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BFDX  作者: 姫
20/24

それぞれの新しい生活

鏡でコーデをチェックする。

白のブラウスにベージュのパンツ。

うん、おかしくないね。

メイクもバッチリだし。

最後に手で髪を整える。

そしてカーディガンを羽織って薬を飲んでからバッグを持って

玄関に向かった。

真新しいヒールのあるパンプス、それを履いて悠弥は颯爽と家を出た。

途中、ガラス越しに移った自分をもう一度確認した。

身体はどうあれ、見た目は完全に女だ。

更に自信を強めて歩き出した。


グレーのトップスに白のスカート、その上にジャケットを着て

バッグを持った。

玄関に向かう途中、一度戻って鏡で確認する。

ちょっと甘いかな…でもいいよね、わたし女の子だし!

尚は鼻歌を歌いながら、後ろにリボンが付いている可愛いパンプスを履いて家を出た。

今までで一番足取りが軽い気がする。

身も心も女になったのが影響していて、尚は自信に満ち溢れていた。


もうすぐ会社が見えるところで、未来が歩いているのを発見して悠弥は駆け寄った。

「未来、おはよ」

未来は一瞬誰かわからないような反応をしてから「あっ」と声を上げた。

「悠!髪切ったんだ、それにその恰好…この女の子誰だろうと思ったよ」

「変じゃない?」

「ちっとも!そっかぁ、悠もやっとレディースで出勤だ。それにしても髪型可愛い!わたしも切りっぱなしボブにしようかな」

「ありがと、未来も似合いそうだよね」

そんな会話をしながら並んで歩いてビルに入る。

すると、今度は正面から安原が歩いてきた。

悠はこないだのことがあってから、安原が大嫌いだった。

その安原はこっちに気づいたが、未来のほうを見て軽く頭をさげて、

悠弥には無反応だった。

「あいつさ、絶対に悠のこと気づいてなかったよ」

「やっぱりそう思う?」

「だって悠、前の面影なさすぎるもん」

それを聞いて、安心する。

もうオカマなどと言われることもないし、堂々と女でいられる。

悠弥は胸を張って歩いた。


「おはようございます」

いつになく尚は機嫌がいい。

「おはよう、尚。なんか楽しそうだね」

志穂は間近で尚を見てなんか違うと思った。

胸が大きくなってる?ううん、それだけじゃない…なんだろ、まさか…

「尚、ひょっとして…」

「うん!昨日の朝、ついにね」

とうとう身体まで本当の女になったんだ…

もう絶対に元に戻れないよね…

しかし志穂はすぐに気を取り直した。

わたしは決めたんだ、2人にはずっと女でいてもらうって!

