8話ー戦闘準備
ユリウスはガバンさんの家で寝泊まりしていた。ただで泊るのも悪いので、ガバンさんの仕事の手伝いをした。
はじめは断っていたけど、俺が一歩も引かずガバンさんが折れてくれた。
あと、剣道でも俺は話題になった。
一国の幹部を倒したと言うことで、生徒の大半が俺に練習を請うてきた。その光景を見た先生が、かなり呆れていたけど、俺も先生もなんとかみんなを説得して、通常通り練習をした。
しかし、ある日。街の外から声がした。
「おーい!ここの町長はいるかー!」
その男は焦って町長を探していた。
町長が来て話を聞くと、その男はどうやらドラーシップ街とロアンクルシル王国の一直線上にある、ギールという街から来たミラーというらしい。
「それでどうしたんじゃ?」
「俺がギールいたら、東の王国の兵達がゾロゾロやってくるからよ、1人の兵隊さんに何があったのか聞いたんだよ。そしたら、『理由は知らないが、今からドラーシップ街を潰しに行く』なんて言うからよ、こりゃあじっとしてられんってことで来たんだよ。ただ、俺、馬持ってねえから走ってきた。」
それを聞いたみんなが一斉に俺を見た。
「はあ、やっぱり来たか。でも安心して。ここは俺が絶対に守るから。」
「何があったのか知らねえけど、歩いてたから明日にはここに着くと思うぞ。」
「丁度いい。その間にみんなは被害が出ないように、用意してて。」
俺の声を聞いて、みんな家に帰った。何かあってからでは遅いため、みんな大きなバックに荷物を入れていた。
俺はみんながいないのを見て、ミラーにどれくらいいたのか聞いた。
「正確な人数は知らないが、兵隊が喋ってた中で、1万っていう声が聞こえたが、それが兵の数かは知らねえ。」
らしい。
俺もガバンさんの家に入って考えた。
どうやって迎え撃とう。
考えているとガバンさんが話しかけてきた。
「どうすんだよ。お前のその能力を使えば勝てるとは思うが。」
そう、それだ。そこを悩んでいた。
刀だけでも、ある程度は倒せるかもしれない。でも、それにも限度がある。
だからって下手に能力を使えば、ここのみんなに俺が魔物だということがバレる。
確かに、もともとスキルを持っている人間もいる。
ただ、俺も街のみんなからすれば成人したばかりの初心者だ。そんなやつが、1万人いるかもしれない兵を倒したら誰でも、俺が魔物だと気づく。
どうしたものか。
「お前はどうしたい。」
「どうしたいって言われてもねえ。バレずにすむならそれがベストだけど、バラさないでここがなくなるっていうのも嫌だしね。」
自分でいうのもなんだけど、俺は強い。だけど、能力なしでこの街を1万から守れるほど強くない。
父さんから貰った刀もかなりのものだけど、まだものに出来ていない。ある程度使いこなせるだけで完璧ではない。
タイムリミットは明日。どうしたものか。
「んー、もうみんなにバラシちゃったら?」
「え?」
ガバンさんからかなり意外な言葉が出た。
「バラすっていっても、その後はどうすんの?」
「その時は俺がみんなを説得しよう。だが、万が一それでもダメだった場合は、一緒に別の街に行こう。そうすればまた、同じように始められる。」
ほんと、ガバンさんは嬉しいことを言ってくれる。
「でも、ガバンさんはそれでいいの?」
「俺のことは気にするな。言っちゃあなんだが、俺の名はそこそこ売れている。他の街に行っても大丈夫さ。」
そう言って、笑ってくれた。
そこまで言ってくれるなら、俺としてはすることはひとつしかない。
全力で相手をするだけだ。
その日の夜、俺は夢を見た。
周りは真っ暗だが、俺の目の前には母さんと父さんがいた。
俺は近寄って、母さんと父さんの前で止まった。
「アル、元気でやってるじゃない。」
「いや、いろいろ大変だよ。」
「ハハハハ!あのロアンクルシル王国に喧嘩を売るとは、なかなかにやるな。さすがは俺の息子だ。」
「ふ、なんで知っているんだよ。2人はもう、死んじゃったんだよ?」
「なーに簡単なことだ。言っただろう、俺たちは常にお前の中にいると。お前が忘れない限り、俺たちは死なない。」
「じゃあ俺が今見てるのは、俺が作り出した母さんと父さん?俺は自分に話してるの?俺、1人になりたくないよ。」
「アル?母さんと父さんはね、悪魔が作り出しても、天使が作り出しても、アルが作り出しても、母さんは母さん。父さんは父さんよ。」
「母さん、俺、怖いよ。みんなの前ではあんなこと言えたのに。もしかしたら俺、この戦いで死ぬかもしれない。」
どうも俺は前世から自分の悩みを溜め込むくせがあるらしい。
みんなの前では、できるできると言いながら、影でどうしようと悩んでしまう。
そのくせがまだ治っていない。
「何を甘っちょろいこと言ってんだ。お前は誰の血を持っていると思っているんだ。かの有名な破壊龍ヴェルハザード様だぞ?そんな簡単に死なれてもらっては困る。お前には果たして貰わないといけないこともあるのだからな。」
「グス…、そうだね。まだ、泣く時じゃないね。俺やるよ。見てて母さん、父さん。俺がこれから活躍する所を。」
「ええ、楽しみにしてるわ。」
「見せてもらおうじゃねえか、お前の活躍を。」
夢から覚め、俺はベッドから降り、外を見た。
綺麗な青空だ。
見ててよね、母さん、父さん。
そして、俺は着替えて、これから戦うための準備をした。