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056:バックグラウンドダーティーワーク

10日連続更新の8回目です。

.


 地下牢の天井をぶち抜き地上に飛び出すと、空中を踏み切り悠午は一気にその場を離れた。

 目指すところは、この世界の何かを変えるような力が放たれた、ただ一点だ。

 町長が変異した瞬間に捉えた、悠午には覚えのある感覚。

 信じ難いが間違えようも無く、その正体を確かめるべく一息に距離を詰める。


 そしてイフェクトゥスは、全く想定していなかった状況に慌てていた。

 レーアの街の町長を弄って遊んでみたら、何故か監視対象が真っ直ぐ自分の方に飛んで来たのだから。

 直属の上役からは何も言われていないが、その命令の性質上自分の存在を知られるのがマズいというのは分かる。

 とにかく距離を取って姿を(くら)まさねば、と思い人間離れした跳躍力で逃げ出すのだが、時既に遅し。

 それ以上の速度で、小袖袴の少年が矢のように地面へと突き刺さった。


 落着時に舞い上がった土煙が、風で勝手に流れていく。

 月明かりしかない夜だったが、悠午はハッキリと相手の姿を捉えていた。

 黒髪に黒い服、まだ幼い子供のように小柄で、ビッパよりも更に年下に見える。

 そんな子供が空中に浮いていた。もっとも、悠午は(はな)から相手が子供などと思っていないし、姿形などどうでもよい。


「見つけた……『波動』遣い」


「……はぁ?」


 思わず悠午が口にした言葉の意味を、イフェクトゥスの方はワケが分からないといった様子。それも当然で、『波動』というのも叢雲が使っている便宜上の名前に過ぎない。部外者には分からないだろう。

 むしろ、分からなくて良かったと悠午は思っていた。もし関係者だったら非常に面倒な事になるので。


 波動を使う者の背景を考えれば、何にせよ状況は最悪に近いが。


「…………妙な気配を感じてみたら、大当たりかな? 町長の爺さまを変異させたのはお前のようだ。なんでそんな事を? 誰かに命令されている? 是非語ってもらいたい」


 ほんの僅かの間考える悠午は、能力の事を知らない振りで、そのように切り出す。相手の動きを予想すれば、自分の情報は可能な限り隠しておきたい。

 もっとも、黒い少年ことイフェクトゥスにそこまでの深慮は無かったが。


「えー? うー……うるさいあっちいけ!」


 焦る、困る、イラつく、といった感情を整理できなかったイフェクトゥスは、とりあえず何も考えないで嫌なものをどこかに追いやる事とした。

 幼い声色、幼い仕草だが、その少年が腕を振るうと突然地面が爆発する。何かを放ったような形跡は無い。

 見えない攻撃というのはそれだけで面食らうものだが、悠午はこの時別の意味で面食らっていた。

 これは間違いなく、初歩的な『波動』による攻撃だ。姉も昔使ってた。


(マズいかな……事によっては戦闘力はオレ以上か?)


 大きく飛び退きこれを回避すると、続く攻撃も悠午は地を擦ってかわし続ける。


 祖父や姉、あるいは一部の高弟が限定的に修める群雲の真の奥義、『波動』。

 それは悠午の遣う気孔術とは比べ物にならない絶大な力を持っている。

 悠午にもまだ使えない技術だ。


(そんなヤツが裏にいるとか最悪なんだけど。まさか姉ちゃんと同様の……? じゃなきゃ別のイントレランスか)


 この『波動』を本当の意味で使いこなせるのは、資格を持つ者のみ。悠午の姉がそうだ。だからこそ姉は、群雲の正統後継者たる資格も持つ。本人にやる気が無いので弟にお鉢が回ってきそうだが。

