9、困ったときの助っ人
「益男君、今の話意味わかった」タクが去った後、正一は益男に話しかける「わからない」「そうだよね俺も半分しかわからなかった。このあたりは歴史を研究しているが、フィリピンのことはスペインが来る前の時代のことは資料が無いし」「困っているようだな。少し解説しよう」正一と益男が声のする方向を見ると、ピンクの熊を閉まっていた籠の上から煙のようなものが出はじめたたかと思うと映像が登場した。「ベアー!」「そうじゃ、少しはこの時代に落ち着いたか?」ベアーの声を聞いた二人は急に気持ちが落ち着く。「ああ、いろいろ考えるとキリがないけど、とりあえずタクという人に助けてもらって、家で休ませてくれている」正一の言葉に微笑むベアー。
「さて、どこから話をしようか?そうだタクという人物が、君たちが元いた時代ではフィリピンに当たるルソン出身というのはわかったようだな」「ああ、ルソン島から来ている商人らしいな」「で、彼の先祖が明国といっていたが」「明というのは、中国それもわかる」「さすがだな、益男君は解るか?」正一より10歳若い益男に語りかけるときには優しくなるベアー「中国はわかるけどミンとか言われても・・」「ハハハ!まあ良いつまりこの時代の中国は明という名前の国だが、彼の話はその二つ前の国だ」「明の二つ前・・・宋という国」「正一君良くわかったな。ん??歴史クイズになっているな?」「ベアー、そんな事どうでも!時代が混乱している」
正一の苛立ちに、「まあまあ」となだめるベアー。「つまり彼の先祖は中国人ということだ。当時の国の名前は南宋というが、この国を元というモンゴル人の国が滅ぼした」「そこはわかる。日本にも攻めてきたな元寇というやつ」今度は自慢げに語る正一「そう、だから彼の先祖は船で逃げてルソン島についてそこで国を作ったというわけじゃ」ベアーの解説になんとなく理解出来る正一。益男はまったく理解できない。「なるほど、まあ先祖の話はどうでも良い。彼が南蛮の人を殺したからもう駄目だというのが気になる。一応この時代の現代進行形の話しだからな」という正一に対して静かにうなづくベアー「それはこの時代に、ある人物が船で世界一周した」「ある人物・・コロンブス?」正一の答えに首を左右に振るベアー「それはアメリカ大陸を発見した人物じゃ。答えはマゼランという男だ」「マゼラン!聞いた事がある」「彼がスペインの艦隊を率いて世界で始めて世界一周したといわれているが、実は途中のフィリピンで殺された。殺したのはラプラプという人物で、彼を攻撃しようとしたら返り討ちにあったと言う事じゃ。マクタン島の戦いと呼ばれていて、たしか君たちが元いた時代1990年でもフィリピンではこのラプラプという人物は英雄扱いじゃ」「それで、タクさんはそのことを気にしていたんだ」ようやく正一の頭の中がすっきりする「そう、厳密には彼のいたルソン島の国の王ではなく南にあるセブ島周辺での国での話じゃ。確か1521年の事だから、今から14年前の話になるな」「14年前??ああわけが解らない」正一は元いた1990年のイメージが残っているのか混乱した。「この時代に慣れてないな」ベアーは笑った
「ベアー笑うな!元々あんな所に変なボタンがあったからこんな事になったのじゃないか!!」あの時から頭が混乱する出来事が続いている正一はいつの間にか気が短くなっていた。「まあ、そんなに怒ることはない。益男君がおびえておるぞ」正一が益男のほうを見ると確かに益男が泣き出しそうな顔をしている「ああ、益男大きな声を出して悪かった」とあわててなだめる正一。「しかし、あのタクという男はなかなか先見の目があるようじゃ。彼の言うように、今から9年後になれば、スペインの艦隊が再びフィリピンに現れてやがて完全に支配される」「あ、ああそうだな。そ言う意味ではタクさん運が良かった」と納得する正一。気がつけばベアーは消えていた。