「よかったね、尚!おめでとう!!」

「ありがとう、志穂~」

尚が嬉しそうに抱きついてくる。

その感触はまさしく女の子だ。

2人でふざけていたら、七瀬と麻美と朱里もやってくる。

尚がついに身体も女になってことを伝えると、3人も大はしゃぎして喜んでいた。


悠弥と未来がフロアに入る。

すると尚を中心にみんなが盛り上がっているのが見えた。

「おはようございます、どうしたんですか?」

志穂が声をかけ、朱里が嬉しそうな顔で振り返った。

「聞いてよ、未来ちゃん、悠ちゃ…ん、え??」

今度は悠弥を見て、志穂を除いたみんなが一斉に驚いた。

昨日一緒に買い物に行った志穂だけがニコニコしている。

「今日から女の子で出勤することにしました」

「可愛い!」思わず麻美が声を上げる。

みんなも一緒になって「可愛い」と言ってくれて、悠弥は上機嫌だった。

「嬉しいことって重なるもんだね」

七瀬の言葉に未来が反応する。

「他にも何かあったんですか?」

すると、朱里が尚をつついた。

悠弥は尚を見て、いつもと雰囲気が違うのを察した。

尚は照れ臭そうに言ってきた。

「身体がついに女になったの」

それを聞いた途端、未来が「やった!」と大声を上げた。

悠弥も「よかったね」と声をかけたが、一気に心の中が暗くなった。

尚、身体も女になったんだ…わたしだけ違う…

まるで孤立していたときのような心境だった。

それにいち早く気づいたのは志穂だった。

「悠もすぐに尚と同じになるから大丈夫だよ」

「だといいけど…」

そんな保証はどこにもない。

だって普通に考えれば男が女の身体になることなんてないもん。

尚だけきっと特別だったんだよ…

なんだか自分自身がみじめに感じる…

「悠ちゃん、すごく可愛い」

後ろから声が聞こえたので振り向いたら、いつの間にか綾がいた。

「身体なんて関係ないよ。悠ちゃんはわたしたちの大事な仲間だし、立派な女の子なんだから変なこと気にしないの。それに志穂ちゃんが言ったように、悠ちゃんもきっと女の身体になるから」

「綾さん…」

みんなの顔を見たら、優しく微笑んでくれていた。

いつもと同じ顔をしている…

前の孤立していた頃のような顔じゃない…

「みんな、ありがとう…」

悠弥は涙を流しながらお礼を言った。

「ちょっと、なんで泣くの。もう、悠ちゃん泣き虫なんだから」

七瀬が頭を撫でると、みんなが笑い、悠弥も泣きながら一緒に笑っていた。

「ところで志穂ちゃん、ちょっといいかな」

綾が志穂を呼び、2人は会議室の中へ入っていった。

「なんか最近よく会議室で話してますよね。七瀬さんも一緒に」

尚に聞かれて七瀬はドキッとした。

なんとか誤魔化さないと…

「志穂ちゃん密かに考えているアイデアがあってね、それを綾さんに相談してるの。わたしはたまたま居合わせちゃったから一緒に聞いただけだよ」

「別にコソコソしなくてもいいのに…」

「まあ、まだ全然形になってないから…それより仕事しよ!尚ちゃんたちも頑張ってアイデア出さないと志穂ちゃんに抜かれちゃうぞ」

はっぱをかけると悠弥、尚、未来の3人は「はーい」と素直に返事をして仕事を始めた。

それを見て七瀬はホッとした。

綾さん、決心したんだね。

わたしも同じ気持ちです。

ごめんね、志穂ちゃん…約束破って。


「志穂ちゃん、わたし謝らないといけないことがあるの」

いつになく綾が神妙な顔をしている。

そしてこれから話すことが志穂にはわかっていた。

「悠ちゃんと尚ちゃんのことなんだけどね…」

「元に戻すのをやめるっていうんですよね」

綾さんを謝らせてはいけない。

なぜならわたしも同罪になることを選んだからだ。

「わたし、綾さんやみんなと一緒で、今の悠と尚が大好きです…自覚がないまま女になって幸せなら、このままでいいと思います」

「志穂ちゃん…」

「そもそも、昨日悠と一緒に買い物行って、服とか選んだのわたしなんですよ!」

ちょっと得気に言ったら、綾が笑い出した。

「ちょっとそんな気もしてたんだ。服の雰囲気が志穂ちゃんっぽいから」

「えー、ちゃんと悠に似合うのを選んだんですよ」

そういいながら2人は笑っていた。

そしてややあってから綾が言った。

「悠ちゃんの身体もちゃんと女の子にしてあげようね」

「はい!」

宣伝部の気持ちは一つになった。

そこでいきなりドアが開いて七瀬が走ってきた。

「綾ちゃんどうしたの?」

「社長が帰ってきたみたいで、綾さんを呼んでるんです!」

やっと帰ってきたんだ…

綾の表情が引き締まった。

元に戻すことはしない。

しかし、あの薬が一体なんなのか、そしてなぜ悠弥と尚が選ばれたのか知る必要がある。

何が何でも聞き出して見せる。

強い決心で「いってくるね」と声をかけて綾は会議室を出て行った。

「綾さん、大丈夫かな…」

不安そうな志穂の肩に七瀬がポンっと手を置いた。

「綾さんなら大丈夫だよ。わたしたちの頼れる一番の先輩だから」

七瀬は信じてるといわんばかりの目でしっかりと綾の背中を見つめていた。

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