急な人事異動
ご無沙汰しております。
久々に書きあがったので、投稿することにしました。
内容はいつも通り性転換モノです。
勢いで一週間程度で完成したので、少し浅いところがあるかもしれません。
過去の作品は学生が多かったので、今回は社会人に設定しました。
それと、軸になる主人公は2人なんですけど、それ以外の視点を多くして
いろんな人の感情がクロスするような展開にしています。
ミステリー要素も含まれているので、ぜひ最後まで楽しんでもらえればと思いますので、
よろしくお願いします。
入社してから早1か月が過ぎた。
食品から化粧品・薬剤など幅広い分野をかかえているシャイン株式会社で
その中の営業部に配属された。
仕事のことを段々覚え、思った以上に充実した日々を送っている。
そんな22歳の田口悠弥は、同期で同い年の佐々木尚と一緒に社長室へ
突然呼び出されたので困惑していた。
大きな会社なので、社長に会うことなど滅多にない。
「なあ佐々木、なんだと思う?」
「想像もつかないよ。なんで僕らなんだろう?」
悠弥と尚のほかに、同期は4人いる。
悠弥と尚は営業部、1人は総務部、1人は経理部、
残り2人は女性で化粧品の宣伝部へ配属されている。
なので、同期といっても実際に接することが多いのは尚だけなので
タイプは違うが、比較的に仲がいい。
悠弥は典型的な体育会系で、声も大きく、身体もガッシリしている。
対する尚は、小柄で華奢、真面目で背筋もいい青年といった感じだ。
社長室の前へ着き、ノックをしてからドアを開ける。
すると、社長の小澤が椅子に座って2人を待ち構えていて、
その横には、確か化粧品宣伝部の渡瀬という部長も立っていた。
「お呼びでしょうか?」
悠弥がハキハキとした声で小澤に声をかけると、
ひとつ咳ばらいをしてから口を開いた。
「急に呼び出してすまないね。実は君たちには急遽、化粧品宣伝部へ移動してもらうことになった」
その言葉を言われて、2人は戸惑いを隠せなかった。
なぜなら、宣伝部は女性しかいない部署だからだ。
ここの部署では、自社製品の化粧品をPRして発信していくのが目的であり、
自らメイクをして良さなどを伝えることが主な業務だ。
なので、ビジュアルなども重視されていて、キレイな女性しかいない。
なぜそこに自分が??
「お言葉ですが、自分たちは男です。この部署へ行っても意味がないと思います」
悠弥がキッパリと反論する。
尚も一緒にうなずいていた。
「君たちが言うことはもっともだ。だがな今の時代、女性しかいない部署もどうかという話になり、男性から見た視点も大事ではないかという話が役員会でまとまったんだ。では誰を配属するか、男性社員はほかにもたくさんいるが、みんな今の部署に慣れてそれなりの成果を上げている。一方君たち新入社員はまだ仕事を覚え始めたばかり、今なら移動も可能という結論になって、君たちを移動させてもらうことになった。とはいえ、急な人事でもあるし、初の男性配属ということで、特別手当も出させてもらう。これでも嫌か?」
特別手当という言葉が魅力的に聞こえてしまった。
いくらか具体的な金額は言われていないが、同期たちよりも給料が上がる。
それは優越感にもなるので、悠弥はうなずいた。
「わかりました。会社がそういう方針なら従います。」
「ありがとう。佐々木君はどうだ?」
尚はもともと上からの命令には素直に従うタイプなので、
納得はいかなくても素直に受けるつもりだったのでうなずいた。
「では渡瀬君、あとはよろしく」
渡瀬は「はい」と返事をしてから2人のところへやってきた。
「部長の渡瀬よ。みんなは綾って呼んでるから2人もそう呼んでね」
こういうのを聞いていると、さすが女性しかいない部署だなと思ってしまう。
綾に着いてくるように言われ、2人は社長室を後にして綾の後ろを歩いた。
「うちの部署はわたしを含めて6人しかいないからみんな仲良くやっているの。2人も早く溶け込んで仲良くやろうね」
「は、はあ…」
体育会系の悠弥はこういう女子ならではの発想がどうも苦手だ。
苦労しそうだなと心の中でため息をついた。
シャイン株式会社は自社ビルだった。
1階と2階は悠弥と尚が最初に配属されていた食品営業部と食品宣伝部。
