092:時に焼きを入れるような過激な手段をいとわない栽培方法
.
白の大陸南東部、メルダルキア湾岸地域。
オオカミやイヌ、ライオンやトラといった頭を持つ獣人種族、約150名がひと塊になり、西へ向けて移動していた。
少し小高くなっている、左手に海を見渡せる風通しの良い街道。
日差しは柔らかく、穏やかな空気の中、獣人集団は足取り軽く次の休息地を目指していた。
一方で、集団のど真ん中にいるヒト種族の一団は、ピリピリとした空気を纏っていたりするが。
ウマではなくヒトが曳いている、奇妙な馬車。
現在、ウマに代わり馬車を曳くのは、ヒト種の大男で『断頭のサンクティアス』と呼ばれるほどの実力がある冒険者、ゴーウェンであった。
車体の上では、ハルバードを肩に担いだ美貌の女重戦士、姫城小春が進路上を睨んでいる。
御者席には、成り行きで同行している黒髪の冒険者ダンと、若き騎士見習いのクロードが。
車内からは、隠れ目呪術士の久島果菜実やジト目魔剣士(予定)の御子柴小夜子、若奥様魔術士の梔子朱美、家出中の魔道姫フィアといった面子が周囲を窺っていた。
普段どこか抜けているというかのんびり構えている現代社会のプレイヤー勢ですら、今ばかりは警戒感を剥き出しにしている。
ただし、その警戒対象は周辺を取り巻く獣人たち、ではない。
たった今、向かう先の地面を吹き飛ばして出現するような、『敵』に対してである。
「出たー!?」
「来たぞぉ! 下りろ下りろ下りろ!!」
「死ねぇ! クリスタルスプレー! ブースト!!」
「は、ハンマーボルトー!」
「エイオースウーオスアルミランタイグゥールフラ、アルペラッツァ!」
問答無用でブッ放されるプレイヤーの魔法スキル、それに魔道姫のネイティブマジック。
馬車を飛び降りた後衛の女性陣は、氷のつぶて、カミナリの矢、地面から斜め前に飛び上がる鉄のヤリで正面に総攻撃を仕掛けた。
逃げ場の無い絨毯爆撃に、現れたばかりの影のうち3つが撃ち抜かれて崩壊し、砕ける。
しかし、ジト目少女やデカいおっさんは、それで気を抜かなかった。
「クソがー! また囮かー!!」
「今度は直接詰めて来るか、それともまた魔法で来るか……」
「小夜子ー! あんた“気”を見つけるの得意なんでしょー!? 見つけるのに集中してよー!!」
「うるせー! それが出来たら苦労しないんじゃー!!」
馬車を中心として、全方位に意識を向ける一団。ジト目が殺気立ち、おっさん冒険者が腹の底から呻き、グラドルJDが泣き声混じりの悲鳴をあげている。
全員、こんなもので終わりではないと知っているのだ。
「んぁ!? そこかぁあああ!!」
そして案の定、ほとんど間をおかず現れる、新たな“気”配。
忙しなく視線を廻らせていたジト目少女は、ほとんど条件反射のように自分の右手へ火炎の魔法スキルをブッ放した。
ところが、唐突に現れた敵は乱れ弾ける炎の弾を飛び越えると、馬車の上にいた女重戦士へと躍りかかる。
「――――ッかかって来いやー! ぐへーッ!?」
「おい露出魔巨乳!?」
ヤケクソのようにハルバードを振り回して迎撃に移る小春。
悪くない打ち下ろしだったが、相手には簡単にかわされ、逆に馬車上から蹴っ飛ばされた。
顔を布で覆った敵は、クロードの刺突を宙返りで避けると、着地ざまに手の中に2メートルを超える大剣を生成。
「潰れろオラァ!!」
真横から突っ込んで来るゴーウェンの大剣とぶつかり、鈍く重い激突音が響き渡った。
「ぬぐぅッ……!? フッ!!」
圧倒的な膂力の差で、体格に勝る大男の方が後退させられる。
だがここで、ゴーウェンは口の中に生成した釘のような鉄片を吹き出し、相手を奇襲。