 そして本当の問題は、黒い髪に黒い服の子供が、悠午の姉と同じ背景を持つ場合。



 正直考えたくなかったが、連中(・・)なら別の世界に人間を引きずり込むくらいの事は平気でやる。



 その辺を何としても問い質したい悠午だったが、そうなると相手に自分が『イントレランス』という存在を知っている、とバレる。

 もし想像通りだとしたら、それはマズい。どれだけ影響が大きくなるか分からない。下手をすると現状の仕組みその物が崩壊してしまうだろう。

 故に、このイントレランス関係者と思しき子供を制圧して知っている事を洗いざらい吐かせるのが理想ではあるが、もしも姉と同様の正規の波動能力者だったりすると、悠午の方に勝ち目が薄い。


「ええい! やるだけやる!!」


 動きながら考える悠午だったが、最終的に珍しくノープランだった。

 敵を知り己を知れば百戦危うからず。彼を知らず己を知れば五十戦危うからず。

 彼我戦力差を見極めてから相対するのが武人としての常識だが、常にそれが可能というワケでもない。

 それに、たとえ絶望的な状況だとしても、信念にかけて戦わねばならない時はある。


 とりあえず、相手の力を計るつもりで。ダメっぽかったら退く。死ぬ気でやれば多分どうにかなるだろう。


「ッかはぁあああああ!!」


 そうやって踏ん切りをつけると、悠午はエンジンを全力運転でぶん回した。

 五行が連鎖爆発し、生命のエネルギーが数千倍に増幅される。

 周囲の“気”と一体化し、己の一部として広範囲に拡大。

 身体能力はヒトとしての限界を突破し、超人類の領域にまで到達させる。


 小袖袴の青年の姿がフッと消えると、次の瞬間には黒髪の少年の真後ろに出現していた。

 イフェクトゥスは反応していない。そこに、空“気”を踏み締めた悠午が、戦車すら一撃で粉砕する打撃を全力で叩き込む。

 ところが、超音速の拳は目標の手前で阻まれていた。


「うわッ!? こッ――――――――こいつ!!?」

「チィッ!?」(波動障壁!? 見切られてたか、それとも運か?)


 大分遅れて、イフェクトゥスが自分に突きつけられた暴力に気が付く。普段から防御を固める癖が無ければ喰らっていた所だ。

 ヴヴヴ……と何かが空気を激しく震わせ、絶対的な力場に悠午の攻撃が弾かれている。

 驚いた黒髪の少年が真横に腕を振るうと、周辺の大気が爆発したかのように押し退けられた。

 悠午はこれを回避しつつ真上から豪腕を数百発と叩き付けるが、全て空間の超高振動に叩き返される。

 吹き飛ばされるまま悠午は拳を引き、そこに凄まじいエネルギーを集中。

 属性に寄らせて圧縮し、打撃と共に解き放つ。


「ッ――――――――らぁあ!!」


 ゴゴゴン……! と。

 悠午が拳を叩き込んだ一直線上、イフェクトゥスを飲み込み粉塵とイカヅチと爆炎が吹き荒れた。

 閃光と炎が空一面を染め上げ、爆音は大陸の端まで轟き渡る。

 世界のバランスも何も考えない一撃は、威力にして火山噴火にも匹敵した。巡航ミサイルなどの比ではない。五行術の担い手として、自然界の正常なエネルギー活動を超える力の行使は、ある意味で禁じ手だ。


