こむらがえり
なぜかはだいたいわかっています。
日中午後は汗ばむような陽気の日も少なくなくなったとはいえ、
日の出日の入の頃ともなればまだまだ空気は温度を下げてひっそり地面を覆いますから、
そこをぺたぺた掻きまわしまわったその足で、薄いフトンのあいだに挟まれば、
私ごときの筋の乏しい骨皮ばった両足などは、
いただいた低い温度を、いただいたまんま素直にすまして静かにしておりますから、
フトンのこもらすわずかばかりの温みに頼って、
ごまかしていどに温めたばかりで、うっつらうっつら眠りに落ち込みますが、
いっそう冷える明け方に、ぼんやり目覚めて全身伸びでもしようものなら、
それはそう、
「伸びますよ」だなんて私の指令など、
冷えて凝り固まっておまけに寝惚け眼の両足の、なけなし筋に届くわけなし、
筋にしてみれば、「伸ばしますよ」の断りなしに、イキナリ首根と足を掴まれて、てんでにぐいぐい引っ張り突っ張りやられるのだから、
そりゃもうたまったもんでも冗談でもなくそうするならこうしてやると、
びったりばったりスジズジばって意地ばって、
伸びて伸びて伸びきりきって、
私の弁明するのもいっさいがっさい聞き入れません。
わかっています。
その通り、私の悪いのはだいたいわかっていますから、文句のひとつを言うまでも、浮いてさえきやしませんし、
もちろん言いもしないのですが、
だからと言ってこのままつっぱらかっていられては、
私の息も絶え絶え、
伸びて伸びて伸びきりきった筋筋の、
主張のおかげで他の何事にもかまっていられやしません。
歯は噛みしめたまま、走り幅跳びを踏みきる選手のように、手足をびんと伸ばして、フトンの上でひっくり返り、こむらの返りの砂場の上を跳んでいる。
ばかのように伸びたつま先に、ひいひい手をやり、元に返れと虚しい力を込めるばかりで、さっぱり返りの来ない明け方の、私の両の、こむらの返り。