第37話 突然の救難信号
10月17日、火星政府の管轄下にあった第三住居区ロンバルダが、革命軍の手により不法占拠される。これを受け、ロンバルダの一部の住民は反対デモを行うも革命軍の治安維持部隊により鎮圧された。
もはや革命軍の勢いは誰も止める事が出来なかった。
「ゼルガ長官、我々も少しずつ火星政府の連中を蹂躙していっている訳ですが、第二住居区も近いうちに狙いますか? どうします?」
ランケルは上司の表情を窺う。
「うむ。第二住居区は、前線基地を確実に殲滅してから占拠するとしようじゃないか。まだ行動に出るのは早いぞ」
「そうですか。了解です……」
一方、リントヴルム艦隊は順調に火星へと向かっていっていた。
しかし、突如としてどこからともなく救難信号がこちらに発信された。
「ウィリアム艦長! 付近の大型宇宙ステーションから救難信号が発信されています!」
ウィリアムの部下・バリウスは突然の出来事に驚嘆した。
「なんだと!? 早くそちらに向かわねば……。通信も取ることが出来ればやってくれ」
「了解!」
そして、艦隊は急遽軌道を変更し、地球圏と火星圏の境界線辺りにある大型宇宙ステーションへと向かった。
そんな中、宇宙ステーションの兵士はゲリラ部隊に襲撃され、数少ない戦力でどうにか応戦していた。
「なんてことだ! 早く! 早く弾幕を張れェ!」
「全滅したら終わりだ! 何としても倒せ!」
旧式のラザックでは、新型機のソーディックより劣る性能であった事もあり、かなりの苦戦を強いられた。
このまま全滅を待つだけだ。そうなると誰もが思ったその時、一筋の光線が敵機を貫いた。
「何だ!? 一体何が起きたんだ!」
“隊長、あれを見て下さい!”
彼らが見たのは、リントヴルム艦隊の姿であった。
「亮、大型宇宙ステーション内は今まで戦って来た場所より遥かに狭くなっているぞ! 施設を破壊しないように気を付けて行け!」
“了解! ウィリアム艦長”
亮は、狭い通路の中を凄まじい速さで駆け抜ける。
「落ちろォォッ!!」
その中で、後方からゲリラ兵が剣を持って襲いかかった。
「させるかよッ!!」
即座に亮はブレードを取り出し、敵機を一刀両断。
そして敵機はあっという間に粉砕された。
“援護に来てくれてありがとう! 助かった……”
「礼には及びませんよ! 早く攻撃を再開しないと……」
“そうだったな……。では、行くか”
亮は宇宙ステーション防衛部隊の兵士と共に、果敢にも接近戦に挑んだ。
「来たか……。かかって来い!!」
ゲリラ兵の一人は、急速に接近し敵機のコクピットを狙おうと試みる。
「てやァァァッ!!」
「何をォォッ!!」
互いの剣の刃は、激しく鍔迫り合いを起こす。
どちらも一歩も譲らない状況であった。
「押し切ってやる!!」
亮はスラスターを更に吹かし、上手く敵を押し切った。
「うわァァッ……、あっ!!」
「これで、突き刺す!!」
その光の刃は、機体胸部を貫通し、見事撃破することに成功。
「危ないところだったぜ……」
“亮! ステーションの外に来てくれないか! こっちはかなりピンチだぜ!”
ジェフは激しい攻撃に見舞われ、苦戦しながらも亮と通信を行った。
「分かった、すぐに行く!」
“私も同行します”
防衛兵の一人も亮と共にステーションから出て、ジェフ達と合流。しかしながら、攻戦一防の状態は未だ変わらず、思いの外苦戦していた。
「こんなに敵がいちゃあ、倒し切れないぜ……」
“ジェフ、俺が大型粒子砲で一掃する! なるべく施設を傷付けないようにするからよォ!”
「分かった、頼んだぜ……」
ジェフは通信を切った後、自らのビームキャノンで上手く敵を牽制する。
“亮、今だッ!”
