5話ー15才
5年後。俺は15才になった。
父さんの死ぬかも宣言から5年が経っていて、今ではもう、かなり弱っていた。
父さん曰く、いつ死んでもおかしくないらしい。
「アル、こっちに来い。話がある。」
「うん?なに?」
俺にかけたこえでさえも弱々しかった。
そして、なぜか俺は瞬時に悟った。
最後の会話になる、と。
今まで、父さんから俺に話しかけて来たことはない。いや、あるにはある。
ただ、それは会話とは呼べないもので、互いの生存を確認しているだけだ。
「アル、街はたのしいか」「うん、楽しいよ」、終了。
こんな感じだった。
それは、父さんが宣言をした半年後から始まった。
だから今回、父さんから弱々しいが、何か雰囲気が違う言葉をかけられて、俺は覚悟をした。
「お前は俺の子だ。誰がなんと言おうと俺の子だ。そして、お前の母親はマリンだ。お前は龍と人間の間に生まれたいわば龍人だ。ただ、お前はこれから、人間からは人間じゃないといわれ、魔物からは魔物じゃないといわれるだろう。だけどな、これだけは忘れるな。人間でもなく\、魔物でもないのが龍人ではない。人間であり、魔物であるのが龍人だ。わかったな。」
「…うん。」
「もう一つ。お前の親は俺とマリンだけではない。これの意味がわかるか。」
俺はちょっと考えた。
親は俺たちだけじゃない?どゆこと?
前世の親のことかな。でも、そのことは言ってないしなー。
俺は1分ほど考えたが、答えは見つからなかった。
「いやー、わかんない。」
「では、質問を変えよう。今のお前の力は、お前一人で手に入れたものか?」
今回は割と考え安かった。
俺はもともと奪取という能力を持っていて、その能力のお陰で3種類の属性系スキルを手に入れることができた。
このスキルは父さん譲りだから父さんのお陰で今の俺がいる。母さんもそうだ。
だけど、「俺たちだけではない」というので違う。
それ以外で、今の能力を手に入れることが出来たとなれば、魔物や人間達だ。
俺の能力の奪取で、魔物や人間から少しづつ能力を貰って、今の属性系スキルがある。
「魔物とか、人間とか?」
「そう、魔物や人間がいなければ今のお前はいない。だからお前の親は、今まで出会ってきた魔物や人間達だ。お前が能力を得るために、たくさんのものを殺し、傷つけて来ただろう。お前はそいつらに感謝し続けなければならない。俺もそうしてきた。お前は俺がいなくなっても1人ではない。たくさんの仲間がいる。その事を忘れるな。」
「う、うん」
いつもと違い、かなりかしこまった感じだった。
すると突然、父さんの身体がひかり出した。
俺はあまりにも突然のことにに動揺していたが、父さんは平然としていた。
おかげで、最期にかける言葉も見つからなかった。
「慌てるな。ただ、逝ってくるだけだ。お前が俺たちを忘れない限り、俺は死なない。」
その言葉のおかげで少し動揺が収まった。しかし、光は少しづつ父さんをもっていった。
「最後にもう一つだけ言っておく。アル、何か悩みがあって、自分でも周りの人でも解決できないことがあれば、またここに来い。きっと力になれる。」
俺はようやく落ち着きを取り戻した。
そうだ、父さん自体はいなくなるかもしれないが、存在が無くなる訳では無い。だから、俺も笑顔で送り出そう。
そこで俺はようやく自分に素直になれた。
「父さん、ありがとう。いってらっしゃい。」
「ああ、いってきます。」
その言葉と同時に父さんは完全にいなくなった。
ただ、俺は泣かない。
父さんはまだ生きている。俺が忘れない限り。
それに、まだ父さんとの約束もある。泣くのは、その後だ。
よし!行こう!父さんのために。みんなのために。
そうして俺は洞窟を後にした。
■
俺は下を見ないようにして歩いた。目的地はドラーシップ街だ。
ドラーシップ街に近くなると、なにやら人だかりができていた。
何事かと思い、人だかりに近づくと、ガバンさんと目が合ってこっちに来た。
「よかった、アル、どうにかしてくれ。」
「なにがあったの?」
「実はな、ロアンクルシル王国の幹部だという奴が来てな……」
ー
ーー
ユリウスが洞窟から出る少し前。騒ぎの元凶が連れを6人連れて歩いて来た。
そして、街に入るといきなり、
「ほー。ここがドラーシップ街ねえ。うーん、森の調査がてらよったが、汚いし、小さいし、貧乏だ。でもまあ、酒ぐらいはあるだろ。おい!だれかこのセバス・ハリセン様に酒を持って来い。」
その言葉を聞いて、酒屋のアレル・タジンが出てきて
「はーん?!だれがテメーなんかに出すか。テメーに出す酒なんかねえ!とっとと失せやがれ!」
そこから激しい言い合いになり、周りの人とハリセンの連れが必死に抑えた。
するとそこにユリウスが来た。
ーー
ー
「なるほどね。状況はわかった。とりあえず止めよう」
俺は酒屋の中から椅子を持ってきてその上に立った。
大きく息を吸って、
「ストーーープ!!」
俺の大声にみんな反応してこっちを向いた。
俺は全員がこっちを向いたことを確認すると、
「なにが起こったのかなんとなく聞いたけど、とりあえず離れよう。ね?」
それを聞いてみんなは少しづつ別れ出した。街の人と王国の人に。
「は!子供が仲裁に入るなんて、ここの大人はよっぽど使えないんだな!」
「なんだと!!」
あーもう。なんでそんなこと言うかな。
「まあまあダジンさん落ち着いて。それと、王国の幹部のハリセンとやらもちょっと黙ってて。これ以上言うなら俺が相手をする。」
俺は刀を手を添えて言った。
それを見たと連れがにやけ顔で、
「ほー?この俺とやるってのかい?いいだろう。とことん痛めつけてやるよ。」
よし、持ってきたな。
幹部だから多少の剣術も習っているよな。
俺は人間じゃない。いや、人間だけど魔物だからな。そこらへんのやつと一緒にしないでほしい。
そうして、大臣セバス・ハリセンとアルダートユリウスの戦いが始まった。