 水行、木行、火行、三属性による連鎖爆発拳。


 気功仙人掌『瀑炎竜』、熟練度50000相当。

 近~長距離範囲、気功打撃(“気”/物理属性)、鉄砲水→竜雷→業火と輪廻する“気”による打撃。同レベルの技が扱えなければ防御不可能。


 小さな子供相手にはやり過ぎも甚だしい戦略規模の攻撃だが、相手が『波動』遣いである以上、悠午は欠片もそうは思っていない。

 波動と気孔はある意味真逆だ。飽くまでも自然界の法則の上にある気孔とは異なり、波動はその法則に干渉する。

 理屈の上では、気孔術では波動術に勝てない。どれほどルールを熟知して戦おうが、ルールを作る、または破る側にはどこまで行っても不利なのだ。


 だがしかし、武器と担い手の力量がイコールと限らないも、また事実。


「ぶえッ! ぶふぇっ!? ブッ! ゴホゴホ!!」


 炎と雷が収まると、黒雲の中から黒髪の少年が転がり出てきた。あちこち焦がして咳き込んでいるが、致命的な怪我などは見られない。

 その効果の程を確認する悠午は、おや? という思いだった。

 直撃は避けたようだが、完全に殺傷圏内から脱出できてはいない。これが姉ならワープじみた動きで逃げ切っている。

 それに、動きも悪い。姉や祖父なら片腕無くしてでも即座に攻めへと移っているだろう。

 これなら行けるか、と悠午が思っていると、ちょうど先方がブチぎれるところだった。


「%Δ$##д>ギャギャギャぁあああああ!! バカバカバカー!! ムカつくムカつくオマエ殺す殺す殺死ね氏ね死ね!!」


 前半部分は言葉にならず、発狂した奇声を上げて手足を振り回す。

 幼い見た目以上の癇癪を起こすイフェクトゥスは、幼い見た目からは想像も出来ないような憎悪に溢れる目を向けていた。

 ただ遊んでいただけなのに、突然追い回されてメチャクチャな攻撃をされた。と、自分が悪いとは微塵も考えない。

 もう姿を見られた事も、与えられた仕事も、全部どうでもいい。

 嫌なヤツは殺してしまえ。

 イフェクトゥスの考え方は変わらないし、他には何も教わっていない。


「痛いとか怒られるのが嫌なら、人様にクソみたいなちょっかい出すなよ、お子様」


「うるさいうるさいウルサイ黙れ黙れダマレ! 『マスターズ・パニッシュメント』!!」


 地上から見上げる悠午は、念押しの挑発。

 狙い通りに地団駄を踏み激昂するイフェクトゥスだったが、その傍らに真っ白な剣を出現させる。

 ただし大きさは全長10メートル以上。“気”配から読むに、こちらは波動術ではなくプレイヤーたち同様の能力だ。

 相手の性格から判断し、この状況で出し惜しみする、ないし出来る性質(タチ)ではないだろう。

 ならば推測通り、姉と違って資格者ではなく、限定的な能力者と考えられた。


「っても……!」(厄介な事に違いもないか)

