27話ー契約前夜
同盟を結ぶことが決定した次の日。王国とそれぞれの村が同盟を結んだことを宣言するために、今、王国に来ている。各村の代表者1名ずつ、計3名がが少しビクビクしながら王国の中を歩いている。俺はその後ろを歩いている。
前で一緒に歩けばいいじゃん、と思うかもしれないが、同盟を結んだ後は俺がいないから俺なしでこういうことに慣れていかないといけない。
3人とも無事城に着き、兵に案内された。その際に3人は一緒に固まっておびえていた。これを小柄な女の子がやっていたらかわいかったかもしれないが、おじいちゃんがやっていると何ともいえない感じになる。
やっとの思いでアロンのいる部屋に来た。
部屋についた時には3人とも疲れ切っていた。ソファーに座った瞬間、ぜえぜえと息を息を吐いていた。
疲れたのも無理もないけど、少しおびえすぎだと思う。
人が横を通るたびにビクッ!となって、話している人にビクッ!となって、しまいにはただの柱にもビクッ!となっていた。
ソファーに座った3人になぜあそこまでおびえる必要があるのか聞いてみた。
「だ、だって、わしら、あんなに人間がいるのに慣れてないし、息子たちと違ってわしら弱いし、しかもわしらは今まで同盟を結ぶことを拒んどったんじゃ。相手がどんな目で見ているのか分かったもんじゃない」
「しかもじゃ。わしらはこんな豪華な城とは無縁の生活をしてきた。あの村からいきなりこっちに来て落ち着いていられるか。ああ、早く木に囲まれたい」
「な、何よりじゃ。こ、ここには階段がある」
最後は真顔で言われた。ほかの2人も「確かに確かに」と共感している。
最初にオクレが言っていたことはわかる。2人目のエルフの村の村長のフリブの言っていたこともわかる。
ただ、ドラゴニュートの村の村長のドゥーは何を言っているんだ。
あんたらは魔物だろ。
しかもこの城の階段はそこまで急ではない。何より、3人ともここに来るときに通った坂道はおそらくこの城の階段よりも急だ。その時はスタスタ歩いていた。
魔物のおじいちゃんはわからない。
疲れているおじいちゃんたちを見てアロンは使用人に水を持ってこさせた。
使用人が水を持ってくると1つずつ机に置いた。左手にお盆、右手で机に置く感じだ。そうすると当然水は一つずつでしか置けない。1つ置くとそれを勢いよく飲み、2つ目を置く前に飲みほした。3つ目を置く時もそうだ。おじいちゃんなのに飲むスピードがえげつない。
水を飲んで落ち着いたおじいちゃん達を見てアロンが向かい側の席に座った。
「昨日も言ったが昨日書いてもらったのは同盟を約束するためのものだ。で、今からこの紙にサインしてもらう」
そういってアロンが取り出したのは、特殊な紙とインクで書かれた契約書だ。
この紙に名前ないしは団体名を書けば、この紙に書かれていることに該当するもの同士がこの紙を介してつなぐわけだ。俺とアロンがやった「永遠の約束」は直接つなぐから「破ると死ぬ」ということが起こるが、この同盟に関しては一切ない。
じゃあ、何のために結ぶかというと、同盟に関連する人は直接話を聞いていなくても同盟の内容を知ることができるからだ。
口だけでもできなくはないが、そうすると知らなかったという人が出てくる。そういうことをなくすためにこうした形をとっている。
あともう1つある。
もし、同盟相手が敵に襲われている場合、それを助けること自体は自由だが、口だけで交わした同盟だと同盟を結んだという証拠がなく、そこに贔屓していると捉えられる。すると周りの関係を持っている町などからから攻撃されるかもしれない。
そういったことを防ぐために紙にして書いているというわけだ。
「本当にこれに書いたら同盟を結んだことになるんじゃよな?」
「うむ、ただし、書くときは同盟内容をちゃんと読んでから書くのじゃぞ。あとで、不備があったなんて言われたら面倒じゃからな」
3人は大きく目を開いて同盟の契約事項を読んだ。
「こ、この内容でいいと思います」
「おもいます、ではだめじゃ。ちゃんと決めろ」
「この内容でいいです!」
アロンの確認方法が若干脅迫じみていたから一応俺も確認してみた。特に不備はなかったから「このままでいいんじゃない?」と言った。
「じゃ、このペンとインクで下の欄にそれぞれ村の名前をかけ」
「名前?わしらの村に名前はないんじゃが…」
静まりかえる部屋。
固まる俺とアロン。
首をかしげるおじいちゃん。
「ま、まじか。どうすんのアロン」
「うーん。これは想定外じゃ。確かに聞いたことなかったが、村の名前がないとは」
再び静かになる部屋。
そこで俺はいいアイデアが浮かんだ。
「じゃあ、今から名前決めたら?」
「じゃがそれで同盟の効力が村の人たちに効くとは限らんじゃろう」
「その効力って関係する人全員なんでしょ?だったら今名前を決めても、村の村長がこのおじいちゃん達で、みんなはおじいちゃんたちを村長としている。この関係が崩れるわけじゃないから今決めても大丈夫なんじゃないの?しかも結んだら内容がみんなに行き届くんだから」
「なるほどな。じゃあ村の名前は何にする?」
今の説明が理解できなかったようでポカンとしていた。そしていきなり話を振られて我に返った。
アロンがもう一度質問するとおじいちゃんたちは困った様子だった。
「それなら俺が決めてあげるよ。オノ村とキノ村とエノ村。これでいいんじゃない」
本当に気に入ったのか、考えるのがめんどくさかったのかわからないけど、とりあえず納得してくれた。
そして3人は今の俺が言った村の名前を契約書に書いた。