これは簡単に避けられたが、直後に真後ろからクロードが襲いかかる。
「りぃいいいいいいいいやッ!!」
一息で乱れ撃たれる長剣と中剣、二刀による斬撃は、並みの相手なら一瞬でバラバラにするほどの威力とハンドスピードだ。
それを平然と身体に受ける相手が、逆に大剣を振るいクロードを吹っ飛ばす。
空を飛んだ青年剣士の有様に、援護のタイミングと見た隠れ目呪術士が再度魔法スキルを発動。
「サーマルホーミングー!!」
追尾型の火球が30個以上放たれ、顔面を布で隠した襲撃者に殺到した。
その直前、襲撃者は袖口から白い紙を取り出し、放り投げて自身は後退。
紙の札からは水が弾け、火球を尽く鎮火してしまう。
「たらぁあああああ! おごごごぉ!?」
「姫ー!」
「こ、こはるさーん!!?」
ハルバードを水平に構えた女重戦士は、相手の側面を突くように姿勢を低くし、高速で駆け込んでいった。
しかし、瞬間移動を繰り返し突っ込んできた敵に、逆に正面からタコ殴りにされ蹴散らされる。
顔を隠した襲撃者は、合わせた両手の平を擦って切ると、そこに大量のダガーを生成。一斉に馬車と冒険者たちへ撃ち放った。
ゴーウェンは大剣を盾にし、クロードは主である魔道姫を背に手数を活かし迎撃。
魔法職が弾幕を張らんばかりに術を振るうが、顔を隠した襲撃者はその中を速力だけで切り抜け、
「ぬッ……がぁああああ!!」
進路上に回り込んだゴーウェンが、接触するタイミングに合わせ正面から大剣で叩き斬った。
真っ二つにされた襲撃者が、ボロボロと土塊になり地面に崩れ落ちる。
それを黙って見ていた冒険者一同だが、やがて現実を受け入れると全力で悲鳴を上げていた。
「ぎゃぁあああ! 結局これも囮じゃねーか!?」
「なんでー!? 完璧に“気”は悠午くんのだったじゃんよー!?」
「今までの土人形が微かな魔力しか持たなかったのは……わたし達にそう思い込ませたのですね」
「あークソ……」
つまり襲撃者の正体は、一団の仲間であり最大戦力の少年、村瀬悠午であった。
そのはずなのだが、今のところゴーウェンたちは悠午本人を捉える事すら出来ず、五行術の『土式神』などに振り回されているのが現実である。
そして、獣人たちはそんなヒト種たちの抜き打ち模擬戦を、見物気分で眺めていた。
◇
黒の大陸でも旅路と修行を同時並行していたが、ここにきて師匠である悠午は実戦形式に大きく比重を傾けていた。
獣人集団と共に移動するようになってからは、小袖袴のヤツは日中姿を消し、不意を打って強襲するような事を続けている。
おかげで仲間たちもすっかり疑心暗鬼だ。
しかも、悠午は今まで“気”配すら見せなかった小技を、いくつも繰り出して来ていた。
船旅の間に、プレイヤーの女性陣やこの世界の冒険者のおっさん達は、新たな気功の力を身に付ける事となった。
だが、先の獣人戦士との戦いでは、それぞれ自分に不足している点や活かし切れなかった力を自覚する顛末となっている。
それらの反省点を、今の内に存分に補わせようと小袖袴の師匠は考えていた。
その上で更に、悠午はいずれ弟子たちに習得させる予定の新技も、修行の中で見せている。
そんな目論見通り、魔道姫やゴーウェンは既に術を自分のモノにできないかと独自に工夫をはじめていた。
他方、全く何をされているのか理解できてないグラドル重戦士もいたが。
これは保険だ。
目的地である神殿都市アウリウムでは、必要になるかもしれない。
◇
「ふははははははははは!!」
と、唐突に湧いて出るや、鉄杖を振り回して突っ込んで来る、顔を隠した小袖袴の何者か。
もう声が出たくらいじゃ本物か偽者か判定できない仲間たちである。
「うぉおおおやったらぁああああ!!」
