表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イマドキ!  作者: 紫音
2/8

授業『形成術』

「二年一組全員いるな?それじゃ、形成術の授業を始めるぞ」


ジャージ姿の教員、白山晴(しらやま はれる)が教室を見渡したあと軽やかな口調でそう言った。

形成術は二年時からスタートする新しい教科。

クラス中に期待と不安が立ち込める。


「形成術とは、自らの力を形に留めるものだ。こんな感じに」


そう言って片手を上げる。

するとその掌の中には揺るぎのない真っ赤な炎の球体が出来上がった。

もう一度クラスを見渡す。


「コツは集中力。集中力が途切れると…」


そこまで言って晴は掌に目をやった。

直後、それは飛散し跡形もなく消える。


「とまあ、こんな感じだな。形成するものは自らの中で最も強い『要素』だ。『要素』については一年時に勉強済みだよな…竹上、説明出来るか?」


その言葉に黒髪を額の真ん中で分けた緑の目の少年、竹上真一(たけがみ しんいち)が立ち上がる。

真一の後ろに座っていた雹太は密かに安堵の溜息をついた。


「『要素』とは『火』『水』『風』『雷』の四つの魔法的力のことです。人間は基本的にそのうちの二つか一つを生まれた時から保持しています。その保持する力が二つの場合どちらか一方が強くどちらか一方が弱いことが一般的ですが、どちらも同等の力がある場合もあります。」


「うん、完璧だな。」


真一が解答し終え席につくと晴が爽やかに笑みを浮かべながら頷いた。

喝采、とまではいかないがクラスメイトから拍手が起こる。

それが終えたあたり、晴が大きく声を張り上げた。


「じゃあとにかくやってみよう!今日の課題は5分以上、形成し続けること!はい、はじめ!」



















「びええええっくしょい!」


品の無いくしゃみがしんとした室内に響く。

教室中の鋭い視線がくしゃみの主へと集まった。


「……悪い、花粉症で。」


くしゃみの主である赤髪の彼、蘇芳蓮斗(すおう れんと)はそう釈明し鼻を啜った。

隣に座っていた雹太が蓮斗の方に顔を向ける。


「慢性鼻炎?」


「花粉症だって言ってんだろ……あ、」


「なになに?」


「慢性鼻炎と満州事変って似てね?」


「……マンシュウジヘンってなに?」


赤い阿呆と青い阿呆の会話。

耐えきれず手元の火が掻き消えてしまった真一がゆっくりと振り向く。


「二人とも…授業中は静かに、ね?」


にこりと綻んだ表情ではあるがきちんと刺のある物言い。

全くもってクラス中の意見である。

しかし雹太はむうっと頬を膨らませた。


「でも俺、飽きた。」


雹太の手には大きな氷の玉。

蓮斗は苛立たしげにひとつ舌打ちをする。


「お前は『水』と『風』が同等だから氷作ればいいのかよ」


真一も目を細める。

『風』『火』『雷』の場合は集中力が切れると飛散しやり直しになってしまう。

『水』に至っては手や制服、机を濡らすことになり余計に面倒だ。

しかし雹太の場合『水』と『風』どちらも程よく混ざりあっている。

その為に形成術で対象となるのは『水』でも『風』でもなく、混ざりあった物質の『氷』。

氷ならば形成してしまうだけで、溶けない限り飛散することも消えることもない。

まさに形成術にはうってつけの『要素』の持ち方だった。














(…雹太って体育以外にも得意教科あったんだね)


(へへ…そんなに褒めるなよー!)


(雹太、馬鹿にされてるんだぞー)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