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BFDX  作者: 姫
12/24

志穂の疑問

志穂は尚と未来と3人でランチへ来ていた。

最近は本当に仲良く、友達のように行動することが多い。

「七瀬さんとアイツ何があったんだろう?」

「そういえば昨日も遅くまで2人で仕事してたみたいだし」

尚も完全に女性目線で一緒になって話に加わっている。

志穂はパスタをフォークでクルクルまわしながら、さっきの悠弥のことを考えていた。

尚がいるから言わないけど…どことなく移動してきた頃の尚に雰囲気が似てるんだよね。

あの急な変化はなんだろう?

尚の場合は、実は内面が女の子だったと思っている。

けど悠弥は絶対に違う。

七瀬さんは理由を知っているはずだ。

じゃないとあんな風に仲良くなるなんて考えられない。

「志穂?」

「え?」

「どうしたの、ボーっとして」

「う、ううん。何でもない!」

「ならいいけど。それよりさ、今度買い物行きたいから付き合ってよ」

尚が楽しそうに言ってくる。

「うん」と返事をしてから尚を見ると、増々可愛くなっているような気がした。

胸が膨らんできたと言っていた。

確かにプールの時に見た尚の胸は膨らんでいた。

男の胸ではない。

ホルモンもやらずにそんなこと起こるんだろうか…

尚、それに悠弥…考えてみれば、なぜこの二人は宣伝部へ急に移動になったんだ?

確か最初の説明では、男性の考えも取り入れたいと言っていたのに、

綾さんたちは悠弥の発想をことごとく却下した。

そしてパワハラで追い込んだ。

まるで男を毛嫌いするように…

逆に内面が女性だったからなのか、尚はとても可愛がられていた。

けど、尚も最初はそこまで女っぽくはなかった気がする。

自然に今のようになっていったからそこまで気にしていなかったけど、

冷静に考えると不自然だ。

まるで仕組まれていたんじゃ…尚が女になるように。

そして、悠弥も最終的に尚みたいになる気がする。

考えてもらちが明かないので、志穂は直接聞いてみようと考えていた。


会社に戻ると、さっきと同じように七瀬と悠弥は一緒に仕事をしている。

まずは2人を引き離さないと。

「七瀬さん、ちょっと相談したいことがあるんですけど」

「わたしでよければ。どうしたの?」

「できれば2人がいいんですけど…」

すると悠弥が「僕のことは気にしないで川島さんの相談に乗ってあげてください」

と言ってくれた。

やっぱり今までの悠弥とは絶対に違う。

「じゃあちょっと一人で頑張っててね」

七瀬は立ち上がり、志穂と一緒に会議室へ入った。

「で、どうしたの?わたしと悠ちゃんのこと?」

「それと尚のことです」

「尚ちゃんがどうかしたの?」

「尚は…なんで女になったんですか?」

「尚ちゃんの中身が女の子だったからでしょ。それは志穂ちゃんだって知ってることじゃない」

あくまでもシラを切るつもりだ。

会社の先輩としても女性としても七瀬のことは尊敬しているが、

今だけは関係ない。

絶対に企みを暴いてみせる。

「じゃあ今の田口は何ですか?こないだまでと全然違うじゃないですか。まるで前の尚みたい」

「ここで仕事して、わたしたちと接しているうちに丸くなって女性の気持ちがわかるようになってきたんだよ」

そんなはずない。

あんなひどい扱いをしておいて、普通なら丸くなるどころか憎悪が増すはずだ。

「パワハラしておいて丸くなりますか、普通」

「パワハラだなんて…確かにちょっと厳しくはしたけど」

「完全なパワハラです。わたしも調子に乗ってやりすぎたって後悔しています。なんで田口は急に変わったんですか?尚は女になったんですか?いえ、女になるように仕向けたんですか?正直に話してください!」

すると、ドアが開いて綾が中に入ってきた。

「いいよ七瀬ちゃん、わたしが話す」

「綾さん、いいんですか?」

「ここまでバレてたら隠せないからね」

どうやら観念したらしい。

「ただし、誰にも言わないように。特に本人たちにはね」

志穂に念を押してから、話す前に七瀬に確認した。

「悠ちゃんは薬飲んでたの?」

「はい、いつの間にか飲み始めていました」

「どんな感じになった?」

「飲み始めの頃の尚ちゃん…ううん、すごく優しくておっとりした感じになってます。きっと今はわたしたちの輪に加わりたくてしかたないんじゃないかな。誰かと一緒じゃないと嫌なタイプの女の子いるじゃないですか。それに近い感じのタイプになりつつあります」

