表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イマドキ!  作者: 紫音
6/8

狐と電気

「ねえ、蓮斗はどっちにした?」


「……なんの話だか教えて貰っていいか?」


平日の朝。

指定の制服に身を包んだ生徒二人は徒歩で学校へと向かっていた。

突然、なんの脈絡もなくそう言い出した水色の短髪ツンツンヘアーのピーターパンに蓮斗はつい眉を寄せる。

蓮斗は、この青年と中学時代からの仲だが未だに時折何を言っているのか分からない時がある。


「選択授業だよ、選択授業」


二人の通う錫峰高校には二つの科がある。

科学科と魔法科。

一年時はどちらも必修で勉強し、二年時からは科によりクラスが分けられる。

そして更に、選択授業が開始される。

科学科であれば、ロボット工学か医療情報学。

魔法科であれば、占い学か式神形成術。

それぞれが一つを選択する必要がある。


「俺は占い学にしたけどな」


「占いかー…なんで?」


「式神形成って結局、形成術が出来ねえとダメだけど、形成術は俺苦手だし。」


そう言って人差し指を一本立てる蓮斗。

そこに赤い炎が灯る。

それは暫し、ゆらゆらと指先で燃えていたが、程なくして消えた。

蓮斗は肩を竦めて雹太を見る。


「真一はどっち?」


「アイツは式神形成って言ってたな」


「うーー、どっちにしよ…悩む…った!」


頭を抱えながら歩いている雹太の肩に、何かがぶつかった。

見るとそれは空き缶。

いつもなら空き缶程度、避けられただろうにと思いながら蓮斗が飛んできた方へと目をやる。

そこには二人の着るそれとは違う、深いカーキの制服を着崩した数人の青年たちがいた。

にやにやとした表情から、すぐに彼等が空き缶を投げたのだと理解する。


「なにす、ん!!」


すぐに唇を尖らせ異論を唱えようとした雹太。

蓮斗はすかさずその口を素手で塞ぐ。


「……やめとけ。狐ヶ丘学園の連中だ。」


狐ヶ丘学園。

正式名称は大和狐ヶ丘魔法学園。

錫峰高校とは違い魔法学科のみを専門とする名門校。

魔法は科学や他の学問より優れているという魔法主義者が多いことで有名である。


「あー、わりいわりい。ゴミ箱と間違えちゃった」


故に、魔法と科学、どちらも学びどちらも活かすという考えの根強い錫峰高校の生徒に敵意を持っている狐ヶ丘学園の生徒も多い。

にやにやとした笑みの彼らはまさしくソレであろう。


「んぐぐぐ!!」


「…行くぞ。」


じたばたと暴れ何かを訴えている雹太を蓮斗は無理矢理に引きずり通学路を進む。

蓮斗は知っていた。

狐ヶ丘生徒が科学と魔法、どちらも学んでいる錫峰生徒をどっちつかずの『コウモリ』と悪意を込めて呼んでいること。

そしてその『狐』によって『コウモリ狩り』が行われていることを。


「いや、待てって」


横を進んだ蓮斗の肩を、青年らの一人が掴んだ。

と、同時に悲鳴が上がる。

蓮斗、雹太含め、蓮斗の肩を掴んだ男もそちらに目をやった。

そこには泡を吹いて倒れている狐ヶ丘学園の生徒と、錫峰高校の制服を着た小柄な女子の姿があった。


「あら失礼、静電気が。」


わざとらしくそう言った彼女の短い髪は、静電気によってふわふわと浮き、胸のリボンさえ不自然に揺れていた。

そして蓮斗の肩を掴んだ男へとその手を伸ばす。


「ひっ…!」


あまりの恐怖に逃げ出す狐たち。

彼女はそれを追い掛けることはなく、蓮斗と雹太に微笑を向けた。


「君たち、大丈夫?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