日常スタート
互いに相容れない存在の『魔法』と『科学』。
これは、それらをどちらも学べる、とあるイマドキ高校のイマドキ高校生のお話。
その高校の名前は大和錫崎魔法科学高等学校。
元々魔法学男子高校であったが、近年の少子化により付近の科学共学高校と合併したのだった。
そしてこの話の中心はこの高校に通う二学年男子生徒である。
「ホームルーム始めるぞ。席つけー」
ガラガラと扉を開ける音の直後。
声自体は大きいのだがどうにもやる気の感じられない声が教室内に響く。
声の主自体も長く伸びた赤茶の髪を乱雑に後ろで結って、着ているYシャツもどこかだらしがない。
「出席確認な。いない奴手上げろー」
「はいせんせー!いない奴は手上げられません!」
「坂崎、休みっと…」
「あ、ちがっ、これは違います!」
大きく手を上げていた少年、坂崎雹太。
水色の短髪に青い目の彼は通称『ピーターパン』と呼ばれる。
「皆勤は諦めろ」
「そんな!風間先生の意地悪!」
雹太が講義する相手。
未だだるそうな声の教員の名前は風間遥。
このクラス、二年一組の担任である。
雹太による猛抗議に遥は苛立たしげに雹太に向けしっしっ、と手を軽く払った。
その動きにより空気が震えその場の気流が軽く乱れる。
「いてっ」
「静かにしてろ、暑苦しい。」
その気流の変化に気付かなかった雹太は小さく声を漏らし額を抑えた。
それを見て遥が赤茶の目を細めそう言い放つ。
うるさいピーターパンが黙ったことで教室がまた静かになった。
「えー、今日の授業変更は無し。選択授業の希望用紙提出は今週中だぞ、忘れんなよ。以上。」
やはり気だるそうな声。
一息にそう言うと遥はさっさと教卓の上を片付けていく。
クラスの生徒達は無駄口の方が多いホームルームが終わったことを理解するとバラバラと動き始める。
大和錫崎魔法科学高等学校の朝は、まだ始まったばかりである。