4話ー10歳
あれから10年が経った。
俺は魔物だけど人間の姿になって人間と生活している。家はもちろんあの洞窟だ。
あと、豆知識だけど、この世界では魔物のほかに、モンスターがいる。
一見同じように感じるがちょっと違う。知恵ある行動をとるのが魔物で、そうでない行動をするのがモンスターだ。例を挙げると、魔物には、エルフやオーガ、ゴブリンなどが分類され、モンスターには、牛や馬などが挙げられる。そこには地球と同じで、食用として育てられているものもいる。
俺は今、父さんと二人で暮らしている。
残念なことに、母さんは俺が7才の時に病気で亡くなった。もともと体が弱く、寝込みがちだった。
その時はかなり悲しかった。
3年経った今だから落ち着いているが、あの時はかなり泣いた。
そして、ある時、父さんが衝撃的なことを言ってきた。
「アル、お前に言わないといけないことがある。3年前に母さんが死んで、それから言いにくくなって言えずにいたんだがな、俺は後、数年したら死ぬ。」
「え…なんで。」
「お前は俺が昔戦った奴からの呪いでここから動けないでいることは言ったよな。」
そう、父、破壊龍ヴェルハザードはその呪いのせいでここから何百年も動けないでいるのだ。
そのことを、1才くらいの時に、ハッハッハと笑って話していた。
笑い事じゃないだろと思いながらもその時はスルーしていた。
それが今になって何の関係があるのかわからなかった。
「実はなこの呪いは外からの魔力の吸収を遮断するのもある。そうなると体内の魔力が増えないから魔力が放出され続ける。体内の魔力がゼロになるとそいつは死ぬ。だから俺もいつかは死ぬ。だけど予定ではあと100年は生きる予定だった。」
この世界の魔力は色々と面倒だなと思いながら聞いた。
しかし、なぜ後100年も生きつづける予定が、一気に短くなったのだろう。
その答えはすぐに帰ってきた。
「この世界は子孫を残す時に、親のDNAと魔力を消費して子孫を残す。だが消費した魔力は数日経てば、周りの魔力を吸収して元に戻る。しかし俺の場合、魔力の吸収を遮断されているから 、それが不可能だ。だからなくなった魔力は元に戻らず、そのまま減りつづける。で、さっき言ったように子孫を残すには魔力を消費するから、あと100年分あった魔力を、お前のために消費したんだ。感謝しろよ?」
と長々と語ってくれた。
俺のお陰で寿命が短くなった訳だ。ありがたいのか申し訳ないのかわからない、不思議な気持ちになった。
しかし、1つ聞きたいことがあった。
そう、子孫の残し方である。人間ならば、あれをああして、ああすればできるはず。
でも今回は人間とドラゴンである。
やり方がわからない。
「でもさあ、どうやって子孫を残すの?人間同士ならなんとなく想像できるけど、人間とドラゴンだからね。」
「ん?だから言っただろう。子孫を残すにはDNAと魔力があればいいと。マリンのDNAと魔力、俺のDNAと魔力を特別な瓶に入れてしばらく待つ。すると卵ができる。で、それを大切に育てる。」
あ、そんなんでいいんだ。
イメージとかなり違ったけど、まあいいや。
と、考えるのを放置した。
「それと最後に一つ。お前にやってほしいことがある。この世界は魔物が人間に嫌われている。それは知ってるな。だから、お前にそれを無くしてほしい。本来人間と魔物は共存しないと先に進むことはできない。しかしこの状況だ。人間の力だけでは限度がある。いずれ技術が着いて行かなくなり崩壊する。それを食い止めることは俺にはできない。だから、お前にやってほしい。」
「…わかった。父さんのその望み、絶対に叶えて見せる。」
次の日、俺は複雑な気持ちのまま「ドラーシップ街」に行った。
ここは俺がいつも行っている街だ。食料や衣類を買ったりしている。
で、なんとここには剣の道場があるので俺はそこにも通っている。
ただ、日本とは違って、型にはまっていない。言い換えれば、非常に実践的な感じだ。それでも剣道経験者が初心者相手に負けるはずがないので、当然勝った。
あと、このドラーシップ街には俺が龍人だと知っている人が一人いる。
刀鍛冶のガバンさんだ。
ガバンさんはもともと母さんであるマリンと知り合いで、母さんがこの街で一番信用していた人物だから、母さんが言ったのだ。
その話を聞いたガバンさんはかなり驚いていたけど、なんとか理解してくれて俺のことも秘密にすると約束してくれた。
ガバンさんがお金の面で支えてくれている。
「おう、アル。どうした、少し元気がないみたいだが。」
「ちょっと父さんのことで色々あってね。」
「…そうか。俺もあまり首を突っ込まないけど、とりあえず今は元気でいろよ。」
