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南の国のタイムトラベラー  作者: 麦食くま
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13、故郷の危機と決断

「この子は女の子よ」と抱いている女性が言う。「そうか、確か『ヒメ』と言ってた。これは貴族の娘かも」正一のちょっとしたひらめきにタクの表情がやや暗くなる。「この人の服装から間違いなくルソンフィリピンから来ている。ショウイチ、マスオ、俺がお前たちに最初に行ったのを覚えているか?あの国は今南蛮の国に狙われている話だ」正一はその言葉を聞きながらその時のことを思い出しながら一人でつぶやく「確か歴史上ではマゼランがフィリピンの人に殺された奴か」「非常にまずい!」「タクさん。何がまずいの?」対照的に平静そのものの益男が質問する。「実は、俺の家族はまだルソン島にいるが、いよいよ戦争になってしまうかもしれん。どうやら時期が来たようだ。家族をこのムラカ(マラッカ)に呼ぼうと思う」タクの言葉にそこにいた全員が注目する。「タクさん。家族というのは奥さんとかお子さんとかですか?」「ショウイチそういうことだ。俺は仕事で単身この場所にいるが、ルソンにも同じように商いをする拠点があって、そこには俺の父がいる。そして妻と子供が2人いる。ちょうどマスオ君くらいの年齢の兄と3歳の弟がいる。俺の商売の拠点は元々ルソン島で、こっちは新しい拠点ということで単身来ていたが、そろそろ拠点をこっちにしたほうがよさそうだ」「単身赴任か・・・この時代からあったんだ」正一はふと自分たちのかつていた1990年ごろの日本を思い出した。


その日の夜、正一はベアーからもらった本を見ながら、時代の歴史を振り返る。歴史上ではこの時代1535年から9年程先の1543年には、ルイ・ロペス・デ・ビリャロボス率いるスペイン船団がフィリピンに到着して、やがて現地の支配を開始したという記録が残っていた。それだけ緊迫している事を確認すると静かに横になる、先に横になっていた益男が背中越しに正一に話しかけてきた。「兄ちゃん。あの赤ちゃん、女の子らしいね」「そうなのか、でも一緒にいた人がああなったから可哀そうだね」「うん、でもさっき僕の顔を見ると嬉しそうな笑顔をだしてくれたよ」「そうなのか、落ち着いたらあの子の絵を描いてあげたらいいよ」「そうするよ」と即答する益男。

正一は話したくて仕方がない益男の話に相槌を打つものの昼間から普段とはイレギュラーな事象が続いたのか、正一は益男の話を聞きつつ強力な眠気が襲っていた。「でもあの赤ちゃんはこの後どうなるんだろう」「うーんわからない。タクさんに聞いてみるしかないね」と言いながら益男話を途中まで聞いてイビキをかき始める正一。益男はつまらなそうに「あの子は妹みたいだなあ」とぶつぶつ言いながら横になった。翌日男は現地式の葬儀で葬られ、タクや正一たちが葬儀に参列した。「益男、こういうのもちょっと絵に描くといいぞ」正一は将来の資料のことが頭をよぎりひそかに葬儀の方法をメモに取る。正一に言われた益男も同様に葬儀の様子を筆で描く。

男の葬儀が無事に終わり、無事に墓に入った後、タクは正一たちや従業員たち一同を一番大きな部屋に呼び集める「さて、これはこの前も少し話したが、俺は一旦ルソンに戻り、家族をこちらに連れてこようと思う。3日後の船に乗っていくつもりだ。戻ってくるまで4・5か月ほどかかるのでその間俺は留守になる。しかし皆には今まで通り仕事のほうを頑張ってほしい」タクの言葉に同意するかのようにうなづく一同。「特に、ショウイチとマスオ。そろそろ慣れたと思うから、俺がいなくても大丈夫だろう」「大丈夫!」と元気に返事する益男。「よし、俺がいない間だが、オタ!頼むぞ」タクに呼び出されるように一同の中から若いオタという男が呼び出された。

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