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特殊部隊BLADER-FORCE  作者: 藤沢マサト
火星革命軍の襲来
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第29話 更なる高みへ

 8月17日、ついに亮達4人はアメリカ政府軍本部へと向かうこととなった。

 そこで行われるのは、本格的な無重力空間での戦闘訓練であり、ここに集められた兵士は、リントヴルム艦隊のクルーとして宇宙での戦闘をこなすために、この訓練に耐え抜くことになる。


「ついにやって来たか。アメリカに……」

 

 亮は輸送機から降りるが、少々躁鬱とした表情をしていた。

 それもそのはず、彼はほとんど宇宙空間での戦闘訓練を行った事が無いからである。だが、以前一度だけ選択訓練でそれをやったことはあるものの、まるで出来なかったため、尚更不安であったのだ。


「亮、不安そうだな……。でも大丈夫さ。無重力領域でもお前ならすぐ慣れるって…」

「そんな容易いのか? ジェフ……」

「私も……、ちょっと不安かも……」


 玲もやや顔色が悪く、自分がどうなるのか狼狽えていた。


「ジェフさんが大丈夫だって言ってるみてぇだしよぉ、二人もそんな不安がらない方がいいんじゃねぇか?」


 リーは、二人とは対照的に自信満々な表情でふっと笑ってみせた。


「まぁ、それがスムーズに出来ればそうしたいけどな」


 亮はそれでも少し青ざめた表情のままだった。


「二人共、そんな弱気じゃ困るぜ。戦争を終わらせるためには、そんなネガティブな考えを抱いてたら駄目だ! 何事も強気でやらねぇと!」


 リーは弱気な二人に対し、強く一喝した。


「あぁ、そうかもしれないな…。ありがとよ、リー。少しではあるけど、不安が消えたと思うぜ……」

「うん、ちょっと後ろ向きに考えすぎたかもね。リーのおかげで気が楽になった気がするわ」


 二人は今後の訓練に向けて、万全な精神状態となった。


「おい、お前ら! 早く基地に入った方がいいぞ!」

「は、はい!」


 現地の兵士からの指示を受けて、4人は基地内の施設へと入っていった。



 一方で、鎧達5人はここしばらく国外からの招集が無かったため、束の間の休息を味わっていた。

その反面で、彼らは亮達がいないために少し寂しさを感じていた。

 いつもであれば、賑やかな談話室もここ数日は打って変わって妙に静かであった。


「はぁ、亮たちは今頃アメリカか……」


 リックは思わず溜息をついた。


「少なくとも、そうだろうな……。それにしても、アイツらがいないとやはり寂しいな……」


 鎧もまた、寂しさ故に思わず普段亮たちが座っている席に目を向けた。


「せっかく仲良くなれたと思った矢先に召集がかかってしまうなんて……。私はもっと亮さんと色々な話をしたかったんですけどね……」

「確かに、亮さんやジェフさんみたいな方がいなくなったら、心細いですからね……。この穴はかなり大きいですよ」


 美奈と省吾は、いつもより暗い表情をしていた。


「それでも、亮達が抜けた分もフォローしなくてはな……。何としてもアイツらのために戦い抜かなければ……」

「えぇ、そうですね。いつまでも鬱蒼としてても仕方無いですからね……」


 アンナは、鎧の方に顔を向けて頷いた。


「何はともあれ、俺たち5人でやるしかないな……。これからは、俺が戦闘指揮を行いたいんだが……」

「もちろんやっていいよ。鎧さんの機体操縦テクニックは十分、はたまたそれ以上に上手くなっているようだし、この中で最年長だから、尚更だね。頼んだよ」

「ありがとう、リック……。頑張ってみせるさ……」


 鎧は、うっすらと微笑んだ。


「私も信頼してますからね!」

「もちろん僕もですよ! だろ、美奈!」

「はい。私、鎧さんになら指揮を任せられると思います」

「皆、ありがとう……。これからは俺に任せてくれ……」


 彼は、自信に満ちた表情を見せた。



 一方、アメリカ政府軍基地内では、各国から集まった艦隊のクルーとなる兵士たちに、司令官のマーティンが自ら出向いて、直々に挨拶を行っていた。


「諸君、多忙の中よく来てくれた。君たちにはこれから厳しい訓練に耐えてもらう。戦争終結のためにも、何としても努力して欲しい。諸君らに、健闘を祈る」

「了解!」


 張り詰めた空気の中、その場にいた兵士一同はマーティンに向けて敬礼を終え、各部隊の兵士はそれぞれの部屋に向かっていった。

