表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/31

第19話 キスの感覚



 ダルクはイルーシャを抱えたまま上階にあがると、北端にある小さな部屋に入って素早く鍵を閉めた。

幸いなことに誰とも会わなかったおかげで背後をつけてくる者もいないようだ。


「ここまで来れば大丈夫だろう」


抱えていたイルーシャの体をゆっくりと床におろし、ダルクはふうと大きな息をつく。

一体どこに連れてこられたのだろうと思って顔をあげると、壁にいくつもの古めかしい絵画がかけられていることに気付いた。

金色の装飾がされた額縁の中でヒマワリやチューリップが綺麗に咲いていて、その絵の下に黒いソファーが二つほど置かれている。

あとは窓際に丈の低いテーブルと椅子があるだけで、特にこれといって目立つ装飾や家具は見当たらない。

しいて言うなら入り口のそばにある騎士の鎧くらい。


「この部屋は北小部屋といって、昔よくクロード王子がお使いになっていた談話室なんだ」

「殿下が?」

「うん。今はほとんど使われていないけどね」


通りで装飾が豪華なわけだ。

イルーシャが天井から吊るされたシャンデリアに気を取られていると、温かい手の平が彼女の後ろ髪に触れた。


「もう仮面を取っても大丈夫だよ、エレナ」


ダルクは彼女の目元を覆っていた仮面を取って笑む。

久しぶりに会ったはずなのにイルーシャのドレス姿を見ても驚くような素振りは無く、なぜ夜会に出ていたのかも問うてこない。絶対に理由を訊かれると思っていたのに。

言い訳すら用意していたイルーシャは拍子抜けしてしまい、むしろ自分の方から口を開いた。


「実は私、一昨日に王子殿下から――」

「会に参加するようお願いされたんだろ?そんなこと分かってるさ」

「あの、このことは」

「誰にも言わないから安心してくれていいよ」


まるで「お前の考えることはお見通し」と言わんばかりの即答。

特段それ以上に言いたいことはなかったので口をつぐむと、ダルクはソファーの前に行って身につけていた鎧を外しはじめた。

もともと鎧が分厚かったせいか、中から引きしまった痩身が見えるとイルーシャの目は釘付けになった。


(意外にダルクって細身なのね)


そんなことを思っていたら不意に彼と目が合った。


「僕に興味がありそうな目だね」

「ち、違います」

「正直に言っていいよ。誰もいないし」


こちらにやってきてニヤッとするダルク。

別に興味があると思って見ていたわけではないが、そう言う風に言われると少し意識してしまう。


「僕はエレナのことが好きだよ。前にも言ったと思うけど」

「え?」


ダルクは指先で彼女の顎をすくって自分の唇に近づける。気付けば目の前に彼の美顔があって、イルーシャはどきりとした。


「緊張する?」

「や、やめてください!殿下に言いつけますよ!」

「いいよ。やれるものなら」


ちゅっと二人の唇が可愛い音を奏でる。

その瞬間、イルーシャは甘美で熱い何かが舌を伝って身体の芯に入っていく感覚をおぼえた。

でもその感覚になぜか覚えがあって、すぐに俯く顔をあげてダルクの顔を見る。


「あの、もしかして……」


今まであまりよく見たことが無かったからなのかもしれないが、いざ近づいて見ると目が誰かにそっくりだ。顔の輪郭も眉の動かし方もそう。

それに何と言ってもキスのしかた。角度、口触り、吐息、すべてあの人に似ていて――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