と、いつも通りとはちょっと違う感じで話をして、道場に向かった。
道場に着いた。ここは俺が5才の頃から通っている。
そして、入った初日。俺は5才年上の先輩を倒した。
そりゃそうだろう。この世界では、はじめての剣道だけど、俺は前世で10年以上も竹刀を振ってきた。たかが数年やっただけの人に負けるはずがない。
ただ、この世界の剣道は日本の剣道とは違っていた。
日本の剣道は型があり、ルールがある。だが、この世界にはそれがない。かなり自由だ。30人くらいいるが一人一人の持ち方、攻め方が違う。
まあ、そりゃそうだろう。ただ相手に勝つだけなら、日本の剣道で事足りるが、この世界では自分の命がかかっている。負ければそれで終わり。
つまり、この世界の剣道はかなり実用的だ。
どちらが良いかと言われても分からないけど、俺も実践用に戦い方を工夫しないといけない。
そして、それも5年が経ってだいぶ改善された。
そこら辺の騎士なら俺でも勝てると、ここの先生からのお墨付きも貰っている。
今ではここの人気者だ。(ィェーィ)
いつも通り、道場の帰り道にガバンさんの家に寄った。そこで父さんのことを聞いてきた。
俺は道場に行く前に父さんが俺に言ったことをそのまま話した。
「そうか。もう、そこまでいったか。その話が本当ならお前はあと、数年で1人になる。それは大丈夫なのか?」
「分からないけど、多分大丈夫。親がいなくなっても俺はひとりじゃないから。それに、俺強いし。」
「お前はほんとに強いな。普通なら泣くところだぞ?まあいい。お前は特殊だからな、ハハ…。でも、強くなったって言ってもどれくらい強くなったんだ?」
「剣道に関しては先生のお墨付きを貰ってるし、能力に関してはどうなんだろう。最近ずっと見てないな。」
「そうか、じゃあ見てみればいいじゃないか。」
そだね、といい俺は自分のステータスを見た。
《アルダート・ユリウス》
所持スキル:奪取、龍人化
サブスキル:属性攻撃、属性耐性、属性化
種族:龍人
おお、なんか増えてる。でも、あんまり増えてないな。
サブスキルが3つ増えてるだけだ。
俺はこの増えた3つのスキルをそのままガバンさんに伝えた。
するとガバンさんはかなり驚いた。
「マジかよ!お前属性系スキルを持ってんのか!いや、でも、親が親だもんなー。納得しなくもないけど、スゲーよ!うん!」
「え?属性系スキル?なにそれ」
「お前知らねーのか?でも10才だからな。知らねーか。いいか、スキルってのは火炎系とか水流系だとかいろんな属性がある。それは一人1つと決まっているわけではなく、人によっては2つ3つ持っている者もいる。だけどな、属性系スキルはすべての属性が使えるスキル系統だ。だからお前の属性攻撃の場合、すべての属性による攻撃ができるということだ。しかも、そのスキルにも種類があってな、スキルによる攻撃、スキルに対する耐性、スキルの属性自体になれるのがある。で、お前はその3つの種類もあるから、実質、お前にできない技はないってことだ。」
おいおいマジかよ。いつの間にそんな凄いことになってたんだよ。
たしかにもらえるスキルは奪取で奪ってきたけど、そんなことになってたの?
自分のことだけどちょっと引く。
その日は今の話の後、ガバンさんの家で飯を食べてすぐに家に帰った。
父さんにこのことを伝えると、興味なさそうに答えた。
まあ、たしかに父さんも同じような感じだけど、そこはもうちょっと興味を持って欲しかった。
でも、父さんは俺にあるものをくれた。
刀だ。
鞘はないがかなり立派な刀だ。全体的に藍色っぽく、ところどころ白がある。
父さんが作ってくれたラらしいけどどうやってつくたんだろう。
聞いてみたけど、企業秘密だと言って断られた。
鞘に関しては、
「知り合いに鍛冶屋がいるだろう。そいつに作ってもらえ。」
と、最後は他人任せだ。
でも、これで俺も武器を手に入れた。
これからどんなに強い奴が来てもこれで倒してやる。
そして父さんの望みも叶えてやる。
ーおまけー
俺は父さんからもらった刀の鞘を作ってもらおうと、ガバンさんのところに頼みに行った。
「ガバンさーん。これの鞘って作れる?」
「は?お前剣なんか持ってたか?」
「いやー、父さんが作ってくれてさー。ただ、鞘は作れなかったみたいだから、作ってもらえって。」
「ふん、まあいい。俺に作れねえもんはねえ!完璧なものを作ってやるぜ。」
ー10分後ー
「こんなん無理だろー!これ切れ味良すぎるんだよ!なんでこんなにいいんだよ。普通の鞘じゃあ、仕舞っただけで鞘が切れる。なんで職人でもない奴がこんなん作れるんだよ。はあ。これは作るのに時間がかかる、しばらく借りるぞ。」
「あ、うん、頑張って…」