 亮は、今後の生活に慣れるかどうか不安ではあったものの、どうにか心の中でそれを打ち消そうとしていた。


「亮……? 亮、おーい……」


 玲は、亮の顔の前で手を振る。


「あっ、どうした玲?」

「ボーッとしてたけど、大丈夫なの?」


 彼女はしばらく動じなかった兄に対し、不安であった。


「大丈夫だ。気にしないでくれ」

「それならいいんだけどさ……。早く最初の訓練に行くよ!」

「分かった。早速行こうか……」

「ジェフ達は先に行ったみたいだから、早く早く!」


 そして二人は、訓練室へと向かっていった。

   ︙

 訓練室に集合した兵士たちは、そこに設置された無重力空間戦のトレーニング装置をまじまじと見つめた。


「亮は、この訓練が不安だったのか?」


 ジェフは先程の様子を察した。


「ああ、そうなんだよ。この訓練、一回やったけど全然上手く行かなくてよ…。困ったもんだよ…」


 亮はすっかり元気を失った表情を見せる。


「大丈夫ですって、亮さん! あれだけの戦闘能力を持ってさえいれば、これぐらい出来ますって!」


 リーは、どうにかして亮を鼓舞させていた。


「まぁ、やれるだけのことはやってみるか……」

「その調子でやってみて下さいよ! 亮さんなら、絶対やり遂げられますから!」


 そのようなやり取りをしている間に、亮たちの方に順番が回ってきた。


「次は、ブレイダー隊の4名だが、竜崎亮准尉!」

「はいッ!」


 亮は、力強い声で返事をした。


「この装置のシートに座ってくれ。制限時間は5分だ」

「了解!」

“訓練ヲ開始シマス。スタンバイシテ下サイ”


 そして彼は、装置の中に座り、訓練を始めた。


「うぉっ! やっぱ慣れねぇな……、この感覚……」


 ふわりとした空間内での動きになかなか馴染めなかった亮だったが、何とか機体腕部を動かして敵を狙い撃とうと試みる。


「来たな! そこだッ!」


 放たれた光弾は敵機に直撃し、爆発四散。

 その後も敵機は次々に現れ、自分を囲む。


「クソッ……、ならば慎重にいかないとな」


 亮は以前の訓練とは違い、上手く集中して迫り来る敵を次々に撃ち落としていく。


「まずいッ! 敵の攻撃を喰らったか……。体制を立て直して、よし……」


 疑似宇宙空間の中で、何とか攻撃できる姿勢に戻し、再び射撃を行う。


「残り時間が少ない…。これが最後の一機になりそうだな。喰らえッ!」


“5分経過。訓練ハ終了シマシタ。撃墜数ハ13機デス”


 攻撃しようとした矢先に、時間切れとなってしまい、彼はジェフの記録を抜けなかったことに悔しさを抱いた。


「亮さんやるじゃないですか!」

「リー、褒めてくれるのは嬉しいが、目標が達成出来なかったからむしろ悔しくてな……」


 なぜ、思ったように自分の力が発揮出来なかったのか────────

 自分自身で考えつつ、リーと交代した。

 その後、リー、玲の2人もジェフほどの記録を出せず、その一方でジェフは20機撃墜に成功し、周りから驚かれていた。それを受けて亮は記録更新のためにさらなる努力に励んだ。


 数時間後、訓練を終えた亮は一人で自室の中、教官から壊さない事を条件に貸してもらった簡易型バーチャル訓練装置を使い、自分を研磨すべく練習を続けていた。


「おーい、亮? あっ、取り込み中だね。じゃ、また後にしよっと……」


 玲は様子を伺おうとしたが、邪魔になると思ったのか、すぐさまこの場を去る。


「よしっ! このままいけばジェフに追いつける……」


 しかし、彼はどうしても5分間という制約故に、ジェフの記録を抜くことは出来なかった。

 上手くいかず、悩み苦しんでいる亮。彼の表情は暗かった。


“5分経過。訓練ハ終了シマシタ。撃墜数ハ18機デス”


 亮は頭部に装着していた装置をゆっくりと外して置く。


「何でだ……。何でなかなか20機以上撃墜出来ないんだ……。やはりとことん集中しないとダメか……」

   ︙

 その後、夕方になり亮は気分転換として玲と一緒に談話室でコーヒーを飲んでいた。

 すると、そこに見覚えのある人物が通りかかる。


「やあ、亮。久しぶりだな」

「マーク大佐! 大佐もここに来ていたんですね」


 亮は少し驚いたものの、いっその事自分の悩みを話す事にした。

 それを聞いたマークは、少し考え込んだ。


「なるほど。ジェフ以上の記録を打ち出したいというわけなのか……。ならば……」

「ならば、どうするんですか?」


 亮は思わず、前のめりな姿勢になる。


「要は焦らず無心になって、来る敵に迷わず正確に狙い撃つ……、という事を実践してみてはどうだ?