「バカ逃げるな当たれー!!」


 飛翔する剣の威力は凄まじく、地面に突き刺さると一直線に掘り返しながら悠午へと向かって来る。

 とはいえそんな雑な攻撃が当たるワケもなく、小袖袴の少年は一瞬で消える高速移動を繰り返しつつ、フルスイングの剛拳を叩き込んだ。


                        ◇


 人外同士が暴れるには地下室は狭過ぎ、間も無く戦いは外に溢れ出る。


 元町長である肉の塊と化した怪物は、姫城小春(ひめしろこはる)が仰天した際の一撃を喰らい、壁に激突して大空へと跳ね上がった。

 重量級武器、斧槍(ハルバード)にプレイヤーのパワーを乗せた手加減抜きの一撃は、普通の人間なら即死してもおかしくないほどの威力。

 ところが、受身も取らずに地面に激突した怪物は、直後に立ち上がると弾むような動きで疾走する。

 ギリギリと凶器を持つ手の平を軋ませ、崩れたブロック壁を蹴飛ばし再び地下室へ飛び込もうとした。


「何なんだこの超展開!? パラボラグレネード!!」

「――――――――ドートラドラドアルキナオース、スラバー!」


 その地下室から魔法が打ち上がり、筋肉町長を直撃。向かって来た勢いそのままに跳ね返す。

 迎撃したのは魔法職のふたり、御子柴小夜子(みこしばさよこ)とフィアだ。何やら通じるものがあったらしく、タイミングが完全に一致していた。


「ゴーウェンさん! セントリオ様!?」

「だ、だいじょうぶですかー!?」


 回復職ふたり、梔子朱美(くちなしあけみ)久島果菜実(ひさしまかなみ)はこの隙に倒れた仲間へ駆け寄り回復スキルを使う。

 それ程重症ではなかったが、ゴーウェンもセントリオとクロードも、多少のダメージを負っていた。


「すまん助かる……! クソッ! ありゃ一体なんだ!? 気を付けろ並じゃないぞ!!」

「まともな頭ではないと思ったが、はじめから人外の類であったか!?」


 頭を振り意識をハッキリさせると、ゴーウェンは転がっていた自分の大剣を掴み上げる。

 禿頭傷のセントリオは歪んでしまった自分の剣を放り投げ、代わりに兵士が落とした剣を拾っていた。

 魔法のある世界ならば、人間が変身するのもありえない現象ではない。

 ただ、それにしたって異様だった。

 それは、モンスターや他の何かに変わってしまうのではなく、ヒトという種そのものを致命的に狂わせてしまったかのような。

 単なる暴力としてではない、自らに降りかかる目に見えない疫病のようなおぞましさが付き纏うのだ。


「あいつこんな時にどこ行った!?」

「外に出ろ! あんなのにこんな狭いところで暴れられたらたまらんぞ!!」


 怒声、あるいは八つ当たりで恐怖を誤魔化すジト目など、女性プレイヤー陣は怖気に震えている。

 一方でゴーウェンやセントリオの戦意は全く衰えていなかった。細かい事は敵を倒した後に考えればいいのだ。


 地下牢から脱出して地上に出ると同時に、町長と同様に変異していた狩人の男も地下から這い出してきていた。

 狩人だった肉の塊は、4速歩行のように手で地面を掻きながら町長に駆け寄る。


「じょー……じょーちょー! こでー! こでー! な、なんれぇ!?」


「にぐー……! にぐー! おんだー! おんだのにぐー!!」


「じょーちょー!!」


 言葉にもならない会話だが、何かを伝え合う町長と狩人。

 実際に意思疎通が出来ているのか誰にも分からないが、それでも町長と狩人が両者横並びになるあたり、敵対するのは変わらないと思われる。


 その時、雲の中で大爆発が起こり、赤い空に黒い雲がくっきりと浮き彫りになった。

 雲の中を無数の稲妻が駆け抜け、空と地面が激しく揺れる。

 争っていた兵士と獣人たちも、思わず天を見上げていた。


「おお……軍神の怒りか!?」

「精霊が狂乱している……!?」

「あの冒険者ども……と、あの怪物は何だいったい!!?」

「獣人じゃないぞアレは!?」


 周囲が照らされた事で、何が起こっているのか獣人と兵士も自分で目にする事になる。

 モンスターを見慣れている者にとっても、筋肉がデタラメに肥大化した元ヒト種の姿は異様の一言らしい。

 以前から怪物だった町長は、今や姿までも怪物と化しているのだ。

 今まで袖の下を受け取り癒着状態だった兵士も、自分達がいったい何に関わっていたのかと青ざめていた。


「おぉおおおお゛んだのにぐぅうううう!!」

「じょーちょぉおおおお!!」


「なんかこっち見てるよ気のせいかな!?」

「いやどう見たって姫がお目当てだろ!!?」

「気を抜くな嬢ちゃん! お前さんの馬鹿力が頼りになるぞ!!」