「ゆーごくんのバカぁあああああ!!」
「ま、ままままだまだぁあああ! ふべシッ!?」
これを迎え撃つ前衛組の大男、女重戦士、青年剣士の三銃士。即、パワーで薙ぎ払われるクロード。踏ん張りや守りといった点の脆さがモロに出ていた。
ゴーウェンはドラゴンを相手にした時以上の“気”合で斬りかかり、鋼の塊で相手と殴り合う。
小春は短く柄を持ったハルバードで距離を詰め接近戦。
窮屈な構えに攻撃の筋も限定されるが、これをさっさと剣に持ち替えると射程外から滅多打ちにされる、というのが今までの経験から分かっていたので是非もなかった。
魔法も飛ぶが、振るわれる鉄杖で簡単に打ち払われてしまう。簡単にやっているように見えて、魔法に合わせ相克の属性で消滅させるという高等技術だったが。
「むぅ、圧倒的な人数差をものともしない、流石に凄まじい力だ。ロウェインと打ち合っただけはある」
「いや、あの勇者に鍛えられている同胞たちも大したものだ。あれほどの力を受けながら致命傷を避けている」
「フンッ……ありゃ俺たちとやりあった時より、技がキレているだろう」
獣人たちは、ヒト種の冒険者が今まさに実力を伸ばしている光景に見入っていた。
自分たちはこれほどの好敵手と力を競ったのだ、と思えば戦士たちの気分も悪くはない。
ただ、眺めているだけでは満足できなくなっている獣人の英雄が問題だったが。
「ぬ……ヌゥァアアアア! 岩腕のロウェイン! 勇者ユーゴよ今一度勝負ー!!」
「ああ!? ロウェインがいったー!!」
「ロウェイン貴様手出し無用って言ってたじゃないかズルいぞ!!」
当初、道中でも修行を欠かさないと言った悠午の意志を尊重し、自分達は邪魔にならないようにする、と大人な態度を見せていた大猩猩の英雄、ロウェイン。
しかし、すぐ近くで強力な戦士たちがしのぎを削っているのを指を咥えて見ているだけ、というのは、この英雄殿には酷な話だったようで。
3日目にして我慢しきれなくなり、ついに乱入という流れに。
ついでに、同じく戦いに参加したかった獣人たちも、雪崩を打ってエントリー。
悠午たちを襲撃した初日以上の大乱闘となった。
◇
西の山向こうに日が落ち、白の大陸にも夜が来る。
白の大陸において、夜に活動するのは悪徳の現れ、という言葉があった。
夜闇に隠れてコソコソ動くのは悪人だけ、また逆に夜闇がヒトの行いを覆い隠す為に、ヒトを悪に誘うのだという。
故に、白の大陸の種族は、基本的に暗くなると動かない。
無論、ある種の人種や戦争などの状況は、例外だ。
それに、そんな格言がただの言葉でしかないと知る者も、夜の闇の中で自覚的に悪をなすのだ。
悠午と一団の仲間、それを送り届ける形の獣人たちも、この日は野営する事となった。
馬車の前では焚火が置かれ、そこを中心に転々と焚火とヒトの固まりが作られている。
大体の者がボロく草臥れていたが、かといって悲壮感を漂わせていたり大怪我を負っていたり、という事もない。
何人かはつい先ほどまで“気”を失っていたりしたが。
そして全く無傷な悠午はというと、小袖袴に襷掛けなどして夕食を作っていた。
もはや隠しもしない、手元に金“気”を集め包丁を生成すると、ひとっ走り海で掴み取ってきた巨大な魚を5枚に下ろす。
骨と粗で出汁を取り、白身はブツ切り、白子も食べられるというので同じくブツ切りに。
野菜、塩、酒、砂糖を、土“気”で作った大鍋にぶっ込み、灰汁取りはパンダ獣人に任せて暫し。
同時に、森にいたのを狩ってきた小屋並みに大きな鳥も、首切って血を抜いた後に羽根を毟り解体し食肉にした。
そのままだと火が通りそうもなかったので、部位ごとに切り分けた後に更に拳大に切り、塩コショウを振り棒に刺して直火で炙る。滴り落ちる油がヤバイ。