「オーケーだぜ、ジェフ! よぉし、喰らえェッ!」
ここぞと言わんばかりに、大型粒子砲から巨大なビームを放った亮。
これにより、周辺に集まっていたゲリラ兵は、全員機体もろとも宇宙の塵と化した。
「これで全員撃墜したみたいだな……。思ったよりも呆気なかったな」
亮は敵を何とか撃破し、安心した面持ちになる。
“よし、艦に戻ろう……”
彼らはリントヴルム艦に戻ろうとするが、防衛部隊の兵士達はそれを引き止めた。
「ちょっと待って下さい。ここに入って来てくれませんか?」
“分かりました……。入ろうか”
そして、リントヴルム艦隊のクルーはこの宇宙ステーションに一時的に駐留することとなった。
亮達が中に入ると、宇宙ステーションのクルー達が彼らを出迎えてくれた。
「おや、あなたは……」
「あなたが、ロードブレイダーのパイロットか。私はカルムス・パイソン大尉だ」
「僕は、竜崎亮といいます。階級は少尉です」
亮は彼に対し敬礼を行った。
「どうぞよろしく……。短い間になるだろうけど、共に仲良くしようじゃないか」
「はい……」
二人は握手を交わす。
そして他のクルー達も自己紹介を行い、半ば親睦会のような状況になった。
「なるほど。で、亮君は妹さんと戦争に巻き込まれて、ひょんなことから兵士になったという訳か……」
「そうなんですよ。だよな、玲」
「うん。私達は最初、普通に働くはずだったんですけど、まさかこんな予想外の事が起きちゃうなんて……、思ってもいませんでしたよ」
玲は以前の出来事を思い出し、無意識に溜息を溢した。
「でも、なんだかんだで上手くやっていけてはいるし、その上、新しい仲間も出来たから悪くないよね、亮」
「まぁな。軍隊としてやっていくのも慣れてきた……、というべきかな」
亮は、ほのかに笑みを浮かべた。
今までの戦いで得た力。仲間との絆。
自分が軍隊に入っていなければ、これらの事も当然ながら手に入れられなかっただろうと心の奥底で思う。
一方、ジェフとリーもまた、宇宙ステーションの
クルーと共に楽しい会話に花を咲かせていた。
「まさか、フォルツ大佐がここで防衛部隊をやっていたとは……」
「また君に会えるとはね……。奇遇だよ」
ジェフとフォルツの会話を聞き、リーは違和感を覚えた。
「フォルツ大佐……? ジェフさん、この人と知り合いですか?」
「知り合いも何も、フォルツ大佐は俺が士官学校に入ったばかりの頃にお世話になった方だよ。メタルユニットをどうすれば上手く操縦できるかとか、射撃のコツとかありとあらゆる事も教えてくれたのさ」
「君は……、ジェフの仲間かね。名前は?」
「俺は、ルイジェン・リーです。階級は少尉です。どうぞよろしく」
リーは、フォルツに握手を求める。
「おお、よろしく頼むよ」
フォルツにこやかな表情でそれに応え、互いにしっかりと握手を交わした。
その最中、レックス達は輸送艦に乗り、物資奪取を目的として大型宇宙ステーションを襲撃すべく、そこへと急速に向かっていたのだ。
「ウェイン、ゲイリー、今回は地球軍の管轄下にある宇宙ステーションから鉄鋼などの物資を強奪する。味方の部隊と共に行うから、連携プレーが鍵となる。しくじるなよ?」
“分かっています、レックス少佐”
ウェインは深く頷いた。
「ゲイリーは、煙幕弾を発射して撹乱することを忘れぬようにな……」
“任せてくださいよ……”
ゲイリーは画面越しにサムズアップをして見せた。
彼はかなり自信満々の表情であった。
「宇宙ステーション到着まで、まだ少し時間がある。とりあえず作戦の再確認でもするか……。今回は煙幕弾で敵を撹乱してから、奴らが混乱しているうちに圧倒的火力でねじ伏せるという内容になっている」
レックスは二人の表情を窺い、少なくとも作戦内容を理解していると察した。
「大丈夫なようだな……。では、各々の機体に乗り込むぞ」
「了解!」
彼らは、整備ドックへと向かって戦闘態勢に入った。
それから約一時間後、亮達はステーションのクルー達との挨拶を終え、ここで物資の調達を行っていた。
修理用の部品や、エネルギーの補給などをここで済ませた。後は帰るのみとなっていたが、
そんな矢先に、敵部隊が接近しているということを知り、攻撃態勢に入る。
「カルムス大尉、フォルツ大佐、ご命令を……」
亮は緊張した顔つきで、どうすべきか迷っていた。
“ひとまず、前線で遠距離攻撃を仕掛けるとしよう。そこから左右の味方の艦隊で挟み撃ちにするという形で作戦を進めていこうか”
「了解です、フォルツ大佐。大尉からは何かありますか?」
“個人的には、なるべくエネルギーを無駄にしないようにした上で攻撃を行うべきだと思うが……。ここにある物資は限られているからな。あとは、なるべく距離を詰められないように砲撃メインで攻撃すればいいんじゃないか?”