そうすれば、今まで以上に良い記録を出せるはずだ」

「無心……、ですか」


 堅苦しい表情で、腕を組む亮。


「そうだ。自分の周りの邪念を全て追い払って、その上で訓練に取り組めば、きっとできる…。いや、必ずやれる……。君ほどのセンスの持ち主なら大丈夫だとも!」

「はい、やってみます!」

「亮ならできるって言ってたから、きっと出来るよ! 私も応援してるね!」

「ありがとよ、玲……」



 そして翌日、バーチャル訓練の時間となり、亮は必死に無心になろうと心がけた。


「次は竜崎亮准尉、君の番だ。早く装置に入れ」

「了解!」


 前日のマークの言葉を胸に、疑似戦闘訓練に挑む。


“訓練ヲ開始シマス。スタンバイシテ下サイ”


「よし……、集中して無心になろう……」


 亮は精神を統一して、訓練に挑んだ。

 攻撃を外すことなく、確実に敵を仕留めていき、気がつけばあと少しで20機を超えるという所となった。


「いける…、喰らえッ!」


 彼は見事、ジェフの出した記録を更新したのだ。

 しかし、まだ訓練時間は約30秒余っており、視界にいたもう一機の敵を撃墜。結果的には22機撃墜に成功した。

   ︙

 その直後、装置から出ると周りの兵士が驚いていた。

 それもそのはず、ただでさえこの訓練の撃墜機数の平均値は12.6とされているのに、その上ジェフの出した最高記録を抜いたからである。


「亮、まさか俺の記録を抜くなんてよ……。やるじゃねぇか! 次の日はまた更新してやるからな!」

「記録更新おめでとう、亮! でも、今度の記録を抜く可能性があるのはジェフだけじゃないって

ことも忘れないでよね!」

「亮さん、凄いぜ……。俺も負けてられねぇなぁ!」


 ジェフ達三人は、彼の出した記録に感心しながらも、どこかライバル視している一面も見せた。


「よくやった、亮……」

「マーク大佐! 記録を更新できたのは大佐のおかげです! 本当にありがとうございます!」

「だが、亮よ……」


 先程までとは一転、マークは険しい表情をした。


「何でしょう……」

「これはあくまで訓練だ。実戦でも同じように記録を出せるとは限らないぞ。これからも訓練に励んで、さらに実力を積んでおけばかなりの成果が出せるはずだ……。頑張れよ……」

「了解ッ!」


 亮は、あらたまってマークに向けて敬礼を行った。


 その後も厳しい訓練は続くが、亮たちが心を折ることは無かった。

 メタルユニットに搭乗する上での訓練では、今までになく辛く過酷な試練をこなすこととなったが、一人も欠けることなく乗り越え、さらに高度な剣術訓練や、格闘訓練、射撃訓練も行われ、参加した兵士達は今まで以上に強く鍛えられた。

 


 そして、ついにリントヴルム艦の進宙式となり、クルーとなる兵士達は、艦長であるウィリアムと直接顔を合わせた。


「私が、このリントヴルム艦隊の指揮を行うウィリアム・マディソンだ。諸君、よく今までの過酷な訓練に耐え抜いてくれた。しかも、一人も脱落者が出ていないというそうではないか。それを初めて聞いたときは驚いたぞ。だが、今はまだ出発点に過ぎない。戦争終結のために、私と宇宙での戦いを乗り越えていこう」

「了解!」


 しかし、その時とある知らせを聞くこととなる。

 なんとアメリカ政府軍基地の遥か上空に革命軍の艦隊が迫っているという通達が来たのだ。これを受け、リントヴルム艦隊は進宙式を一時中断せざるを得なくなった。

 また、基地内では混乱状態に陥っており、何とか戦闘体制を整え、敵部隊に挑むこととなる。

 果たして、リントヴルム艦隊は無事に宇宙へと旅立つことか出来るのだろうか。

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