取られてしまい、チャンスを逃す。
「コイツの弾を喰らわせてやるッ!!」
ハーガンはビームバズーカから流星のような巨大な光線を撃ち放った。
「何ッ!? うぅぅっ!!」
何とか盾で防いだものの、光線の威力があまりにも高いせいか、機体は大きく弾き飛ばされてしまった。
幸い機体そのものに傷は無いものの、亮はこの敵機が一筋縄で倒せるような敵ではないと察する。
「よし、こうなったら……、ジェフ、玲ッ!」
“亮……、どうするつもりなの?”
玲は少し慌て気味な表情を見せる。
「確か、玲のソニックブレイダーは機動性が高いって言うよな…。あと、ジェフのエアブレイダーは火力が高いようだな……」
“まぁ、そうだな……”
ジェフは軽く頷く。
“でも、それをどう活かすの?”
玲は兄の言っていることに対し疑問に思った。
当然といえば当然だが、彼女はつい最近までは戦争とは全く無縁の人物であったからである。
それでも彼女は兄の話を理解しようとするが、後方からベルツが素早く攻撃を仕掛ける。
「隙ありィィッ!!」
“キャアアッ! 後ろをやられた?”
玲は背面にベルツの放った光弾が直撃し、機体のコンディションが急激に悪化。
これにより、彼女は気を引き締める。
「玲ッ! 大丈夫か!? 何て卑怯な奴なんだ……。俺の妹を傷つけるなんて……。絶対に許さない! ジェフ、ミサイルランチャーを構えるんだ!!」
“おう……、任せろ……”
ジェフはこの時、何故亮が怒っていたのか一瞬戸惑うが、すぐにレーダービジョンを確認して、その理由を察しながらもランチャーを構えた。
亮の怒りは炎の如く燃え上がり、彼の剣の刃は今まで以上に蒼白く光り輝く。
「何としても斬り裂いてやるッ!」
“こっちも援護するぞ!”
「何ッ!? 二機も来るとは…」
ベルツは即座にビームライフルを構える。
「落ちろォッ!」
しかし、二人はベルツの攻撃をひらりと避けていく。
「一気に…、斬り裂く!!」
“ミサイル発射ッ!”
二人の凄まじい集中攻撃により、ベルツの機体は爆散し、一瞬で機体は灰と化した…。
「ん!? ベルツッ! どうしたんだ!? ベルツゥッ!」
“どうしました! 隊長…”
ソルドは、突然ハーガンが叫んだことを疑問に思った。
「ベルツが撃墜された……。信じがたいが……」
ハーガンの顔は、少し青ざめていた。
彼は目の前にいたロードブレイダーとエアブレイダーに思わず怒りを覚えた。
“えっ!? ベルツが…!?”
「やってやれ……、あいつらをッ!!」
ハーガンはその時、怒りに震え上がっていた。
“はい……!”
ついに2人は残弾の無くなったバズーカを捨て、ブレードを構えて接近戦に挑んだ。
「てやあァァァッ!!」
“真っ二つにしてやる……”
その時、亮とジェフ、玲は早く逃げないとまずいと察したのか、3方向に分散し攻撃を始めた。
「ふぅ……、上手く回避できたな…」
“亮、ここは私に任せて!”
「わかった……。でも無茶だけは絶対にするなよ…」
“うん!”
玲は、機体のスラスターを全開にした。
彼女は凄まじいスピードで敵を翻弄しようと試みる。
「ジェフ! 背面のビームガンを使って地上の敵を駆逐してやれ!」
“了解! 任せとけよ!”
「俺も掃射を行う!」
“わかったぜ…、気をつけろよ…”
こうして、彼らは遠距離からの一斉掃射を行うこととなった。果たして上手くいくのだろうか。
「ビームの乱れ打ちだァッ!!」
ジェフはそう叫びながら銃から光弾を必死に撃ち放った。
「私も負けない! 高速連射モードに切り替えて……、これでオーケー!」
玲もジェフと協力しハーガンやソルドの機体を包囲して、無数の光弾を次々に撃ち放っていった。
そして亮は、突然あることに気付いた。
「ん? このマシンガン…、溜め撃ちができるのか? ちょっと試しに使ってみるか…」
ロードブレイダーは僅かな間静止した。
それは、光の粒子を限界まで溜めてチャージショットをするためである。
「喰らえェェッ!!」
亮は、蒼い彗星のような光線をソルドの機体に狙いを定めて、素早く撃ち放った。
「何ッ!? うああぁぁあッ!」
ソルドの機体は、一瞬にして破壊された。
「ソルドォォォッ! あの青い新型機め、許さん! 殺してやるッ!!」
ハーガンは我を忘れてビームソードを振り回し、亮たち3人に攻撃を仕掛けようとするが、理性を失いかけていたこともあり、上手く当たらなかった。
「ん!?」
「ここよッ! これで…、斬るッ!!」
その時、玲の光剣がハーガンの機体腕部を斬り裂いた。
「ギャアアアッ!! このままでは機体が持たないぞ!! でも、何としても機体を奪還しなくては……!」
だが、それを黙って見ていなかったのは特殊部隊WOLFであった。
“我々はイギリス軍特殊部隊WOLFだッ! 早く降参しろッ!”
「何ッ!? くっ……! 仕方ない、降参しよう……」
“戦場の鬼もとうとう降参したか……。これで少しは枕を高くして寝ることができそうだな……”
“はい!”
マークの部下であるジェイク、アレックス達は思わず誇らしげな表情を見せる。
「クソォォォッ!! マーク・ランディーめェッ!」
ハーガンは怒りの涙を流しながら降参した。
それから数時間後、ガーディアン隊以外の火星政府軍機動部隊も敗北を認めて降参し、戦いは完全に幕を閉じたのだった。
亮たち5人は、輸送機に乗って疲れた体を癒やした。
中にはアイマスクを付けて眠る者もいた。
「あぁ…、疲れたなぁ…」
玲は亮の元に倒れ込んだ。
「玲! おい…、ん? 寝てるだけか…」
兄である亮は思わず先程の戦闘が一瞬だけフラッシュバックしてしまうが、即座に冷静さを取り戻した。
「なぁに心配してるんだシスコンの大将!」
「誰がシスコンの大将だよ……! やめろよな」
亮はジェフのからかいに、つい怒ってしまった。
「まぁまぁ、二人共喧嘩しないで……」
リックは二人をなだめた。
「全く……、人が気持ち良く寝ていたというのに…」
鎧は苛立ちを隠せていなかったのか、あるいは寝起きだったのか、いつも以上に目つきが悪くなっていた。
「あぁ! すみませんでした鎧さん!!」
「悪かったよ、鎧さん……」
二人は鎧の気持ちを察したのか焦りつつ即座に謝った。
「ハァ…」
鎧は溜め息をついた。
亮とジェフに呆れたのだろうか。ともかく、まだ戦いは始まったばかりである。
果たして、この先どうなるのだろうか。