「それはいい考えですね。
フォルツ大佐、異論はないですか?」
“私からは無いな。では、作戦決行だ!”
「りょ、了解!」
亮は、やや焦りながらも操縦桿を握って機体を駆る。
火星政府軍の部隊は、宇宙ステーションに接近し、攻撃態勢に入ろうとしていた。
しかし、既に地球軍側もそれを察知しており、大至急戦闘態勢に入り、亮達は施設の外へと出た。
「さて、施設の中にどうやって煙幕弾を撒きましょうか……」
“とりあえず周りの敵を撃墜してやろう……”
「分かりました」
そして、彼らは敵機の撃墜を試みた。
「さぁ、撃墜してやる!!」
ゲイリーは機銃を構えて、手当たり次第に周辺の敵を矢継ぎ早に撃墜していく。
「まずいッ! グワァァッ!!」
「そんなッ……、マシンが保たねぇ……。アァァッ!」
地球軍の機体は次々に宇宙の塵と化していく。
「よし、通路に入るぞ」
そして、ゲイリー達はステーション内の通路に入り、煙幕弾を通路内にばら撒いた。
「何だ……。何も見えん! 皆、早く外へ出るぞ!」
“隊長、敵がいます!”
しかし、ゲイリーらは即座に外へと出ていってしまい、撃墜の契機を失う。
だが、彼らはその程度では諦めなかった。
「奴らを追うぞ! 早く早く!」
“分かりました、カルムス大尉!”
防衛部隊は早急に外へと出て敵と戦闘を繰り広げることになった。
そこにジェフと玲も合流し、戦いはより激しさを極める。
「これで……、撃つ!!」
ジェフは二本のビームキャノンで敵を狙い撃ち、次々に敵を仕留めていく。
「しまった……! ウワァァッ!!」
機体は爆砕し、一瞬にしてスクラップと化した。
「私だって負けてられないんだから!!」
玲は背面からツインバズーカを展開し、遠距離から圧倒的火力で敵を次々にねじ伏せる。
「この攻撃から逃れられるかしら?」
「コイツ、スピードも早い上に火力まで……。ここまで強い奴を倒せるのか……?」
ゲイリーはあまりの強靭ぶりに、顔面蒼白と化していた。彼が戦意を失いつつある隙に、一機のMUが近づく。
「隙ありィ! もらったぜ!」
ジェフはビームソードで素早く斬りかかり、機体の胸部装甲に傷を追わせた。
さらに追い打ちを掛けたのは、玲による攻撃だった。
「もう一発!」
彼女の放ったビームによって、ゲイリーの機体右腕部が一瞬にして消し飛んだ。
「ウワァァッ!」
これにより、ゲイリーの戦意は完全に喪失した。
「レックス少佐、撤収させて頂きます……」
“そうか……。仕方ねぇな。流れ弾に当たらないように
気を付けて戻れよ”
「はい」
そしてゲイリーは、やむを得ず撤収することとなった。
その一方で亮とリーは、マーク達と共に迫り来る敵部隊と一戦交えていた。
次々に来る敵を一斉掃射で殲滅して行くが、その中でレックスとウェインが他の部隊を連れて集中砲火を行っており、悪戦苦闘していた。
「何て奴なんだ! ジェイク、アレックス、味方を率いて挟み撃ちにして撃墜するぞ!」
“分かりました、大佐!”
