どういうこと?
金曜の朝、今日は仕事後にナイトプールへ行く日だ。
尚は着替えていたら乳首に痛みを感じた。
なんだろう…
服を脱ぎ、鏡で見てみると思わず驚いてしまった。
「少し胸が膨らんでる…それに乳首も大きくなっている気がする…」
そして最近では忌々しいものとしか思っていない下のものを見てみると
以前よりも小さくなっている気がした。
「ひょっとして…身体も女の子になってきてる…?」
嬉しさがこみ上げてきて尚ははしゃいでしまった。
そして支度をして最後に毎日欠かさず飲んでいる薬を飲んでから出勤した。
仕事嫌だな…鬱になりそうだ…
そんなことを考えながら悠弥は支度をしていた。
そういえば今日はみんなでナイトプールっていってたっけ?
俺だけのけ者だもんな、まあ男だから仕方ないけど。
そして錠剤を手の上に置き、水で薬を飲みこんだ。
あれから悠弥は毎日薬を飲んでいた。
「さて、行くかな…」
悠弥はトボトボとした感じで会社に向かった。
職場に着くと、いつも通り雑用を押し付けられる。
「これやっておいて」
「はい…」
ここ数日の悠弥は素直だった。
なぜか反抗的な態度を取る気になれなかったのだ。
仕方ないよね、俺はみんなみたいに仕事できないから。
あと少しで終わるというところで尚と志穂と未来が楽しそうに
会話をしながらお昼を食べているのが視界に入った。
なんかみんな楽しそうでいいな…
特に今日の尚はやけに明るい。
佐々木は女になって楽しそうだな…
はじけるような笑顔を見てどことなく羨ましく思え、それでいて眩しかった。
「ちょっと、仕事終わったの?」
いつの間にか七瀬が隣に立っていた。
「ご、ごめんなさい…まだです…」
「さっさと終わらせてよね」
「は、はい…」
七瀬はこの悠弥の反応に違和感があった。
「やけに素直じゃない」
「そうですか…?俺、こんなことくらいしか仕事できないから…」
「そうね」と言い、七瀬は首を傾げながら歩いて行った。
そして夕方になり、みんながナイトプールへ行く支度をしていた。
悠弥はほかの仕事が終わらないので、一人残って仕事を続ける。
仮に終わっていても誘われることなどないので関係ないが、
最近はこの孤立がとても寂しかった。
「じゃあ行きましょう」
綾がそういうと「はーい」と返事をしてみんなで楽しそうに出ていく姿を
悠弥はジッと見つめていた。
尚はみんなと一緒に女子更衣室へ入っていた。
元々スカートだったので、スカートを脱がずに水着のパンツを履き、さらに水着のスカートを履いてから洋服のスカートを脱いだ。
これならまったく怪しまれない。
問題は上半身だ。
昨日までの悠弥だったらコソコソと見えないように着替えていただろう。
だが今は違う。
まだおっぱいと呼べるほど大きくはないが、膨らみは確かにある。
胸の小さな女性ならこれくらいの人もいる。
綾をはじめ、みんな裸になって胸をさらけ出しながら着替えているので
悠弥も上半身を裸になった。
あまりにも尚が隣で堂々と着替えていたので麻美が少し不安になりながら
自分の身体で死角を作ろうとしたら思わず「えっ」と声を上げてしまった。
「尚ちゃん…その胸…」
「朝起きたら膨らんでたんです」
嬉しそうに言っているが、それを聞いたみんなが驚いていた。
綾は慌てて尚のところへ駆け寄り、胸を凝視した。
確かに膨らんでる…まだまだ小さいけどこれは男の胸じゃない…
それに乳首の大きさも…
「ねえ尚ちゃん、女性ホルモンとか飲んでる?」
「飲んでないですよ。飲んでるのは最初に綾さんにもらった薬だけです」
そして上を着ると、「志穂、未来、行こう」と言ってプールへ向かっていった。
2人も少し戸惑いながら「う、うん…」と返事をして後を追っていった。
七瀬が綾に聞く。
「綾さん…どういうことですか?」
「知らないよ…だって聞いていた話と違うことが起きてるんだもん…」
明らかに綾はパニックになっていた。
それは七瀬も朱里も同じだった。
麻美も同じだったが、なんとか冷静さを保つことができた。
「とりあえず…プールに行きましょう。じゃないと怪しまれますよ…」
「そう…ね、ひとまずこのことは忘れて今は予定通り楽しみましょう」
なんとか気を取り直し、4人もプールへ行き、3人と合流した。
みんなはしゃいでいたが、綾はやはり心から楽しむことはできなかった。
観察するように尚を見てみると、体つきも女っぽく見えることに気づいた。
あの薬は一体…




