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白の空間

「ん、ここは?」


 気づけば俺は白い場所に居た、空は一面真っ白で地面も白く前方を見渡すと、山も建物も何もなく、

 ただ真っさらな地平線が見えるだけであった。


「これって完全に死後の世界ってやつかな・・・」


 ここに来る前の最後の光景を思い出し、死んだのだと悟った。

 もしかしたら俺はいま病院で植物状態になっており、今見ているのは夢みたいなものなのではと

 思ったが、それにしては感覚がリアルすぎであった。


「このまま真っ直ぐ前を歩いて行けば三途の川とかあるのかな?」


「そっちに幾ら歩いても川なんて無いよ」


「わっ!」


 突然の返事に驚き後ろを振り向くと、そこには長い白髪を後ろに流した、20代から30代位の男性が、

 椅子に座りながら、テーブルに乗っていた紅茶らしき物を飲んでいた。


「あ、あの、どちら様で?」


「う~ん、解りやすく言うと君にとって私は異界の神かな?」


 思わず誰か訪ねたら、予想外すぎる答えが帰ってきた。


「異世界の神?俺の住む神様でなくて?」


「そ、この世界アースグラウンドを創造した神が私さ」


 誇らしげに両手を広げる自称神だが、辺り一面真っ白の地平線しかめない。


「随分寂しい世界をお創りになられるんですね」


「ははは、ここは私が住む特別な空間で、普通に生命が暮らす場所も作ってあるよ」


「そうなのですか?」


「そもそもここは、私の許可が無いと誰も入ってこれない空間なんだけどね・・・」


 神が腕を組みながらそう言うと、微笑みながら興味深そうにこちらを見つめてくる。

 なんだろう、ただ見られてるだけなのに、体の内側をみられてるようで妙に落ち着かない。


「まあ、君には色々と説明する必要があると思うから、立ったままだとアレだから先ずは座りなよ」


 突然目の前に椅子とテーブルの上には、俺用だと思われる湯気の立つ紅茶の入ったティーカップがが現れた。

 突然の出現に驚きはしたが、気がついてから驚きっぱなしな俺は、とりあえず促されるがまま椅子に座り「いただきます」と言いながら、紅茶を一口飲んで落ち着くことにした。


「あ、ちなみに君はもう死んでいるから」


「う!ゲッホゲッホ」


 あまりにも普通に紅茶が飲めるので、もしかしたら助かったのかと思い始めた時の突然の宣告に、思わず飲んでいた紅茶が気管に入り咽てしまった。


「し、死んでいるって、ではなんで俺は普通に紅茶なんて飲めるんですか!?」


「それは私が神だからだよ、魂の君が飲める飲み物を用意するなど、造作でもないよ」


「あ、俺は今、魂なんだ・・・いやいや、魂が飲み物飲んで咽たりしないでしょ?」


「それは、君が死んだことに気づかず、息をしていたからだよ、死んだことを意識して呼吸を止めても、苦しく無いはずだよ」


 言われて試しに呼吸止めてみたら、どれだけ経っても苦しくなかった。


「話の続きしていいかな?」


「・・・その前に一つ質問良いですか?」


 どうぞ言う感じに手を前に出されたので質問した。


「俺の世界の人間は、死んだらみんなこの世界来るのですか?」


「君の世界の仕組みは知らないが、私が知る限りでは異界の魂がこの世界に迷い込むことは基本あり得ないが、極稀に原因は解らないが、君みたいなのが流れ着くことがあるようだね、前に他の魂が来たのは確か40年位前かな?」


「それって大丈夫なんでか?」


「少しくらいなら私の世界には大した影響はないよ、ちなみに君を元の世界に戻す方法は私でも解らないよ、だって異世界に関与の仕方なんて解らないからね」


 戻れてもう死んでるし、両親とは仲が悪かったし、愛する人も居なかったので、魂でも構わず帰りたいと言うほどの思いはなかった。


 それから神から、俺からの質問を交えつつ色々説明された。

 どうやらこの世界は剣と魔法の世界のようだ、文明レベルは俺達の世界の中世位で、そこでは人間だけでなくエルフや獣人等、多種多様の種族が、時には戦争し、時には手を取り合い暮らしているらしい。

 しかし、現在この世界では大きな問題を抱えているらしい。


「実は言うとね一万年くらい前に生まれた亜神に手を焼いているんだよ」


「亜神?」


「そう、亜神の名前は『ダンジョン』、私でも簡単に手を出せない『奈落』と呼ばれる深い大穴より生まれ、私が気づかない内に自分の分身を世界中にばら撒いていて、気づいた時には世界を飲み込む勢いで増殖していたんだ」


「それって大丈夫なんですか?」


「全く大丈夫でないよ?下手したら後200年で世界が滅んじゃうかもしれないね」


 神は困ったものだと言わんばかりに肩をすくめるが、世界の存続が危ういのに対し余りにもの軽い態度だ。

 俺自身も死んだ身なので、軽く聞いて入るが、これってかなりヤバイ事ではないだろうか?


「なにか手を打たなくてもよいのですか?」


「これでも結構あれこれやってるんだよ、神託飛ばして警告したり、亜神倒すためにアレコレ世界の法則も弄ったりしたり、定期的に勇者と呼ばれる特別な力を持つ存在が生まれるようにもしたね」


「それでも、倒せないですか?」


「そうだね、おまけに分身の数が増える程増殖速度が早くなって、今では人が住める場所が世界の4割しかないよ」


 残り4割ってヤベーじゃん、逆に言うと世界の6割がその『ダンジョン』と言う亜神に呑み込まれていることになるよ。


「神様が直接手を下したりしないんですか?」


「正直そうしたいんだけど、私にとって亜神やその分身は『砂粒』みたいなものでね、白い砂場から無数にバラ撒かれた赤い砂粒を集めて歩くようなものさ」


 すると突然テーブルの上に白い砂の入った箱が突然現れた、よく見ると無数の赤い砂がアチコチに散りばめられている。


「例えばこうして、一粒赤い砂を摘もうとしても関係のない周りの砂も摘んでしまうんだ」


 そう言いながら神が砂を摘んで見せると、其処には小さな窪みが出来ていた。


「世界中に散らばった、分身をこうして摘んで行けば、逆に生命が住める場所が無くなってしまうんじゃないかな?もしてや『奈落』の底にいる亜神本体を捕まえようとしたら、穴に丸々腕を思いっきり突っ込むようなものだから、それだけで世界を壊してしまいかねないよ」


「・・・それってヤバイですね」


「ヤバイよ~だから私が直接手を出す時は、それこそ亜神『ダンジョン』に世界の全てがが飲まれて時かな、そうなったらもう亜神ごと世界を一度消しちゃって、1から作り直すけどね」


 余りにもの話に俺は唖然とする、俺はもう死んでるし他の世界の住人に対して何も出来ないが、何だかあまりに可愛そうだ。

 ん?そう言えば俺ってこの後どうなるんだ?


「あの~俺ってこの後、どうなるのでしょうか?もしかしてずっと此処で神様と居るのでしょうか?」


「う~ん、異世界の住人がずっと話し相手なってくれるのも魅力的だけど、前に迷い込んだ異世界人と同じように、この世界で普通の生命として生まれ変わってもらうよ」


 あぁ、全くの他人事でもなかったわ。


「200年後は言え滅んじゃうかもしれない世界に生まれ変わるのって、ちょっと嫌だな・・・」


 俺がそう呟くと、神はそのセリフを待ってたと言わんばかりにニヤリと笑いだした。


「そこで君に相談なんだけど、この世界救って見る気はないかな?」



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