人数が人数なので、『人形の館』の中の備蓄食料も大半を放出した。
ついでに、悠午が丹念に育てていた米も全部出す。
実はそれでも少々食料が不足気味だったので、ここでこっそり小袖袴の仙道使いがリミッタを外し裏技を用いていたりするが。
見学していた魔道姫には、秘術ゆえに部外秘としておいた。
「ムガァ! 美味い! サカナなんぞ小骨が刺さって食えたもんじゃないと思ったが、美味い!!」
「ムグ……いくらでも食える」
「ビッグウッドバードを焼いただけなのにスゲー美味いな! なんでだ!?」
「…………なんだろうか、沼地の麦がこんなに美味いとは知らなかったそんなの」
ライオンやウマ、肉食や草食に関係なく、鍋の中身に舌鼓を打つ獣人たち。ある程度大人として成熟すると、好き嫌いは別として食べられない物というのはなくなるらしい。
「美味いメシに美味い酒に心地よい風に飲み仲間たぁ出来過ぎだなぁオイ!」
「見応えのある戦いにぃ……酒の肴にも困らんからなぁゴーウェン!」
「ああ!? じょうだんじゃねーよあんなバケモン相手にする方はたまんねーぞコラァ!!」
多くの焚火の周囲では酒盛りが行われており、ゴーウェンやフィア、クロード、ダンといった大人組もこれに加わっている。
既に大分出来上がっている模様。
こちらには、鳥刺しや魚の皮の湯引きといったツマミも作っておいた。
そんな気遣いの師匠に対して、大男のこの言い様である。
「上手いものだな。我ら獣人は、あまり食い物に手間や暇をかけない。こういう手のかけかたは、やはりヒトなのだな」
馬車の前では、大猩猩の英雄も悠午たちと共に焚火を囲んでいた。
鍋も美味そうに食べていたが、タレを付けた焼きおにぎりが特に気に入ったらしく、既に4つ目だ。
「他のヒトがどうかは知らないけど、身体は食べた物からしか作られない、ってのがウチの流儀だし。何を食べるか、どう調理するかで身体に吸収される効率も変わるから。基本的な料理のやり方は、昔から修行しているんだ」
そんな事を言いながら、冷やしてあった果物を瞬きする間で真っ二つにする小袖袴の料理人。
実際にはこの跡取り、プロの板前から教えを受けているので、基本的なんてレベルではなかったが。
村瀬家の事情など知らない大猩猩の親分は、悠午の戦士としての姿勢にただ感心していた。
食べ物なんて腹を満たすかどうかしか気にした事がないので、ちょっと見習おうと思う。
「まぁ偉そうに言っても、今は屋外だし大したもんは作ってないよ。材料切って一緒に煮込むか、丁寧に捌いた鳥を焼くだけだしね。ちゃんこ鍋なんて、作った人間の数だけ種類がある……と。
コレも育て方は特殊だけど、物は普通の果物」
「ふぅむ…………?」
そんなもんか、と思いつつ果物を受け取る大猩猩は、剥く為に皮に切れ目が入っていたそれに、お構い無しに齧り付く。
「――――ムグッ!? なんだコレは!!?」
途端に目を剥き、銀背の大猩猩は勢いよく立ち上がった。
ビックリして背中から倒れそうになる、隠れ眼少女や奥様といった大人しいお嬢さん組。ジト目やグラドル女子大生も、何事かと少し腰を浮かす。
「コレがリンケルの実!? 甘く瑞々しく弾けんばかりに実が詰まった……それに冷たいのに身体の内から力が漲る。なんだコレは? 魔法か?」
悠午が食後のデザートとして供したのは、この世界では比較的ポピュラーな『リンケル』と呼ばれる果実だ。
皮は固く剥き辛いが、中身は柔らかく風味に癖も無い。
ただし、衝撃に弱く日持ちがしない、流通にはあまり向かない果物でもあった。
白の大陸と黒の大陸、どちらでも見る事のできるリンケルの実は、大猩猩のロウェインも数え切れないほど口にした事のある果物だ。
