表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

6話ー決闘とその後

 やっぱり対応を変えた方が良かったかなあ。つい、「俺が相手をする」なんて言ったから戦うことになっちゃったよ。

 でも、俺の今の実力を知るにはいい機会だ。そう、ポジティブに考えよう。

 相手のハリセンは完全に俺を舐めている。こういう相手はだいたい勝てる。多分だけど。

 そう考えていると、ハリセンが俺に向かって剣を振りかぶった。

 一撃目を難なく避けると続いて二撃目が来たので、これは刀で受け止めた。


「ほう、なかなかやるようだな。」

「まあ、それなりにね。」

「だが、この俺に勝つことはできん。死ねーー!」


 ちょっと落ち着こうよ。格好付けて「死ねー!」なんて言っちゃって。

 ハリセンは俺と1度距離をとるともう一度切りかかって来た。

 俺はそれを全て受け流した。

 ていうか、この刀ガバンさん曰くかなりの切れ味なのに、ハリセンの剣は無事だ。

 ということは、ハリセンの刀もそこそこ良いやつなのかな。でも、思いっきり振ったら流石にハリセンの剣は折れるだろうね。


「どうした、さっきから避けてばかりだが。さては、本物の剣での戦いはしたことないな?それで怖くなったんだろ。」


 正直ハリセンの剣は遅い。道場の先生とどっこいどっこいだ。


「今謝ってくれるなら見逃してやってもいいんだよ?」


 やばい。こいつウザすぎる。

 もうちょっと遊ぼっかなー、とか思ったけど、やめだ。もう、終わりにする。

 ハリセンはまた切りかかって来た。

 俺はその剣筋を素早く見て、ハリセンの剣に向かって思いっきり刀を振った。

 すると、見事にハリセンの刀は半分に割れ、剣先の方は中を舞った。

 その結果に唖然としていたハリセンとその部下。

 一方で街の人は、少し間を置いて歓声を上げた。


「ユリウス、お前スゲーな!」

「アルちゃん、今度おばちゃんと一緒にお茶しましょ?」


 お茶のお誘いは遠慮しておきたいけど、とりあえず勝ったからいっか。

 ふと、ハリセンを見ると、剣を落として、膝をついていた。

 悔しいだろうな。恥ずかしいだろうな。

 あれだけ言ったやつに負けたんだから、よっぽどだ。

 ハリセンは剣を拾わずに立ち、そのまま早歩きで帰っていった。帰り際に、


「チッ!覚えとけよ」


 と言った気がするが、気にしたらいけないだろう。

 ハリセンの部下が真っ二つになった剣を拾って、ハリセンについて行った。




 1時間後。

 騒ぎはだいぶ落ち着き、俺はガバンさんの家にいた。

 俺が暗めの顔をして、刀を腰にかけていた(普段はかけない)ことから何となく察していたようで、しばらく沈黙が続いた。

 そして、ガバンさんからシンプルな質問が来た。


「死んだのか?」


 その質問に俺は頷き、父さんが俺に言ったことをそのまま話した。


「そうか、いつかこうなるとは思ったが、思ったよりも早いな。でも、お前はこれからどうするつもりだ。魔物と人間の共存させるのがお前が受けた役割なのに、今日、ロアンクルシル王国の幹部とトラブルになっちまって。あそこと関わりにくくなるだけじゃねえか?」

「まあ、大丈夫、何とかなるよ。」

「何とかって…。」

「それに、また、来ると思うよ。その時に上手く対処すれば、国王とも話ができるでしょ。」

「お前、簡単に言うけどな、そう思い通りにいくか?」

「うん、いくようにする。」


 その言葉を聞いたガバンさんは、何となく少し笑ったような気がする。



 ■



 今日はガバンさんの家に泊まる。

 ガバンさんには奥さんはおらず、ずっと独身だ。

 だから、1人で家のことをしている。

 今夜は野菜スープにパン、酒とそのつまみだ。

 ガバンさんの作る料理は不味くはない。ただ、何かが足りない。料理経験がないから何とも言えないけど。

 それでも今の俺には、この味が最高に感じた。

 ガバンさんが酒を飲み出して調子が出てきたのか、昔話をした。ちなみに俺はあまり酒は得意ではないから少しつづ飲む。


「昔なー。俺がまだ11の時な、鍛冶の修行のために遠くの街にいってた時、俺はよく師匠に叱られたもんだ。力が入ってねーとか、気持ちが入ってねーとか。で、俺は悔しくてよく裏で泣いてたな。で、ちょうど19の時、いつものように悔し涙を流していた時、俺と同じくらいの女の子が俺にハンカチを出してくれた、『どうぞ』ってな。それから俺が裏に来た日にはいつも来るようになった。で、いつも俺の愚痴を聞いてくれた。そして、俺はいつの間にか好きになっちまっていた。21になって、俺はようやく師匠に認めて貰えた。その時に決心したんだ。俺はあの子と結婚するんだって。でも、その日、あの子は来なかった。俺は次の日もその次の日も待った。だけど来なかった。俺は彼女が来た方向を歩いた。しばらく歩くと、一つの家が見えた。別に見るつもりはなかったが、見てしまった。その家ではその子の葬式をしていた。俺は急いでその家に入って、どうして死んだのか聞いた。どうやらその子は元々体が弱かったらしい。ある日の買い物に行った時を境に毎日、俺がいた街に来た。楽しそうに行っていたそうだ。でも、突然帰らなくなって行って、向かいに行ってみると道の真ん中で倒れていた。恐らく毎日毎日歩いていたせいで疲れが溜まっていたのだろう。それで倒れて助けが来なくて、そのまま。俺は話した、今まで愚痴を聞いてもらっていたことを。すると、お父さんが俺の方に来た。俺は殴られるとこを覚悟したが、逆だった。泣いて抱いて感謝された。『ありがとう。娘は幸せな気持ちでいっただろう。』って。つられて俺も一緒に泣いた。泣いて泣いて泣いた。」


 その話をするとしばらく黙った。

 そして、俺に問うてきた。


「何が言いたいか分かるか。」


 俺はただ黙って、軽く首を横に振った。


「俺が言いたいのはな、後悔だけはするな、ということだ。言いたいことがあれば言え、したいことがあればしろ。幸いお前はそれが出来るやつだ。俺みたいにあとになって後悔をするな。なくなればもう、ないんだ。あの時言えば良かった、あの時やれば良かった。そう、思うことがないように生きろ。でもな、人生そんなに甘くなくてな、絶対にそう思うことがある。だけどその後どう思うかでお前の人生は変わる。一瞬の後悔はいいが、一生の後悔だけはするな。」


 ガバンさんはかなり出来上がっていたようで、話終えると、そのまま寝てしまった。

 俺はガバンさんに毛布をかけてあげるとともに、心の中で誓った。

 絶対に後悔はしない、と。

 そして、俺もソファーで寝た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