 町長に狩人という肉の塊ふたつが、奇声を上げて小春たちへと突っ込んでくる。

 これを待たず、自ら踏み込み大剣を振るうゴーウェン。先ほどは肉の壁に阻まれたが、構わず叩き斬るつもりだ。


「どおらッッ!!」

「ッかぁあああ!?」


 剣の心得など無い町長は、走り込んで来た勢いでカウンター気味に、脳天にあたる位置へ思いっきり刃を喰らっていた。

 ヒト一人分もの重量がある鋼の塊だが、膨れ上がった首の筋肉に喰い込んだのみで、仕留めきれない。

 とはいえ、それはゴーウェンも承知済み。


「このままぶっ叩け!!」

「っせやぁあああああああああ!!」


 続いて突撃する小春が、斧槍(ハルバード)を真上から振り下ろした。

 重量のある分厚い刃が叩き付けられ、半ばまで突き刺さる。

 その反応は強烈で、悲鳴を上げた肉塊町長は凶器を持った腕を乱暴に振り回した。

 それより一瞬早く後退する小春は、薙ぎ払われる骨鋸を掻い潜りつつ斧槍(ハルバード)ごと大きく旋回。

 十分に遠心力をかけ、


「ッぇえりゃああああああああ!!」


 真横から斧槍(ハルバード)の鎚で殴り飛ばす。


 ボゴンッ! という分厚い物を叩く鈍い音が響き、身長2メートル超え、体重にして300キロはあろうかという生き物が蹴っ飛ばされたボールのように宙を舞った。

 その非常識な絵面に、兵士と獣人が目と口を開け広げる。


「ぬぅ!? プレイヤーにしても何という剛力!!」


 唸ったのは一際大柄な山羊の獣人だった。

 単にステータス補正を受けた腕力を振り回すのと、確実に筋道の付いた技を振るうのとでは、明らかな違いがある。


 それでも、地下室から叩き出された時同様に、町長はすぐさま立ち上がると再度の突撃を開始した。そこには痛みも反省も何もないようだ。

 猛獣のように四足で暴れる狩人も、セントリオとクロードに左右から斬り付けられても意に介した様子がない。


「これ効いてんの!?」

「じゃバラバラにしたれ! サーマルホーミング!!」

「あれじゃあ手足を潰すにも一苦労だろうがな!」


 真っ正面から突っ込んでくる町長に、同じく正面から飛んで来た魔法弾が3発続けて直撃。殺す気の攻撃だったが、町長の勢いは衰えない。

 迎え撃つゴーウェンの斬撃は低く、交差した瞬間に町長の足を叩いた。やはり切断には至らないが、バランスを崩した巨体は顔面から地面に滑り込み、そこを真上から容赦なくプレイヤーのスキルがぶっ叩く。


「アックスフォール!!」


 低い軌道で跳ぶ小春は、自動的かつ攻撃力2倍の一撃を振り下ろした。命中精度が7割程度に落ちるスキルだが、この状況では外しようがない。

 今度こそ肉を裂き骨を砕く嫌な手応えを感じるが、ここまでやっても町長を仕留める事は出来なかった。


「ギピィイイイイイイ!!!!」

「うわっ……!?」


 神経を逆撫でするような甲高い絶叫を上げる町長は、四肢をバタつかせると倒れた状態から小春へ飛びかかって来る。

 気持ち悪さから一歩引いていた小春は、驚きながらも身体が勝手に迎撃へと動いていた。

 斧槍(ハルバード)を掲げた体勢なので、柄の石突き部分で町長を殴り倒す。いついかなる状態からでも手を出せるように徹底した教育を受けた成果だ。若干全身凶器にされつつある小春である。


 地面に転がった町長をゴーウェンが追撃。地面に水平になる程身体を傾け、修羅の形相で大剣を振り回し肉の塊へ振り抜く。

 しかし、肉球の弾力があり過ぎて、衝撃を跳ね返し後方へと弾かれて行ってしまった。

 刃を受けた負傷や魔弾の火傷も急速に元へ戻りつつある。

 同様の性質を見せる狩人の方も問題だ。

 セントリオとクロードがどれだけ斬り付けても、動きは鈍らず怯む気配もない。


「こいつぁ厄介が極まるな……! 攻め手が雑なのが救いか!?」


「大魔術を使います……クロード」

「はっ!」


「弱点を突こうにも正体が見当もつかぬ!」


「悠午あのガキどこ行ったー!!?」


 叫ぶジト目魔術士がスキルを連発し、前衛の男達と女戦士が肉だるまを叩き返し、回復職が回復魔法やステータスを上昇させるスキルで支援し、魔道姫が高威力の魔法で地形ごと吹き飛ばす。

 それでも立ち上がる筋肉町長と筋肉狩人へ、ゴーウェンら現地組とプレイヤー陣は猛追撃。

 タフな上に高速でダメージを回復させるモンスター町長と狩人を、叩いて叩いて叩きまくった。




クエストID-S057:これよりさき武人の峰 10/02 19時に更新します。

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