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第18話 君を守るための嘘



「じっとなさって!」

「やめてください!!」


イヴァンカの取り巻き二人に腕を押さえられ、イルーシャはたちまち身動きがとれなくなった。

もともと非力なため、二人がかりで両腕をつかまれたらほとんど抗えない。


「さっそくお顔を拝見」


イヴァンカがイルーシャの仮面を容赦なく剥ごうとしたときだった。

仮面の端に手が触れたのと同時に真後ろでガシャッと銀色の鎧が揺れるのが見えた。



「ベルゼドール嬢」



低くて怒ったような声がする。

不意に名を呼ばれたイヴァンカが振り向くと、そこには銀のヘルメットを片手で抱える男の姿があった。


「何ですの?今取り込んでいるのよ」

「申し遅れました。私、クロード王子殿下の側近のダルクと申します。主からベルゼドール嬢をお探しするよう仰せつかっております」


するとそれを聞いたイヴァンカの顔が見違えるように明るくなった。


「王子殿下がわたくしに?」

「はい。なんでも殿下が一曲ご一緒したいとのことで。しかしお嬢さまが広間におられなかったため、殿下自らお探しに出られて」

「まあ、殿下がわたくしのためにそこまで!?」


胸の前で手を合わせ、女の子らしい可愛い仕草を見せるイヴァンカ。

それを横目で見ていたイルーシャは思わずペッと唾を飛ばしそうになった。


「私は王子殿下をお呼びして参りますので、ベルゼドール嬢はすぐに広間の方へお戻りください」

「是非ともそうさせていただくわ!」

「ああっ、お姉様!」


突如として現われたダルクに促され、イヴァンカは鼻歌を歌いながら浮足立って広間の方に戻って行く。それに続いて彼女の取り巻きらも逃げるような足取りで去って行った。




――☆――☆――☆――




 3人が廊下の角を曲がって見えなくなると、バルコニーはイルーシャとダルクの二人だけになった。

王子殿下を探して来ると言ったダルクはそこから動く気配はなく、イルーシャが取り巻き二人に掴まれた腕を押さえていると、彼がそっと手を差し伸べてきた。


「立てるかい?」

「あ、ありがとうございます」


イルーシャはその手を取り、彼に引っ張ってもらいながらゆっくりと立ち上がる。


まだ腕がズキズキする……

姿勢に反する体勢で腕を押さえつけられたことで筋違いのようなものを起こしたらしい。でもそんなことで彼に迷惑をかけるわけにはいかない。


「わざわざ助けていただいたのに何もお礼ができずにすみません」

「そんなに畏まらなくてもいいよ、エレナ」

「え?」


急に名を呼ばれ、イルーシャはギクッとした。仮面をつけているとはいえ、女官の身分で貴族に扮していることが知られたと思ったからだ。


「いえ、あの私は」

「嘘をつかなくてもいい。君はエレナ・ロックフォードなんだろう?」

「……どうして私だと分かったんですか?」

「それは――」


そのとき、通路の奥から誰かがこちらにやってくる影が見えた。ダルクは素早く人の気配を察知すると、急に「こっちだ」とイルーシャの手を引いて逆方向に走り出した。


「ちょっと、どこにいくんですか!?」

「静かに。大きい声を出してさっきの3人組に見つかったらどうする!」

「……どういう意味?」


すると王宮の3階に繋がる階段の前でダルクの足が止まった。


「実はさっきのはエレナを守るためのウソなんだ」

「嘘だったんですか?」

「殿下はあんなヒドイ連中なんか相手にしないよ。それに――」


彼は語尾にぐっと力を入れたかと思うと、左腕をイルーシャの腰、右腕をひざ下に潜り込ませて「あっ」という間に抱きかかえてしまった。

夢にまで見た “お姫さま抱っこ”というやつだ。


「エレナ以外の女に興味がないから」


彼はイルーシャに優しい笑みを落としてから、階段を2段飛ばしで駆け上がり始めた。






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