“必ずやってみせますよ!”
二人は、意気揚々と攻撃を繰り出して敵を次々に撃墜していった。
「亮とリーは、敵の死角に回って撃て!」
“了解、大佐”
“俺たちに任せて下さい!”
亮とリーは、ハウンド小隊の二人と死闘を繰り広げる。
「コイツめ……、しぶとい奴だな……」
リーは、ビームライフルでウェインを狙い撃とうと試みるものの、なかなか攻撃が当たらない。しかしそこに手助けをしたのが、マークであった。
「落ちろッ!!」
マークは即座にライフルで一発のビームを放ち、ウェインはそれを左腕部に喰らい、辟易する。
「くっ、ダメージはまだ浅そうだ……」
“損傷率12%。コノ後ノ攻撃ニゴ注意ヲ”
そしてリーは、再び攻撃を仕掛けようとする。
“リー、今だッ!!”
マークの指示が突如として入る。
「分かりました! よし、喰らえェェッ!!」
リーはビームライフルを連射し、敵にかなりの大打撃を与えることに成功した。
“損傷率65%。撤収ヲオ勧メシマス”
「ここまでダメージを喰らってしまっては、戦えそうに無いな……。少佐、私はここで撤収します」
“そうか……。確かに、これだけボロボロじゃ戦えないな。戻れ。お前の分まで戦ってやる”
そしてウェインもまた、艦へと戻っていった。
そんな中で、亮はビームマシンガンを巧みに使って近づいて来る敵を次々に片付けて行くが、その一方でレックスが他の部隊と共に彼に襲いかかった。
「やってやる……。必ず!」
レックスは剣を片手でしっかりと構え、亮に襲いかかる。
「来たか! たァァッ!!」
亮もレックスに応戦し、剣で防ぐもののその敵の後方から凄まじい威力の攻撃を喰らう。
「何……!? ウワァッ、被弾した……。ならこれで一掃してやる……」
亮は大型粒子砲から雷の如く巨大なビームを放ち、後方の敵の半数以上を殲滅し、残った敵は敗走する。
「これで一騎打ちになったな……。殺してやる!」
レックスは、鋭い目つきで亮に攻撃を仕掛けた。
「させるかよォッ!!」
凄まじい勢いで近づいて来たレックスに立ち向かう亮。
彼はどうにかシールドで防ぐが、弾き飛ばされてしまう。
「くっ……、防いだはいいが、何て威力なんだ!」
亮は焦燥に駆られるが、後方からリーやWOLF達が来る。
“大丈夫ですか? 亮さん……”
「リー、よく来てくれた! それに、大佐まで!」
“ここは俺達も加勢する。だから安心しろ!”
「はい!」
リーやWOLF達の後方攻撃により、
ジワジワとダメージを喰らっていくレックス。
そこに亮が一瞬にして接近し、彼はブレードを振りかざす。
「これで……、斬る!!」
機体は亮の手で一刀両断されたものの、レックスは間一髪で脱出することに成功した。
「危ないところだったぜ……。覚えてろよ、ロードブレイダー!」
レックスは脱出ポッドを操作して艦へと帰還。
こうして、この防衛戦は地球軍の勝利に終わった。
その後、宇宙ステーションのクルーは月面基地の兵士と連絡を取り、常時防衛要請を出した。
「短い間でしたが、協力してくれてありがとう。これからは、月面基地の部隊と連携を取ることになったから、戦力不足には悩まされることは無くなりそうだ。リントヴルム艦隊の皆、世話になった」
「また会えることを祈っています、フォルツ大佐」
亮たちは、宇宙ステーションのクルー達に敬礼をした。
「さようなら……。また会う日まで」
「必ずまた会いましょう……」
そして、亮たちは艦に乗り込み、宇宙ステーションを後にする。
亮はこの時、あっという間だったこの場所での思い出をしっかりと胸に刻むことを誓った。
ジェフは、フォルツとの二度目の別れを惜しみながらも、きっと会えると信じていた。
様々な色の星々が、艦隊の飛んでいく所を通り過ぎていく。
次は、どんな出会いが待っているのかはわからない。




