10話ー過去
戦いが終わって、街に帰るとみんなが外に出ていた。みんなは俺を見ていた。
町長が代表して前に出てきた。その目は勝てて嬉しいという目ではなく、いろんなことが複雑に混ざってどうすればいいかわからない目をしていた。町長が「勝てたのか?」と聞いてきた。
うんと頷く俺を見て「そうかそうか」と言い、また黙った。しばらく沈黙が続いた。
みんなはもうわかってる。たかだか1キロメートルちょっとの距離だが、戦いの余波はここまでくる。あの状況で勝てたとなると、なんらかのスキルを使って撃退した。と言うことは、ユリウスが人間ではない可能性が高いということだ。
でも、みんなは迷っていた。魔物は全て危険だ。ユリウスも魔物ならそうなる。でも、ユリウスとは今まで15年間一緒に過ごしてきたという事実がある。それをいきなり、はい忘れましたなんてできない。でもユリウスが魔物なら危険だ。でも、ユリウスとは。でも、でも、でも。
そういった葛藤が心の中でずっと続いた。
俺はなんとかこの沈黙をやめさせようと必死に言葉を探した。しかしなにも見つからなかった。すると俺は無意識に聞いていた。
「俺、どうすればいい?」
その言葉には誰も返事をすることがてきない。また、沈黙が続いた。
「お主は何者なんじゃ?」
さっきの俺の質問に答えてないし、質問を質問で返されて、正直戸惑ったが、俺は落ち着いた。まずは自分の姿を見てもらおうと、俺は龍人化した姿を見せた。そして語り出した。俺がどこに生まれ、誰に育ててもらってどうやって暮らしたかを。
それを聞いているみんなはいつになく真剣だった。真剣に俺の話を聞いていた。一言の漏れもないように。
そのあと町長は俺に「この街の、ドラーシップという名前の由来を知っているか」と聞いた。
当然知らない俺は知らないと答えた。
「この街の意味は一般的には『龍の潜む街』という。じゃが本当は違う。これはワシら老人しか知らん話じゃがの、この街の本当は『龍を崇める街』という意味じゃ。龍は危険という意識が強いために本当の意味を隠さなければいけなかったが、この街でひっそりを伝えてきた。そして、なぜ龍を崇めるのかというとな、その昔、この街が街とはいえぬほどの頃、ここらには魔物がうようよいた。それにみんなは立ち向かったが限界がきた。もうここを手放さなくてはならないという時に、大きな龍が現れた。後からわかったことじゃが、その龍は破壊龍ヴェルハザード様だということがわかった。この街の魔物を一掃した。それからこの街には龍がいるという噂が広がり、魔物は来なくなった。それからというもの、ヴェルハザード様は封印されて、二度と姿を見せることはなかった。しかし、今、また見ることができてワシは嬉しいぞ。」
町長。やばい、かなり嬉しい。
よく人間は逆のことをされるとを嫌う。自分の思い通りにならないと苛立つように。しかし、今回のような逆のことはとてもいいものだな。
でも、町長の口から父さんの名前が出たのはびっくりした。
父さんのいた洞窟からここまで結構距離が短かったけど、今の話も関係あるのかな。まあ、今となってはもう、わからないことだけど。
町長が話終えると、だんだんと人が出てきた。その顔はまだわからないという表情だった。
「みんな!今はわからないことがあるかもしれない。魔物が危険という考えはよく理解できる。今まで一緒に過ごしてきたからそれくらいはわかる。でもこれだけは信じてくれ!俺の目的は父さんとの約束、魔物と人間が共存できるようにすることだ。みんなに今の俺を分かれとは言わないけど、俺が今言ったことは本当だ。」
言い切った俺はすごく不安だった。町長は許してくれても、ここのみんなが出て行けと言ったら出ていくしかない。何を言われても覚悟はできている。
しかし、そんな考えは杞憂に終わった。
「今まで通り、ふつうに接してくれていいよ」
そう言ってくれたのは、酒屋のタジンさんだ。それに続くように「そうだ」という声が聞こえた。俺は嬉しくて涙が出てしまった。
嬉し涙なんて初めて出た。まだ15才だから涙腺が緩んでいたのかもしれない。それでも嬉しいことには変わりない。
そうやって喜んでいると、「でもよ、魔族はどうすんだ?」という声が聞こえた。
やっぱりいるの?そういうの。
父さんからは魔族については何も言わなかったからそのことに関する知識はゼロだ。ここは素直に聞こう。
「えーと、魔族って何?」
「え?知らねえの?」
ガバンさんが驚いたように聞き返したが、教えてくれた。
「魔族っていうのはな、俺達が住むここ、ユージア大陸とは別にある、通称『暗黒大陸』だ。そこに住むヤツらのことを魔族という。人間と魔族は対立の関係にあってかなり昔に人魔戦争があったらしい。けど、こ1000年位はないな。お前がもし、本当に人間と魔物の共存を望んでいるのなら、魔族を倒さないといけなくなるな。」
うへー。やっぱりそうなるのかー。分かってはいたけど、めんどくさいな。まあ、やるけどね。
うーんでも、どうしよう。ここだけの情報だと、限界がある。もっと情報がほしい。
あ、そうだ。ロアンクルシルに行けばいいじゃん。どうせ行こうとは思ってたし、ついでに魔族のことも聞けばね。それがいい。そうしよう。
そうしてその場は終わり、みんなは引っ張っていたゴムを一気に緩めた。
俺も再び、ガバンさんの家に入ることが出来た。




