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南の国のタイムトラベラー  作者: 麦食くま
20/23

20、益男から語られる衝撃の数々

その日の夜、オタたちと食事を共にしない方がと思っていた正一であったが、

ヌットの方から声をかけてくれた。

食卓に着くと、普段お目にかかれないような豪華な料理が並んでいた。

「これは・・・」驚く正一に先ほどとは対照的に朗らかな表情に

なっていたオタ「ショウイチ君、先ほどは私も感情的になって悪かった。あまりの急な話に驚いたから。

でも一生に一度の人生だからその気持ち応援するよ。神様が守ってくださるだろう。タクさんには私の方から伝えて置こう、明日の夕方旅立つんだよね。だから今日は君を送り出す前祝にしようと思ってな」と言い終えると、ヌットが普段登場することがないお酒が出された。

酒についてはタクは飲むことがあったが、

オタも正一も普段は飲まない。しかしこの日は特別に二人とも酒を酌み交わした。

「マスオ君やサクラちゃんの事は心配しないでね。ナットや私のおなかの子供のように私たちの子供として面倒見るわよ」

と、ヌットもオタ同様表情は晴れやかに語ってくれた。

ただナットは不機嫌そのもので、苦虫をかみつぶしたような渋い表情のまま黙って食べている。

正一は益男の方を振り向くとこちらも無言であったが、ナットと違い表情は人形のように感情がない。

「ああー益男。これはたぶん怒っているんだろうなあ。後で話をしなければ」


その日の食事も終わり、自室に戻る正一と益男。ここで益男が「ちょっと外で月を見たい」と言い出したこれは話をするタイミングとばかりに外に出た。「明日満月かな。見た目はもう丸いね」

「ああ、そうだ益男、旅の事お前に先に言わなくて悪かった。

言うタイミングがなくて」と小声でとにかく申し訳なさそうにしゃべる正一。

「旅のこと?もういいよ。でも本当は違うんでしょ。旅ではなくて元の時代に戻るんでしょ?」


「益男!」正一の表情は一瞬強張った。「ちょうど正一兄ちゃんがうずくまっていた日。

ベアーらしい声が聞こえたんだ。そしてお兄ちゃんが確かに『ベアー』と言ったのも聞こえたんだ。

でも何の話をしているのかは聞こえなかった。でもわかるよ。ベアーが出てきて僕に内緒で

話をするんだからたぶんそうだろうとね」

「す・すまない。事情があって一人だけ帰る事になった。益男許してくれ」と

正一は益男に慌てて土下座をする

「兄ちゃん。いいよわかってる。たぶん僕が戻れない理由も」益男の勘は確かに鋭い。が、まさかベアーがあの時に伝えた益男が帰る事が出来ない理由までわかっているかも知れないということに正一の表情はさらに氷のように完全に固まる。

「だって、今だから話せるけど僕あの時死のうと本気で思っていたから」

「ま・益男・・・」正一は体を震わせながら顔を上げる。

「僕は、半年前まではあの時代で幸せだった。パパがいた時までは」益男の表情に寂しさがみなぎる

「でもあの日突然。パパとママが大喧嘩して、その時からパパは家を飛び出してしまって行方不明になったんだ。ママが言うには『パパとは結婚の関係を取り消した』と言っていた」

「離婚したんだな」正一が小さくうなづく。「それから10日くらいでいきなり見知らぬ若い男の人が来てママと仲良くやっているんだ。『ママは新しいパパ』とか言ってたけど。僕はそんなの認めたくない。

だってパパとの思い出。カメラが好きなパパと一緒にいろんなところ特に桜の花が好きだったから毎年春には3・4回一緒に花見をしたりしたんだ」「そうか・・それで『桜』という名前を」正一の問いに大きくうなずく益男。「それからこれから英語を知った方が良いとか言ってパパが僕を英語の教室に入れてくれたりしたから英語が少しはわかるんだ!」益男はさびしそうな表情の中に懐かしさを思わせるかのごとく、目だけが笑っているようにも見える。「でも、あの日から僕は『お金がかかるから辞めろ』と、英会話の教室を辞めさせられしまったんだ。あんなに楽しかったのに毎日が嫌で仕方がなかった。やけくそで適当に絵を描いたけど『なんだこれ?こんな勢いだけで刺々しい下手くそな絵。見ているだけで不愉快だ。もう描くのはやめろ』とその男の奴に馬鹿にされたよ。だからその日から絵も描けなくなった。

そしてあの日そうお兄ちゃんとぶつかった日についに見たんだ。

昼学校から帰ったらママがその男の人と二人で裸になって体を・・・・」

「そ・それは、辛かったなあ」正一は同情する。

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