3階は食品企画・開発部。
4階が総務部と経理部。
5階から上はすべて化粧品と薬剤関係の部署になっている。
化粧品はShineという名で売られ、業界ではそこそこの立ち位置だったが、
10年前に女性に人気の海外ブランド、シャーロットフランシスと共同で
化粧品を販売したことにより、一気に人気が跳ね上がり、今では20代・30代の女性に
絶大な人気を誇るほどの化粧品になった。
シャイン株式会社を支えているのは、
このシャーロットフランシスといっても過言ではない。
悠弥と尚はこれからそのシャーロットフランシスを宣伝していかなければいけない。
部署は10階。
悠弥も尚もここには入社した時に挨拶で入っただけの場所だ。
キラキラ輝いているような美しい女性が何人もいた記憶があるが、
同じ会社とはいえ自分には無縁と思っていたので、あまり覚えてはいない。
唯一覚えているとすれば、化粧品や香水の香りがすごくするフロアだと思ったことだろう。
10階の廊下を歩くと、すぐに左手に見える部屋の中に入る。
すると、シャーロットフランシスの化粧品やポスターがあっちこっちに並べられていて、
自分の会社じゃなければ逃げ出したいくらい女子の空間だった。
現にこのフロアにいる男性は悠弥と尚の2人だけだ。
その部屋を進んでいくと、同期の川島志穂と相原未来がメイク道具を並べながら
会話をしていた。
「お疲れさま~」
綾が軽く声をかけると、2人は「あ、綾さん。お疲れさまです」と
まるで学校の先輩後輩のような感じで挨拶を返していた。
志穂が2人に気づいて立ち上がる。
「2人とも宣伝部に異動になったんだってね。よろしくね」
ニコッと笑みを浮かべると、未来も同じように笑顔で「よろしく」と言ってきた。
奥にはほかに3人の女性がいるが、みんなキレイだ。
綾がその3人を呼んで悠弥と尚を紹介する。
「今日から同じ宣伝部に配属になった田口悠弥さんと佐々木尚さん。いろいろ教えてあげてね」
2人が軽く会釈をすると、3人が自己紹介をしてきた。
早川七瀬は今年30で、綾の次に年上らしいが、20代半ばにしか見えない雰囲気だ。
次に秋山麻美、25歳。
最後に24歳の小幡朱里、さっきもいったが、みんな可愛くてキレイだ。
それもそのはず、ここにいる全員はシャーロットフランシスのモデルでもあるからだ。
シャーロットフランシスは「すべての女性が可愛く」をコンセプトにしている。
なので、会社の方針でPRするために本物のモデルやタレントは使わず、
どこにでもいる女性をモデルに起用するために社内の人間を宣伝部という形で
使用していた。
これが身近ということで評判になっていて売り上げの一つに繋がっている。
「綾さん、2人のことはなんて呼びます?」
朱里が楽しそうに聞いている。
綾は少し考えてからこういった。
「悠ちゃんと尚ちゃんにしましょう」
すると「賛成~」という声が上がった。
悠弥は慌てて反論する。
「ちょっと待ってください!俺たちそんな呼び方嫌ですよ!普通に苗字で呼んでください」
「ダメ、ここのトップはわたしよ。わたしの方針に従うように」
あっさりと却下され、悠弥は落胆していた。
続いて綾がよくわからない錠剤を渡してきた。
「これね、薬剤部のほうで作っているまだ未発売のなんだけど2人とも毎日朝晩と飲んでくれる?」
よくわからない錠剤に思わず怪訝な顔をする。
「これ、なんですか?」
「体中からいい香りがする錠剤。2人とも男性でしょ、男くささを消すために」
なんて失礼なことを言う。
ムッとしながら反論した。
「加齢臭とでも言いたいんですか?まだそんな年じゃないし、男なんだから別にいいでしょ」
「いい?シャーロットフランシスは女性のためのものなの。あなたたちはそれを宣伝しなければいけない。別にモデルになれとかそういうことじゃないけど、どういう風にすれば女性が喜ぶか、欲しくなるか、そういうのを考えないといけないの。少しは女性の気持ちを理解してもらうために、男性特有の男くささくらいせめて消してもらわないと困るのよ。これは業務命令だから」
悠弥は渋々うなずき、その錠剤を受け取った。
尚は綾が言っていることはごもっともだと思ったのか、素直に受け取っていた。




