11話ー到着
ロアンクルシル王国と戦って、数日たった。みんな、すっかりいつも通りに戻っていた。そして俺は今日、ロアンクルシル王国に行こう思った。前からみんなにも言っていたことだから、誰も何も言わなかった。
ただ、ひとつ心配事があった。
それは、俺が行っている間にロアンクルシル王国がまた、せめて来ないかどうかだ。
流石にあれだけやれば再び来ることはないとは思うが、これに関しては町長が、
「なーに、心配いらん。お主はお主のするべきことをしてくればいいんじゃよ。」
と、言ってくれた。おかげで俺の心配はなくなり、何も気にせずにロアンクルシル王国に行くことができる。
次の日、俺はみんなに見送られながら街を出た。
一方で、ハリセン達5人は国王に今回のことを報告しに来ていた。圧倒的な力の差、1度無くなったはずの腕が元通りに戻ったことを。
その報告を聞き終えるとロマノフ王は机を叩き割った。
「お前達の恥ずかしい話はもう終わりか?」
「は、はい。以上が今回の遠征での出来事となります。」
ハリセンが代表して答えたが、他の4人は頭を真っ白にして冷や汗を流しながら待っていた。
「ひとつ問おう。お前はバーンの腕が1度吹き飛んだと言ったよな。それは事実か、バーン。」
「は、は、はい!!じ、事実で、ございま、す。」
軍の訓練であまりロマノフ王と関わらないバーンはかなり怒っているロマノフ王にビビっていた。
「どのようにしてそれを行ったのか。それは分かっているのか。」
「いえ、詳しくは。」
「そういえば、あの子、どうやって戻したのか言ってたわよね。ウォント、何か覚えてないの?」
冷や汗を流しながらも、平然をよそうリーナ。そして、いきなり話題をふっかけられて戸惑うウォント。
「え!い、いや申し訳ありませんが、あの時は少々動揺しておりまして、やつの言っていた内容は存じ上げません。」
「そうか。ほかに何か覚えてないのか?」
『…』
何も答えることが出来ないまま、黙り込む5人。すると突然、何も考えていなさそうなレスが口を開いた。
「…そういえば、今度そっちに行くからな、とか言っていたような言ってないような…。」
「何?それは本当か。」
4人はそれぞれ他の人を見て、自分の記憶を探り始めた。リーナ、バーン、ウォントは何も覚えていなかったようだけど、ハリセンは思い出したようだった。
「あ!そういえば去り際にそのようなことを言っていた気がします。」
ハリセンの突然の声にびっくりしていた3人を置いて、ロマノフ王は、「そうか。では、向こうから、こちらに来るのか。」と言って、何やら考えていた。
考えている間、5人は一切動かず、全員の息の音が聞こえるくらい、静かにしていた。
「では、これから来るやつに備えて準備をしろ!国民にこのことを絶対に知らせるな。使う兵も最小限に抑え、備えろ。いいな!」
『はは!!』
ロマノフ王の言葉を聞き終えると、5人はすぐに行動に移した。
まずは兵を100人ほど選び、その兵をリーダーとして班を組み、城下町の周りを中心に警備させた。情報の漏えいを防ぐために、兵には一切事情を説明しなかった。国民にこのことを知られてしまうと、国全体が混乱する。
兵には、軍事事項を話すことを禁じているが、完璧ではない。そのため、今回負けたことは広まっているかもしれないが、その相手がここに来るとなると、話は別だ。我がロアンクルシル王国に勝つことができる相手がここに来る。すなわち、この国が崩壊するかもしれない。そうなるとこの国が混乱するのは目に見えている。
そうして、ロアンクルシル王国は国の警備を強化し、ユリウスを待った。
街を出て1時間後。街はすっかり見えなくなり、目の前には森があった。
ここら辺でいっかー。ロアンクルシル王国までどのくらいあるのかわかんないし、飛んで行こ。で、街や村があったらそこに聞いて行けばいっか。
実際にドラーシップ街とロアンクルシル王国の間にあるギーラ町からドラーシップ街まで走って一晩かかるくらいだから、結構あるんだよな。
俺はここで空を飛んだ。
俺は大学生の頃の俺に言いたい。後20年ほどしたら自分は空を飛べるようになっているよ、と。
羽がなくてもスキルのお陰で空を飛ぶことができるから、空を飛んで前に進むこと以外に考えなくていい。なんて便利なんだ。スキルという概念が地球にもあったらなー。
そんなことを考えながら適当に飛んでいた。時速150kmくらいで。
しばらく飛んでいると、街らしきものがあった。俺は減速して地上に降りた。街の近くに行って、適当に歩いていた人に声をかけてみた。
「あのー、ここはなんていうところですか?」
「ん?ここはギーラ町だよ。」
「ありがとうございます。」
おお、あのギーラ町か。んー、ドラーシップ街とあんまり変わんないな。酒屋があり、鍛冶屋がありと、ごく一般的な町だ。町を一通り見終わると、さっきとは違う人にロアンクルシル王国の方角を聞いた。一瞬へんな目で見られたけど気にしない。
で、俺はまたひと気の無い場所で飛んだ。
そういったことを繰り返すこと5時間。
俺はついにそれらしい王国を見つけた。中心には大きな城があり、その周りに家々がある。さらにその周りには畑が広がっている。
どうしよっか。このまま俺が堂々と入っていってもいいんだけど、街の中で騒がれるのは面倒だしなー。よし迎えにきてもらおう。相手をびっくりさせてな。
ユリウスは自分の魔力を思いっきり放出した。
10分ほど前のロアンクルシル王国。
ハリセンはすることがなかった。
ウォントとバーンは兵を動かし、リーナは司法の仕事をして、レスは高台から弓を構えて戦闘準備をしている。私は何を?とにかくすることが無い。今の兵の状況でも見にいくか。
部屋から出てウォントとバーンの元に行こうとして、少し歩く。
ゾク!!
なんだなんだこの魔力は、とにかく対処しなければ。
走って二人の元に行き。ハリセンはウォントに5人の兵を連れて見にいくように言った。抵抗をしたウォントだったが2人はわかっていた。この魔力の正体はあいつだ。ウォントは渋々引き受けた。
一方でハリセンは国王に知らせると、「私も行こう」と言って、国王と城の庭に出た。
5分ほどすると城の方から6人来た。
そのうちの1人は見覚えがある。
そいつは俺に会うなりすぐに「一緒に来い。国王の元に連れて行く。」と言ってきた。
「わかってるじゃん。」
「うるさい。国王がお前のことを読んでいるというだけだ。国内で暴れるなよ。」
「そんな人聞きの悪こと言わないでよ。そんなことはしないよ。」
つられて歩くこと30分少々。
俺は大きな城の門の前まで来ていた。端にいる門番らしき人に幹部さんが声をかけると門が開いた。
そしてそこにはいかにも国王感満載の人が立っていた。俺はすぐにわかった。
この人は、今までのどの人よりも強い。




