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君に伝えたいこと~幸せな家庭  作者: まさのし
2/2

世界の中心で愛を叫ぶ

昔の彼女からの電話、その電話の一言で主人公の人生が、彼女の人生が大きく変わっていく。

午前三時、俺は高速道路を都内に向かって激走していた..


「ところで、こんな時間に電話してきて、どうした?」

「...」

返事がない。


あの日、突然、彼女が俺の前からいなくなった理由を知っていたけれど、敢えて聞いてみた。


あの時いなくなった本当の理由を、彼女の口から聴きたかった...


「今彼氏は?」

「...」

「あのとき一緒にいた人は?」

「えっ?」

「俺は知ってるよ...」

「大体のことはお店の人から聞いたから...」

「...ごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいよ...」

「...」

「でも、あの時は、凄く傷付いた、そして凄く悲しくて、あれだけ約束して、あれだけ愛してるって言ってくれたのに...毎日毎日、君の事を考えない日はなかったんだから...」


あの時の涙と、苦しみ、嫉妬、少しの憎しみと、悲しみ、そして、恋と、愛、全ての感情が入り交じっている感覚の中、俺はその感情を超越する「何か」に自分が心動かされ始めている事に、気が付いていなかった。


「そんな風に思ってくれてたなんて嬉しい...ありがとう」

「別に、お礼なんて...」


「いま、幸せなのか?」


この問いかけの後の彼女からの言葉で、俺の人生が決まる。


「私も、あれから結婚したんだ...」


「!!!??...」


「俺の人生真っ暗闇だ...俺の想像していた答えと違う!」心の中で呟いた...


「結婚って?あの時結婚してたんじゃないの?店の定員...」

「違うよ、あの時はしてない!」


俺からすればあの時も、このときも、男が居れば同じだ!


「そうなんだ、いつ結婚したの?」

「去年...」

「そっか、子供は?」

「一人いる...」

「!!??」


俺の求めた答えは、一つ!


「いない」


これが模範解答です...


今一度、心の中の自分に問いかける。

「今なんか聞こえたか?」

「いや、聞こえないよ...」

「そうだよな、何も聞こえないよな...」

「これは夢か?幻か?」

「夢じゃね!」


じゃあもう一度聞いてみよう...


「子供は一人?女の子?男の子?」

「女の子、一人...」


現実だ...

紛れもない現実...

頬をつねる...

痛い...


予想だにしない答と、昔の心の古傷が重なり、俺の心はズタズタになっていた...


何なんだこの電話は?

もう夜中の2時過ぎだし!

結婚の報告会か??

ふざけるな!!


心の中で叫ぶ!


俺は受話器片手に、自分の部屋の真ん中で、何度も何度も叫んだ、叫び続けた!

ふざけるなーっ!!


...そう言えば昔、「世界の中心で、愛を叫ぶ」

って映画が流行ったのを今、思い出した。


この時代にはまだ公開されていないが、もしかしたら、俺の心の叫びを聞いた作者が、この言葉を参考に、この映画の題名を付けたに違いない。


「俺は自分の部屋の中心で、ふざけるなって叫ぶ!」


売れないな...このタイトルじゃ...


心の叫びも程々に俺は冷静を装い話を続けた。


「女の子かぁ...君に似て可愛いだろうなぁ...」

「似てるわかんないけど可愛いいよ...」


赤ちゃんは誰でも可愛くてあたりまえですよ...

はぁ...早く電話を切ろう...

眠い...


「そっか、可愛くて良かった。」

「旦那さん元気?」

「うん、元気!」

「そっか良かった!」

「明日、俺、朝早いからまた電話してね!」

「わかったまた電話するね!」

「うん、ありがとう!」

「お休みー!」

「お休みなさい!」


...って

終わるはずだった...

そう終わって欲しかった...


「旦那さんは?」

「...今いない」

「夜勤かぁ、大変だねー...」

「なにしてんの、仕事?」

「塗装工...」

「え?俺の仕事と一緒じゃん?」


内心どうでも良かった。

旦那がペンキ屋だろーが、電気屋だろーが、はたまたヤクザでもお巡りさんでも、総理大臣でも、俺には関係なかった...


早く電話を終わらせて、暖かい布団に入りたい..

多少さっきの台本と違うけど仕方ない、早く切り上げよう...


「何時戻るの?」

「...わからない」

「?」


何か嫌な胸騒ぎ...


「どうした?」


聞けば結婚したのは、去年で、あの時から付き合っていた彼氏は、同じ地元の先輩後輩の仲で、出身は東北地方、子供が出来たから、仕方なく籍を入れただけで、式は上げてないとのこと。

そして、今は都内のマンションに従姉妹と、子供と三人で暮らしているとのこと。

子供は5ヶ月...

そして、肝心な旦那様はと言うと...


留置所にいた...


「旦那どこにいるの?どこかの女の所?浮気でもしてるからいないの?」


少し意地悪っぽく聞いた...


「...留置所」

「りゅ...えっーーー!?」


宮川大輔張りに叫んだ!


「えっーーーーーーーーー!!!???」


眠気も覚めた。


「留置所って...!?訳は後で聞くけどこれから生活は出来るのか?つーか出来てるのか?」


「...出来ない、出来ていない...毎日色々辛くて、色々考えていたら、あなたとのあの時の事を色々思い出しちゃって、そしたら凄く貴方の声が聞きたくなって、会いたくなって、それで電話してしまって...」


その言葉を聞いた瞬間に、俺の心のひび割れと、眠気と怒りと嫉妬、その他全ての感情が消えてなくなった。


そこにあったのは「昔彼女に募らせた愛」だけだった。 


単純な男だ。

あなたの声が聞きたくなって...って一言言われただけで、何処かの火山が噴火したような熱気を出して、一人で興奮している...


「わかった!そこで待ってろ!今から迎えに行くから、場所教えなさい!」


「でも...」


「でもも、へちまもない、何も言わずに場所だけ教えなさい、今から迎えに行くから!直ぐに行くから!」

「もうどこにも行かせないし、離さない!俺の側にずっといろ!」

「だって子供も...」

「子供も誰でも、君の分身は俺の分身!子供も俺が責任もって育てる!」


その熱意が伝わったのか、彼女は住所を教えた。


東京だった。


俺の今いる場所から車で約二時間、飛ばせば一時間と、少し...よし!


早速、俺は服を着替え、彼女のいる東京方面に向かって車を走らせた...


車は、ニトントラック、荷台には沢山の塗料が乗っかっていた...

純粋な愛を求めて行動する主人公。

それを信じない回りの人間。

主人公の行動力の源は何か、主人公の愛とは、恋とは、思いやりとは何かを、模索していく姿が悲しく映る。

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