「そう…」

このやり取りを聞いていて、

想像していたことよりも大きな陰謀のようなものが背後にあるのを悟った。

しかし、もう遅い。

志穂は覚悟を決めて話を聞いた。

「志穂ちゃん、わたしはシャーロットフランシスをコスメ業界の1位にしたいの。トップクラスじゃなくて明確な1位に。そのためには宣伝部の人員と予算の上乗せが確実に必要だった。だから社長に何度も直訴したら、ある条件を出されたの。薬剤部が開発した新製品を新入社員を使って実験してほしいって。選ばれたのが悠ちゃんと尚ちゃん。この2人を宣伝部へ移動させて、薬を飲ませて経過を報告ほしいって。そうすれば来年度に人員と予算を倍増してくれるって言われたから、それに乗っちゃったの…」

まるで後悔しているような口ぶりだ。

「その薬って…」

「説明では、環境によって考え方が変わる薬って言ってた。例えば、不真面目な人がこの薬を毎日飲んで、真面目な人しかいない集団で生活していると、それに影響されて真面目になるって」

「じゃあ尚ちゃんが女になったり、田口が変わったのって…」

「ここは女性しかいないし、扱っているのがコスメでしょ。だからあんな風になったんだと思う。もっとも尚ちゃんは真面目に最初から飲んでいたから、すぐに効果が出たけど、悠ちゃんは全然飲んでなくて、最近になってやっと飲み始めたみたい」

ムチャクチャだ。

そういう薬ってわかっていれば、2人がこういう風になるなんて目に見えているじゃない。

志穂は怒りがこみ上げていた。

「2人の人生を何だと思ってるんですか!普通の男の子だったのに薬の実験で無意識に女にさせられて」

志穂が怒鳴りながら言うと、今度は綾が怒鳴った。

「違うの!この薬は中和剤がちゃんとあって、1年で元に戻すって言われたの。だからわたしは承諾した。なのに…なぜか尚ちゃんが身体も女性になりつつあって…意味が分からなくて」

綾は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

「なんでこんなことになったんだろう…もし元に戻らなかったら…」

綾は明らかに涙声になっていた。

自分でもどうしていいのかわからないのだ。

「指示した社長はなんて…」

「それが今は海外出張にいっていて…その間に増々尚ちゃんの身体が女性化したら…」

綾も被害者だ。

黒幕はすべて社長ということになる。

そこへずっと黙っていた七瀬が口を開いた。

「そういうことだったの。本当に2人には申し訳ないことをしたと思う。けど今の尚ちゃんは内面は完全に女の子…身体もなりつつあるけど…そして悠ちゃんも女の子になりつつある。だったらわたしたちはあの子たちのために、女の子として接してあげるのが一番だと思うの」

「一番って…薬のせいじゃないですか!」

「そうだよ、本当にあとで元に戻るのか…今は半信半疑だけど、少なくても2人は今は女になりたい、なれてよかったと心から思ってるの。考えてみて、尚ちゃんに明日から男のスーツで出勤しろ、メイク禁止、そんなこと言える?悠ちゃんに女みたいに女々しくするな、前みたいに男らしくしろ、なんて言える?わたしには言えない。そんなことしたら2人がショックを受けて悲しむのがわかっているから…だったら、いっそのこと女の子を楽しんでもらったほうが少なくとも今の2人には幸せなんだよ。元に戻るまでは」

七瀬が言うことはもっともかもしれない。

自覚がないまま女になったり、なりつつあるのなら、

それを全うさせたほうが間違いなく本人のためだ。

「わかりました。尚とは今まで通り、田口…悠ちゃんには女の子だと思って接します。そのかわり、必ず社長にかけあって元に戻してあげてください」

綾は顔を上げて力強く、こう答えた。

「もちろん、約束する!」

それが聞けたので、志穂はもうこれ以上は聞かないことにした。

「七瀬さん、今日はわたしが悠ちゃんと仕事しますね」

被害者の悠弥のために今できること、それは悠弥を女の子にしてあげることだ。

志穂はそれを全力で手伝うと決めていた。

会議室を後にし、悠弥のもとへ向かった。

「仕事は順調?悠」

「え?悠って…」

いきなり名前で呼ばれたので、悠は戸惑っている。

「わたしたち同期でしょ。尚のことは尚って呼んでるから、悠のことも悠って呼ぶことにしたの。だから悠もわたしのこと志穂って呼んで」

悠弥はオドオドしながら聞き返してきた。

「いいの…?本当にそう呼んでも…」

「もちろん!今までゴメンね。これからは仲良くしよう」

すると悠弥の表情がみるみる笑顔に変わっていく。

「うん!志穂」

本当に女の子みたいな表情…

よし、少なくとも今は立派な女の子になるようにしてあげるからね、悠!

志穂はまるで友達のように接し、悠弥は終始ニコニコしていた。

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