しかし、今食べたリンケルの実は、それらとは違いすぎる。
味と風味は間違いなくリンケルの実なのだが、甘さも水気も喉越しも歯ざわりも、何もかもが桁違いだった。
だからと言って、ただ美味いと感動できるようなモノでもない。
何かしらのカラクリを疑わざるを得ない、そんな代物である。
実際、気功術と仙道五行に通じた達人だからこそ作り出せる果物でもあったが。
「単に栄養と生命力を実に凝縮させただけだよ。自然の流れに反した事は、何もしちゃいないさ。はい、小夜子姉さん」
「んー? …………ウマッ! ホントにウマッ!? 油四郎なにこれスイーツ化したモモかなんかか??」
プレイヤーのお姉さん方も特製フルーツを受け取り、その美味さに仰天しながら消耗した体力と“気”力を回復させる。
森羅万象に通じる五行術にて、多くの神話に謳われる神の如き樹木と、そこに生る伝説の木の実を人為的に作り出す術であった。
“気”の力をある程度修めれば誰にでもできる事なので、特に術の名前などは無い。
そして、そんな木は『人形の館』の悠午の部屋の鉢植えに生えていた。
ちなみに、この果実を材料に酒を作ると、そのまま神酒と呼ばれるような代物となってしまう。
悠午の実家、叢雲では祖父がそんな梅の実で梅酒とか漬けているので、あまり有り難味とかは無かった。
しかし、それを市場にでも出そうものなら、ウィスキーボトル一本で億単位の値が付く物だ。
孫の方も扱いには気を付けているが、今回は弟子たちの為に特別に用意していた。
どれほど過酷な修行で身体が消耗していようとも、一発で全快するほどの生命力の固まりである。
「由良、もう一個くれ!」
「小夜子姉さん、あんまり食べると破裂するかも…………」
やはり、あまり有り難味は無さそうだが。
◇
翌朝、日が昇ってから朝食を手早く片付けると、村瀬悠午の一団と獣人たちは移動を再開。
グラドル重戦士やジト目魔剣士(仮)は、いつ小袖袴の姿が消えるかと今から戦々恐々としていた。
こういう常在戦場の気構えに慣れるのも、また師匠の狙いのひとつでもある。
ちょっと意地悪したい気持ちが芽生えなくもない14歳だったが。
「昨夜は野宿させてしまったが、今日は小人族の村で休めるだろう。先触れが歓待の備えをさせているはずだ」
「んん? そりゃまた恐れ入るね。別に旅の空で野営するのは苦じゃないし、こっちの大陸で宿を取れるとは最初から思ってなかったけど」
「確かに、黒の大陸のヒト種やドワーフ種族がこちらを旅するのは、並大抵の苦労ではないだろうな。それを分かっていながら踏み込むとは、やはりユーゴは勇者よな」
垂らされたゾウさんの鼻をイスにして胡坐をかく、小袖袴の勇者。何故か全く違和感が無いし、何故かゾウ獣人も嫌ではない。むしろ誇らしくある。
隣を進む大猩猩の親分曰く、本日の宿はもう決まっているらしい。
大陸南部の中央、グランマテル大平原の入り口にあるコンカラム小海、その岸にある小人族の村。
もともと黒の大陸の種族にもあまり敵意識を持たない、温厚な種族の村だと言う話だ。
今回は女神の旗振りもあるので、滞在には全く問題無さそうである。
そして、コンカラム小海を通り過ぎると、大陸最大の平野に入る事になる。
旅の目的地、神殿都市アウリウムまでの行程は、残り3分の2というところだ。
それまでに、どこまで力を付ける事ができるか。
遠くに視線を投げ思い悩む悠午だったが、ここでフと気になる事を思い出した。
そういえば、一昨日から小柄な斥候職の少女が姿を見せないな、と。
感想(アカウント制限ありません)、評価、レビュー、弟子たちへの労いの言葉などもお待ち申し上げます。